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#54 私の好きな芸術

ああ、巨匠さま

私にとって一番の芸術は「建築」です。
見惚れて、その美しさにため息が出て、ここにずっといたい、と思う空間を持つ建物。
それが、私にとっての大切な芸術的建築です。

「建築は芸術なのか」という意見もありそうですが、私のなかではれっきとした芸術。
もっと細かく言うなら、
建築士が思い描く理想×土地の魅力×構造力学が魅せる美しさ」が、芸術としての建築を成り立たせていると思います。勝手な見解ですが。

学生時代から、たくさんの建築物を観てきました。
丹下健三や前川國男、黒川紀章、安藤忠雄、磯崎新といった、いわゆる“巨匠”と言われる建築家の作品から、若手建築家の作品まで。

そして建築雑誌や本を読み漁っては写真を眺めるだけで満足せず、休日には日帰りできるぎりぎりの場所まで足を運んでいました。

絵画や作品を観る時の“対峙する”という感覚も好きなのだけど、建築を見学する時の“包まれる”という感覚がさらに好きなんですよね。
張りのあるひりひりとした空気感も、どこか丸みのある空気感もすべて肌で感じられる瞬間に「幸せだなあ」と思ってしまう。
特に巨匠の作品であればあるほど、「ああ、この空間に居させてくれてありがとうございます…」みたいな、私は一体どの立場の人間なんだと思えるくらい、訳のわからない感情になってしまいます。

ちなみに、私の中で芸術的建築の極みは、丹下健三の「東京カテドラル」です。

大学生だった当時、ひとりで見学に行ったんです。
護国寺駅を出て、息を切らしながら急な坂を戻った先。

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この外観を見つけて、好きな人に会えたような心がぱあっとなるような気持ちになったのを今でもよく覚えています。
たまたま見学をしていたのが私ひとりだったのだけど、荘厳な大空間の中に身を置くとこんな感情になるのか…、という新しい感覚を知ることができたのは、あれから10年以上経った今も「ああ本当に幸福な瞬間だったなあ」とすぐに思い出せるほどです。

さらに、「これを観るまでは死ねないな」と思っている建築は、スペインにあるフランク・O・ゲーリー作の「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」です。

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見て。
これを絶対的芸術作品と呼ばずになんと言えばいいの。
“設計と土地と構造”が一体になった、ここにしか建つことが許されない建築。ああ、美しい。

この建物を観た時、中に入った時、私は何を感じるのか。
想像しただけでワクワクしてしまう。

ああ、建築ツアーにまた行きたいなあ。
いつ行けるかなあ。

及川恵子