夏祭り

未練がましく、ずっとあの夏に囚われたまま。金髪に浴衣は似合わないかなって、少しプリンになった頭髪を撫でた。気合い十分ってことが安易に分かってしまう派手な見た目が恥ずかしかった。私の傷んだ髪に普段の100倍輝いて見える魔法をかけてくれたお姉さんに照れくさくてずっと、この姿を見せるのが恥ずかしい恥ずかしい会えないどうしようって伝えていたら、もうお姉さんが勝手にやったって伝えていーんだよって優しく言ってくれて天邪鬼で照れ屋の私はその言葉だけで今日をがんばれる気がした。ずいぶん久しぶりに浴衣の袖に腕を通して、そのときは自覚していなかったけどはじめて他人に可愛いって思われたくて浴衣をきたんだった。
''♪〜十五で世界を知った気になって 十六 あなたに出会って 十七 恋は刃物だってことを知った〜♪''
私の恋をこっそり覗いてそのまま綴ったみたいな歌詞。
その夏からずっと私のプレイリストに居座り続けて私の脳に幾度も刻み込まれた歌詞が私を捕まえて離してくれない。いつも口下手で褒めるのがほんと下手くそで一度もかわいいねって言われたことがなくて、度々ちょびっとだけ自分に自信をなくすこともあったけど、たまに褒めてくれているんだろうなって感じれる君の不器用な言葉が大好きだった。容姿より物体の形態しか褒めないところも、たどたどしく伝える姿も君の性格を表していていつもくすっと私の心を揺さぶった。それでもやっぱりかわいいねって言われてみたかったなー。ほんと単純で逆に情緒のない自分が情けないです。
夏祭りに誘うか悶々と悩んでいたあの頃を懐かしんで、ふたりで夏祭りに出かけられた過去の自分が羨ましくて仕方がないです。どうしようもないくらい大好きだったあの人と今年からはぜったい会えなくて、あの人と行った夏の日が大好きだったということだけが、これから幾度となく夏を迎える私を苦しめます。楽しくて嬉しくて酔ったようにふわふわと夢心地にさせてくれたあの日は、これから先もずっと私の中で、いちばんキラキラした想い出ということに変わりはないんだから、私の中のキラキラがいつかみっともない感情に犯されて最悪になっちゃわないように丁寧に丁寧にやさしく扱いたい。本当のこと言うと今年も大好きな君といっしょに夏祭りに行きたかったです。

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