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「若手を育てた」のではなく「既に育ってた若手が活躍した」だけのこと【J1第32節 清水エスパルスvs.名古屋グランパスの感想】


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これまでのあらすじ

前節湘南戦では3-4-2-1に対するミスマッチを晒し続けボコボコに打ちのめされて、中二日の相手に走り負け、監督も退席、と踏んだり蹴ったり。

続く今回の名古屋も同じ3-4-2-1、台風による順延試合をこなして中3日という同条件。ここにさらに監督不在という悪条件が加わってしまいました。同じ轍は踏めませぬ。清水エスパルスの明日はどっちだ、といっても過言ではない(と毎試合言っている)


スタメン


☆清水エスパルス

前節から右サイドの金子翔太が外れています。金子は今シーズン31試合ずっとスタメンで出場し続けていますのでこれは相当なことです。代わりに入っているのは前節活躍したドリブラー村田ではなく、走力でカンフル剤的な活躍を見せつつある石毛をチョイスしています。



★名古屋グランパス


こちらは前節から2シャドウを変更。早稲田大学からの出向である相馬とマリノスから夏に来たばかりの前田が外れています(今年の途中から入ったとは思えないくらい活躍していますね…w)、彼らが外れても猛威を振ったGX10と玉田が出てくるってどんな選手層だよ何残留争ってるんですかホンマ…(守備から目をそらしながら)



試合の流れについて





①3421ポジショナル攻撃への苦慮再び

立ち上がり、同じ轍は踏まぬと猛然とプレッシャーをかけ良い感じだなと思わせたエスパルスですが、残念ながら名古屋のゲームへと傾いていくことになります。

名古屋はネットが左サイドに下がることで北川、ドウグラスの2トップの追跡をかわしにかかり、石毛と立田の2人で守っているサイドにシャビエル、秋山+小林、あるいはさらに和泉と人数を加える飽和攻撃を仕掛けてきました。

石毛がやや無理なレベルで走ってくれていたので数的不利状態は湘南戦ほどは表出しませんでしたが、より厄介なのは丸山とネットで最終ラインから直接前線に精度の高いパスが入ってしまうこと。ジョーに当てられるとなかなか競り勝てないですし、かといって下がりすぎるとシャドウが空いてしまい一発でゴール前で仕掛けられてしまう。清水は名古屋のこういった多彩さに苦しむことになります。この時間帯に決められていれば別の結果になったかもしれませんが、ジョーの調子の悪さに助けられました。



②魅せる臨機応変

その中でエスパルスはなんとか最終ラインで耐えつつ名古屋の攻守の切り替えで中盤ががら空きになる弱点をついた北川君を起点とするカウンターを出せたのでまだ勝機はあるという内容。前半30分あたりからなんとか守備のリズムも取り戻すことができました。

その要因の一つはドウグラスのリーダーシップ。丸山とネットとを二人ともマークできるように北川、石毛、河井、竹内と受け渡せるように指示を出し、守備の整理がついてきました。

このあたりの修正ができるようになったのはエスパルスの今季のよくなった点ですし、得点力だけでなくリーダーシップのとれるドウグラスを取ってくれて良かったなポイントでもあります。

前半の終盤にはなんとか一進一退といえなくもないというレベルまで持っていくことができ...たとおもいきやビルドアップで詰まってこの試合一番の決定機を作られるという内容で前半終了。うーん厳しい..w



③結局タイマンでしょ?という解答

余る最終ラインから余るシャドウへの直接のパスに苦しんでいたエスパルス。ですが、ハーフタイムを挟むと様相が一変します。

後半開始時に石毛→金子。前半の休止を経て整理がついたのか、結局はサイドはワンツーやんね、という名古屋の攻撃を秋山とのタイマンをバッサリと寸断することによって一挙に清水ペースへと持っていきます。

さらに金子は前半の北川君の下がる優位と共に裏抜けによってパスコースを生み出し、そこに河井さんも呼応することによってパスを繋ぎ名古屋を押し込むことが可能になりました。FWを極力ゴール前から動かさずボランチが三人目となる崩しの連動はヤン監督名物ですね。押し込むことによって白崎、竹内の配球も活き始めます。

そうすると、その形によって生まれた大外の時間を立田くんさんが生かしドンピシャのクロスで首尾よく得点を演出しました。この得点はコーナーキックからの二次攻撃で、そこから押し込めたこともまた成長した部分ですし、後半立ち上がりからのいい流れを結果に結びつけたことは勝利を大きく手繰り寄せる出来事でした。

この先制点で勢いに乗ったエスパルスは分かりやすくノリノリで(笑)圧倒し始めると、先制点と同じ形の崩しから今度はファーサイドのドウグラスを狙うクロスで名古屋DFの予想を覆し見事な二点目。先制点と同じ北川君の動き出しを今度はブラフにした立田くんさんのゆるふわパーマ判断力が光りました。

後半立ち上がりの優勢を2得点という最高の結果に結びつけたことで、清水は名古屋の足を止めることに成功しました。本当は湘南戦でやりたかったことでしたが、その反省を活かしたといえる試合運びを見せることができました。

名古屋は前田直輝を投入して4-4-2として巻き返しを図りますが、六反のスーパーセーブ(これは松原のポジションが大説教対象)、判定の不運(六反が間に合わないように見えプレーの関与は厳しい気がします...が、六反はもともとオフサイドと見て止まっていたようにも見えましたね)、によって無失点で切り抜けると、北川→デュークで4-1-4-1として前田で炎上した左サイドをデュークでカバーするとともにジョーへの速い攻撃に対応して中央を厚くする修正手。これも見事で、カウンターのチャンスを量産することができました。

ランゲラクのスーパーセーブに阻まれることにはなりましたが、名古屋の攻勢を削ぐことに成功し安全に試合をクローズ。3試合連続のクリーンシートと3試合連続のホーム戦勝利を達成しました。これまでのシーズン戦績を考えれば驚異的な好成績!



感想など


①レベルのハネ上がった「いつも通り」

シーズン序盤には「ホームで勝てぬ…」、シーズン中盤には「いいサッカーするのに我慢が足りない…」とヤキモキさせてきた清水エスパルスですが、9月末のFC東京戦からこれらの「課題」をクリアする会心のゲームが続いています。

そういった中でぼろくそにやられてしまった湘南戦はひとつのポイントだったのですが、監督不在という中でもこれまで通りのサッカーは敵陣でするものというエスパルスのサッカーが出来ましたし、篠田代行監督自身で打ったという修正手も(監督本人以上かもしれないくらい笑)てきめんに効きました。

明らかにエスパルスの「いつも通り」のレベルが上がっていますし、これが北川航也の日本代表連続選出という結果につながっているのだと思います。小林悠や浅野が怪我してたというラッキーがあるのですけれども、このレベルを当たり前とすることで、さらに「そもそもこちらがパスで押し込む状況をもっと増やそう」という課題の解決にも期待したいところ。



②育ってた若手を使っただけです

今節で正式に来期もJ1であることが確定し、ヤン・ヨンソン監督も引き続き指揮をとれそうだということで、ピッチで見られた監督のフィロソフィーが好きで追いかけてきた自分としてはまずは最低限のものを見せることができ、ほっとしています。

「若手を育てている」という評価が主に外部からあるようですが、それはあまり正確ではありません。監督一人の力で、それも1年で「若手が育つ」などという中長期的な現象は起こりようがないですからね。清水エスパルスはもともとクラブとして「若手を育てて」いたわけで、ヤン監督はすでに育っていた若い選手を使っているにすぎません。

ただ、走力と野心があり、(ちょっとミスが多いけど)秀でた特色がひとつはあるという魅力のある選手が豊富だという戦力構成は、ヤン監督の志向と相性が良かったことは確かでしょう。元々ヤン監督の招聘にはそういう目算があったのだと思いますし、どちらかといえば強化部の手柄といえるところでしょうか。

もちろん、ヤン監督自身の功績としてはどのチームにも負けないサッカーの骨格を植え付けるなかで、能力を開花させた選手が時間を追うごとに増えてきたという部分はあるとは思いますが、年齢に関わらないかなと感じています。

個人的に今季最も伸びしろのあった選手はボランチからCBにコンバートされたフレイレですかね...w マーク外しすぎマンだった記憶があるのですが今や逆に味方のミスを拾う安心と信頼のカバーリング職人になってます。

話を戻すと、あくまでクラブの目標は「育てる」の先の部分でしょう。つまりは、カップ戦のタイトルやリーグ戦の賞金がでる4位以内という結果をつかむという部分。今季は早期敗退してしまったカップ戦でどれだけやれるのか、というところを最も重視したいと思っています。

チームの骨格を浸透させて今居る戦力を活かしていく、ここまでは昨年サンフレッチェ広島でもみせた仕事ですが、新しい戦力を育てたり育てた結果をタイトルという形で収穫できるのか、という部分はは未知のゾーンです。

そのあたりは北欧でやっていた仕事のようですし、いよいよヤン監督の真価を見ることができるのかなと思うと非常に楽しみです。悔いのないように応援していきたいと思います。


それでは!