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#94 禁断のレシピ

【往復書簡 #94 のやりとり】
①(8/5):くろさわかな〈なんでもいけると思うなかれ〉
②(8/8):及川恵子〈プロに任せよう!〉
③(8/10):泖

プロに任せよう!

自分でいうのもなんですが、わたくし、料理をするのが好きで、しかも上手なんです…。
目分量で調理はしないし、レシピもしっかり読んでから作るし(時々大事な箇所を読み飛ばして呆然とすることもあるけど)、「これを入れたほうがもっとおいしいんじゃないか?」みたいな冒険もしない。
だから、あー失敗しちゃった、みたいなことはあんまりないんです。
むしろいつも料理が完成して味見をするたびにおいしすぎて引くほどです。
今日だって親戚から大量に届いたトマトで最高においしいトマトソースを作ってポモドーロにしてお昼に母と一緒に食べました。私ってば素敵ね。

しかし、“手間がかかりすぎる”という意味で「これは二度とつくるまい」と思ったものがあります。それは「セミドライトマト🍅」です。

つくりたいと思ったきっかけは、よく行くバーでセミドライトマトをアテにウイスキーを飲むのが好きだったから。
家でもセミドライトマトがつくれるならおいしいお酒と合わせていい夜になりますね、なんて思ったんでしょうね。その時の私は。

しかし!

工程がまーじでめんどくさい。
トマトをちまちま半分に切って水分を取って天気をよく見て干して夜になったら部屋に入れてまた干して部屋に入れて干して入れて干して入れて干して入れて干して入れて干して入れて…

で、一週間。
今度はカラカラになったちまちまトマトをオイルに漬けてまーたちまちましたチーズとかクラッカーとかに乗せて食べる…。うーん。
出してちまちま。
食べてちまちま。

いや、おいしいんです。
ニンニクと一緒にオイル漬けにしているから風味もちゃんとあるし、トマトのおいしさもしっかり感じられて、ああ、私、こんなものもつくれるんだ…と感動すらしました。

ただ、自分に問いかけたんです。
「私は本当にこれを1週間もかけてつくりたかったのか?」と。
「本当はお店で食べた方がおいしいんじゃないか?」と。

結果、家ごはんに似合わない、さらに言うと、母が好まない料理はしないことに決めました。
ちょっと手の込んだ料理は、プロがつくるおいしい調理で食べた方が私は幸せ!“出過ぎた真似をするんじゃないよ!”と痛感したのです。

なーんて言いながら、どんな料理でもつくるのが楽しいもんだから、ほとぼりが覚めた頃にまたやらかしてしまうかもしれないけどね。

及川恵子