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【MDC会報】ファジアーノ岡山vs.ツエーゲン金沢

画像はJリーグ公式サイトから

◆試合情報

岡山 3-3 金沢

得点
岡山:仲間(10分)、塚川(59分)、伊藤(70分)
金沢:マラニョン(44分:PK)、加藤(51分)、大橋(60分)

交代
岡山:三村→赤嶺(70分)、伊藤→大竹(80分)、斎藤→リカルド(86分)
金沢:マラニョン→佐藤(59分)、杉浦→宮崎(72分)、清原→金子(84分)

◆試合の感想

先に試合全体の感想だけ記しておくと、勝ちに値する内容を見せたものの、大事な局面・時間帯でいくつもナイーブなプレー、シーンが出てしまい、それが失点に直結したことで試合が混沌としてしまいました。

これまで取り組んできた伊藤、仲間に上田や塚川君もサイドを攻めたり守ったりする攻撃的な中盤の流動は一定の成果を出すことは出来ましたが、まだまだ試行回数のわりに精度が低すぎたり噛み合っていなかったりで守備の負担が大きくなり、「勿体ない」という個人のミスの次元ではない欠陥が大きくなってしまっています。いわゆるリスクの管理というやつのアレです。

妙な判定で2点目を取り消されPKを与えてしまったことや金沢・岡山共に強度の上下動が激しすぎてあっぱらぱ~な試合になったことで話が見えにくくなりましたが、チームはいったん穴を突かれると修正が効かないくらい脆く、得点力向上の試みも収支をプラスにするに至っていないという現状には変わりはないのだと捉えられる試合であったと思います。

むっくんも良しにつけ悪しきにつけ大変目立った試合になり、どうしたものかと悩ましいものです。プレー自体はふっきれてきて(整理されて)いると思われますが、非常に落差があるのですね。これはひとつの変態...さなぎのような状態なのかもしれません。いずれ蝶になるむっくん...

前提の共有

【図:岡山と金沢の狙いどころのスペース】

まず試合のお話の前提として両者の狙っていた場所を色塗りしています。

岡山は伊藤と仲間の立っているところの列が金沢の守備しにくい場所になっていて、ここで前を向いてボールを持ったら味方は走るぞ!ということになっています。これまでなかなか実らなかったむっくんのスプリントが大きな推進剤になっていて結構感極まるぜというものがありました。

逆に金沢は岡山の開いたストッパーやウイングの隙間に2トップまたはSHが突っ込むことが最も敵陣に迫れる形で、特に後半右サイドに空中戦の狙いを定めることで複数得点を挙げるに至りました。

攻守に圧倒した3-4-3

前半の岡山は、3トップが連動したプレスで苦し紛れのロングボールを誘導、セカンドボール争いで優位に立ち、斎藤と仲間がSBの上がった裏や、中央でのポストプレーを展開してウイングが高い位置に侵入、そのままスピードを落とすことなくSBとCBの間に飛び込んでシュートの射程内に入る、という形をはっきりと出すことが出来ていました。三村さんもむっくんもめっちゃ上がっていて、その隙間は一度ストッパーが出て持ちこたえたり、中盤の選手(上田や戻ってきたシャドウ)が埋めるようにシフトしてきています。

前半10分の先制ゴールはまさにその粋が結集したと言えるでしょう。斎藤さんのポストプレーから始まって仲間とのトライアングルで迫ったファインゴール。ナイスむっくん。

金沢は始めは最終ラインへのプレスを敢行するも3バックとの数的な差(後藤圭太さんが攻守に一対一で問題ないのがでかかった)によってプレスを回避されて斎藤・仲間方面へと飛ばされ、岡山の守備のスイッチが入るというループになりました。ボランチの大橋が動いてサイドの加藤が絞ってシャドウのようになったりする4-2-2-2化で【上図白ゾーン】にボールが入り前半終盤には時間を作れるようになったものの、岡山の上田—塚川ー伊藤—仲間のラインの運動量と読みが勝り、最近の試合には珍しく専ら岡山のペースで進みました。

金沢に勇気を与えたいくつかのナイーブさについて

金沢のチャンスは岡山が前線に人数を割くスイッチが入ったところをひっかけるカウンターからでした。岡山の敵陣での動きは改善傾向にあるものの、ボールの止め方には非常に難があり、攻撃にいこう・そこから取って返してしっかり守ろうというモメンタムを削ぐには十分でした。サイドチェンジやそれよりも短い横パスでミスをするのは非常に萎える。受けるほうも目立ちますが、蹴る方の準備不足も見過ごせません。

同点に追いつくPKとなったFKは、マラニョンが斎藤さん仕事返しやといわんばかりの濱田を孤立させてのデュエルからこぼれ球に杉浦や両ボランチが殺到してボールを奪われてしまいたまらず仲間が飛び込んでイエローをもらったという流れ。これは後半にも継続されるもので、ちょっとした伏線でした。だからこそ何事もなく前半を終えたかったですね…

それまでチャンスらしいチャンスがほとんどなかった金沢が、PKとはいえゴールに結びつけたことは見事。ではあるのですが、2点目になるはずのシーンに引き続き斎藤さんが掴んで倒したとされるファウルを取られてしまいました。DAZNのカメラではちょっとよくわからないので不運なのかなとは思うのですが、2度続けて同じファウル、それも得点にかかわるところで取られるのはちょっとなというところがあります。後半完全に抜け出たシーンでも同じファウルを貰ってチャンスがなくなってしまっていました。まあマッチアップした作田の勝利と言ってもいいのかもしれませんが。

さらに、後半になると金沢が前述の右サイドの空中戦に活路を見出しカウンターや跳ね返しを拾った準速攻からギリギリの1対1が増えていました。喜山や三村との空中戦や、トラップが乱れがちであるところを狙う前プレで岡山はボール出しに苦労することになります。そして、ボールを持てればSBやボランチが突っ込んできて【上図白いスペース】を狙っていました。

その状況下でのセットプレーのシーン。3CBが上がった状態で上田・仲間・むっくんがのこっており金沢も加藤と清原を残してPAでの駆け引きとなっていましたが、こぼれだまを三村が残してどフリーとなったむっくんが中の動きと完全にずれたクロスで、金沢のカウンターを誘発してしまい、上田と仲間の奮闘がそれぞれ悪い方に転んで失点となってしまいました。仲間はミスマッチ辛めの加藤との敗走しながらの浮き球の処理となったので、責めるのはちょっとかわいそう。3CBが上がりきって高さを確保した場面で低いクロスを相手にぶつけてしまったむっくんがダントツで悪いですね…これはひどかった…

挽回の塚川君ミドル直後のキックオフも、同じ攻めを狙おうとする岡山に二度目は許さない金沢の激しさを見誤り、喜山と三村がばたついた3失点目とナイーブの連鎖が止まりませんでした。喜山のトラップの緩さは前半も狙われて危うかったので、ある意味伏線。ボールの置き方ちょっとクセありますよね。

これらのどれかが止まれば落ち着きを取り戻しもう少し勝てる可能性があったのではないかと思うと残念でした。先述したとおり誰かの問題ということではなくチームのやり方がまだ詰めるべきところがあるという話の方が生産的でしょう。

強度乱高下と馴染みとなった機能しない交代策

後半の金沢は位置取りが少し下がり、4-4-1-1気味の中盤の伊藤や上田のマークを意識した形でしたが、勝ち越しによって岡山の前半の攻撃性を蘇り、3得点後はサイドに出すボールに対して明確に緩んだしまったことによってむっくんのコンビネーションが【上図赤ゾーン】で爆発することになります。

金沢が専ら岡山の左サイドにボールを送ったからかと思いましたが、金沢のプレスが止んだあともむっくんからゴーであったので、岡山の強みでもあったと言えそうです。むっくんの裏抜けで得たスローインから塚川君のカットインミドル、そして同じくむっくんの【赤ゾーン突破】クロスに斎藤さん(決めてクレメンス...)、そして赤嶺投入でサイドに移った斎藤さんとむっくんのコンビネーションから二度あることは三度あるクロスを今度は伊藤大介が押し込み同点。ここの流れはとても良かったと思います。むっくん3得点演出とかちょっとよくわからない。

追いつかれて慌ててコンパクトさを取り戻した金沢と逆転を狙い放り込み作戦になった岡山とでここからはもうあっぱらぱ〜になりました。リカルド氏放り込み勝てる子ちゃうやんだったり仲間がウイングになると別人になったり大竹が上空をボールが通過する展開で無となったりの実家のように安心する光景となったことで金沢が【白】を攻め込むシーンが圧倒的に増え、一森がサンキューイッチするこれまた安心する光景でゲームセット。お互いに乱高下のパフォーマンスでとても忙しい試合でした。ワールドカップリスペクトみたいなあたふたで夏の到来を感じさせました。。。

◆むっくんの感想

やっと実った3得点演出と減らないエラー

むっくんの感想。仲間・斎藤に加えて伊藤大介さんとサイドの三角形が岡山の攻撃を改善しているわけですが、むっくんがその主役に躍り出た試合でした。対面の沼田も加藤も非常にイマイチだったので、むっくんのこれまでは数うっても当たらない走り込みだったものがいくつか効果的になっています。その走り込みの、中央に切りこむ形がどんどん多くなっているのが最近のむっくんの流行、チームの狙いになってきたと言えるでしょう。

それがあの先制点でしたし、塚川君のミドルにつながったスローインに至る突破でしたし、斎藤さんのクロスに結びつくコンビネーションでした。サイドでFWやシャドウがボールを持った時にインサイドのレーン【上図赤ゾーン】に飛び込みマイナスのクロスを送る、という形がようやくはっきりと効果的な姿で見られるようになっています。あっぱらぱーな試合でしたが、この3得点はいずれも組織的なゴールでしたし、何度も同じ形でゴールに迫っているということは戦術的な狙いであることは疑いないでしょう。

ただ、むっくんが敵陣に突っ込むことに振りすぎてるせいなのか、自陣でのプレーですら足許がおぼつかなくなっているのが、ちょっとそれむっくんの持ち味とちゃうのでは…と結構DOUYOUしています。この試合があっぱらぱーになったのは確実にむっくんの2失点目のワンプレーが要因ですし、それ以外にも自陣でサイドチェンジを受ける際のイージーミスだったり、中盤の選手がサイドのカバーに来る際の受け渡しや詰めるタイミング、身体の向きだったりが、SB時代と違うアップダウンのせいなのか、かなり危ういものになっています。(それが讃岐戦では常に狙われていました)


前半の強度・精度でもまだ足りないですし、3点取られた後のバーサーカーモードくらいのものを、相手がペースを緩めていたという留保のない状態で出すことが勝利のためには必要でしょう。体力的な問題だけであるならば一度メンバーから外れる可能性も考えられますが、負けてた時のバーサクぶりがちょっと次元が違ったので、メンタル面、これまで経験してこなかった役割への適応の問題でありそうです。

ちょっと分の悪い博打な気がするなーというのが個人的な感想ですが、(地味なところでがんばってゲームのバランスを保つのが魅力だと思ってたので)このインナーラップバランスブレイカーむっくんは新しい境地ですし、チームの攻撃の精度を変えつつあります。夏のむっくんはインサイドを走るチョイ悪スタイル。メリハリをもって繰り出せるかどうかにヴェルディ戦は注目しようと思います。そしてむっくんは蝶になる。完全変態むっくんや...

それでは。