見出し画像

#37 忘れられない味/及川恵子

「ブルーベリーソースがのったヨーグルトムースのケーキ」との再会を目指す人生

転勤が多かった父親の仕事のため、幼稚園から小学2年生まで福島県郡山市に住んでいました。

自宅の裏にある公園で自転車に乗れるようになったり、近所の子どもたちと美容院の植え込みに咲いていたサルビアの花の蜜を吸ったり、大きな池と噴水がある開成山公園でよく散歩をしたり、イトーヨーカドーの中にあった子ども図書館でよく本を借りたり…。
そんなたくさんの思い出と、子どもながらに窮屈さのない街の雰囲気が好きだったなあという思いが蘇ります。今でも大好きな街です。

しかし何より思い出深いのが、よく通っていたヨーグルト専門店「モーニング」で食べた、おいしいおいしいヨーグルトの味。
及川家は頻繁にこのお店に通っていたのですが、日曜日の15時、家族揃って食べるおやつのほとんどが、このお店で買ったヨーグルトやケーキでした。


画像1




どんな言葉を選んだらこのおいしさが伝えられるのか自信がないのですが、さっぱりとした風味と甘さとの相性が抜群のヨーグルトで、「“飽きがこない”とはこういうこと」というのがダイレクトにわかる味、と言えばよいでしょうか。
そこに果物の甘酸っぱさが加わればまさに至福…。
どんなヨーグルトとも似ていない、この店だけの味わいなのです。

中でも一番好きだったのが、ヨーグルトのムース。
透明なカップに入ったヨーグルトムースの真ん中に、ちょこんと絞った生クリーム。
食べると、爽やかな味わいとともに口の中でムースがシュワシュワと溶けていく。
そんな独特な舌触りや、真っ白でシンプルな見た目も好きだったなあと、思い出しています。

でも、思い出の味は忘れられない味とは別。
私にとっての忘れられない味は、
「ブルーベリーソースがのったヨーグルトムースのケーキ」です。
(写真が見つけられず残念…)

失礼ながら決して大好きだったケーキではなく、親からひと口分けてもらっても、いつも酸っぱすぎる(と感じていた)味わいに今ひとつおいしさがわからなかったケーキなのですが、大人になった今、あの味がとても恋しい。
酸いも甘いも経験してきた38歳の今こそ、その味わいがわかる気がするのです。(酸いが多めな人生だけど)

しかし!!!!
そんな私に朗報が飛び込んできたのが今年の1月。
仙台三越にあの…、あのモーニングがオープンするというのです…!!

私、というより、及川家大歓喜…!!
1月末にプレオープンする、ということで、正式なオープンとプレオープンでは何が違うのかよくわからないことはさておき、早速足を運んだのでした。
待ってろ!!!ブルーベリーソースがのったヨーグルトムースのケーキ!!!

私の心はもうウッキウキでした。

「あ〜〜〜私昔郡山に住んでいましてね、子どもの頃からモーニングのヨーグルトが大好きだったんですよお〜〜〜たまに郡山に遊びに行った時も必ずお店に寄ってましてねえ〜〜片道2時間くらいかかっちゃうんですけどね〜〜それでも買ってたんです〜〜〜いや〜〜本当にうれしい〜〜〜仙台にまた出店してくれて本当にありがとうございますううぅぅ〜〜」
と話したい気持ちをグッと押さえ、ショーケースに並んだ商品を眺める私。

さあ!
何年かぶりに、「ブルーベリーがのったヨーグルトムースのケーキ」とのご対面です!!!

(ブルーベリーのケーキ!!ブルーベリーのケーキ!ブルーベリーのケ…)

ない!!!!!!
どこを探しても……ない!!!!!!

どうやら仙台三越店には、「ブルーベリーがのったヨーグルトムースのケーキ」は並ばないようでした…。
あああ、残念…。
しかし、甘夏がたっぷり入ったヨーグルトとゴロゴロとしたイチゴが入ったヨーグルトを買って帰った私。
その日1日、大興奮だったことは言うまでもありません。

「ブルーベリーがのったヨーグルトムースのケーキ」と再会できるまで、私はまだまだ諦めません。
コロナが収束したら、絶対郡山に行ってあのケーキを食べに行こう。
そして、天国に行ってしまった父親の仏壇にも供えてあげよう。
(急にしんみり)

及川恵子