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私の本棚2024年版~司法試験・予備試験~行政法のおススメ

2024年4月更新


第1 はじめに

 本記事は、「私の本棚~司法試験編~行政法」の2024年度アップデート版です。2021年に公開した前回の記事から書籍を更新しつつ、リンクを入れ替えたりして最新版に対応させました。
 またこの間の指導経験や実際の利用に応じて感じた内容を改めて追記しました。

第2 行政法の書籍の外観

 行政法は、特に演習書が非常に多い印象です。基本書も定評のある者が多いですが、それよりも試験に使えて行政法の理解につながる本が多いです。行政法は最後に学習する科目であり、いまだにあり、苦手意識を持っている人が多いで。しかし、丁寧でわかりやすい基本書や演習書を見ることで、疑問を解消できるのでは?と思っています。

第3 書籍紹介

1 基本書・教科書

①『行政法(第6版)』有斐閣 櫻井敬子・橋本博之著 通称サクハシ ★★★

 教科書と言ったらこれ敷かないと思う一冊。知識の整理,定義,判例の整理などしっかりしており基礎基本が学べる一冊。やや古いという思いもあるが,改定もされているし,後述の判例ノートとのリンクもしっかりしており,それを使えば試験的には必要十分だと思う。あとは過去問分析と演習書で十分。 
 個人的には基本行政法よりもこっちの方が好き。

②『基本行政法(第4版)』日本評論社 中原茂樹著 ★★

 メジャーな1冊。私の受験のころに初版を読みましたが,事例問題集と教科書の間という印象で使いにくかったため,私はお勧めしていない。判例を簡単にして事例にしており,判例の簡単な理解にはよいのかもしれないが,ある程度の判例を深く理解するほうが試験的にはよいと考えるので。。まぁみんな使っているからこれ!という選択肢は間違えではないのでよいと思う。

2 体系書

①『法学叢書 行政法I 行政法総論 (法学叢書 2-1)』新世社 興津征雄著 ★★★

 近時話題だった書籍。読んでみましたが、非常に重厚な情報量、圧倒されます。しかし文章が読みやすく、論理の流れを正確に理解できるため、概念を正確に理解できる。行政法総論は特に概念的でどのような概念か?実体的にはどう使うのか?わかりにくい部分が大きい。それをこの本は圧倒的な文章量で説明してひねりつぶしており非常にわかりやすい。
 早く救済法がほしい。

②『行政法1ー行政法総論(第6版)』『行政法2ー行政救済法(第6版)』『行政法3-行政組織法『第5版』』有斐閣 塩野宏著 ★★

 行政法の大家の体系書。これに書いてなかったらもうそれは存在しないんじゃないかな。少なくとも試験的にはこれ以上に調べたりする必要はない。
 ここまであたる必要すらないが,調べものならまずはこれという感じ。あまり量も多くないので通読もできそうだが,判例の引用の少なさ,縦書きという点でやや劣るか。受験時代から定期的に調べているし,今も常に買い替えている1冊(3冊?)。

③『行政法概説Ⅰー行政法総論(第8版)』『行政法概説Ⅰー行政救済法(第7版)』有斐閣 宇賀克也著 ★

 最新・信頼の体系書(ってたしか帯に書いてあったような…)。最高裁判事の宇賀先生のシリーズ。
 どうでもいいですが,最高裁判事の仕事しながら本を更新できるって常人ではないですよね。内容の質・量ともに申し分ないですし,塩野が肌に合わないならこちらでもOKかと思います。最近ではむしろこちらが受験生のメインですかね。

3 演習書

①『事例研究行政法(第4版)』日本評論社 ★★★

 事例問題であればこれという1冊。ロースクールでの授業経験をベースに問題を作成し,解説やコラムで学生が陥りやすい間違いなどが書かれている。第1部の問題だけ解ければ基本的に司法試験対策としては十分なレベルと思う。第2部も秀逸。
 前版までは第3部まで問題があったが、第三部はオーバースペック気味だったのでほとんど使用していなかった。これが,第4版以降はなくなり、第1部・第2部の問題数が拡充されている。また論点表がつくなど使いやすくなっている。ロースクールの開闢以来の伝統的な行政法の演習書であり、全員に読んでもらいたい!
 できれば1部だけでも。試験委員の先生方の問題意識もここのコラムに書いてあるといえ,試験対策には必須の一冊。

②『実践演習行政法』弘文堂 土田伸也著 ★★

 上記の土田先生による予備試験問題の解説書。この実践演習はシリーズで全9法出る予定だったのですが現在刑法と民法まで。行政法は基礎演習とテイスト的には同じですが,予備試験の問題であること,参考答案がついている点が違い。網羅性には欠けるが過去問分析のツールとしては役に立つと思う。過去問解析系の本がないという人は,学者の予備試験解説はおそらくほかにないので買ってみてもよいと思う。
 なお,答案例はやや長めだがあれを8割くらいかければ余裕で合格という水準を超えるくらいだろう。

③『[新版]行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く』有斐閣 橋本博之著 ★★★

 最近新版が出たが、この本(下記の前の版)がなければ、私人、個別法の仕組み解釈の理解はできなかったと思う一冊。自分が読んだときはまだ仕組み解釈という言葉が独り歩きしてどういうものか?実態のつかめない状況だったのですが,この本でずいぶんとよくわかるようになります。
 また,過去問をベースに解説しており過去問解説としても使用できる優れもの。少し古いので今から買うべきかは迷うが,今でも通用する一冊だと思う。自分は受験後に一度、廃棄してしまったが、再度購入したので,いまだに手元にある。
 最新版も内容が拡充しており非常によい。とはいえ、行政法は演習書や過去問解説系も多いのでどれがいいかは個人の好みかな。
※2023年に出た新版とは掲載されている過去問が違うので、旧版も以下でおすすめ。

④『行政法ガール』『行政法ガールⅡ』法律文化社 大島義則著 ★★★

 憲法ガールと同様に過去問をベースにした小説形式の解説書。基本的な問題文の読み解きに始まり,判例をどのように使うのか,処分性や原告適格,裁量論といった主要テーマの解説などを含んだ過去問解析の王道の本といえる。ちなみに著者の大島先生は必修の行政法を慶応ローで持っているということで,うらやましいなぁと思う(笑。憲法ガールと同様に個別指導の際には購入するように指示する本です。

⑤『行政法解釈の技法』橋本・大島・伊藤著 弘文堂 ★★★

 迷うことなく購入するべき一冊。この手のテーマは何度もこすられているが、本書は最良の1冊。予備試験・司法試験対策としてしはこれ以上ないくらいまとまっているため、隅から隅まで読み込むべし。

⑥『基本行政法判例演習』中原著 日本評論社 ★★★

 判例集としても演習書としても使える。基本行政が教科書と判例集と演習書の中間をとろうとしてやや不鮮明に感じていた違和感がなく、演習に振り切れているので非常に読みやすい。判例の個別法の解釈を丁寧に追えるため非常に使い勝手がよい。ロースクールの演習で利用した教材というだけあってわかりやすい。

4 判例集

①『行政法判例百選Ⅰ(第8版)』『行政法判例百選(第8版)』有斐閣 宇賀他編 ★

 一応,定番書籍ということで判例百選を上げますが…
 しかし,これは掲載判例が多すぎる,一個一個の判例の事案や判旨の引用が少ないし解説も内容が薄いため,試験対策向けとしては不適切だと思います。択一用でざっと見るという書籍というところか。もう少し厳選してほしいなぁという数なので微妙。
 もっとしっかりしてくれと思う書籍です。

②『精読行政法判例』弘文堂 土井他著 ★★★

 憲法でもでているシリーズ。行政法も憲法同様に判例が非常に重要。特に当時の法令をどう解釈したのか?という視点が大事なのですが、当時の法令を掲載したり、判決文を長く掲載するのは難しい。本書は厳選した判例をじっくり読み込めるため、100選よりも判例ノートよりも深く深く学習するには非常におすすめ。
 もっとも、本書を使いこなすにはある程度の学習(入門講座等で判例の概要などを理解したうえで)使用する必要があるだろう。

③『行政判例ノート(第5版)』弘文堂 橋本博之著 ★★★

 サクハシ向けの判例集。コンパクトでよいし近時の改定で直近の最新判例も掲載された上に体裁なども変わって読みやすくより使いやすくなった一冊。サクハシと合わせて使えば行政法の知識不足は生じないレベルといえる。ただし,引用されている判決文がやや短いものもあるのでそこが難点か。

5 そのほか

①『行政法Ⅰ 現代行政過程論 第5版』『行政法IⅡ 現代行政救済論 第4版』有斐閣 大橋洋一著 ★★

 基本書としても使えると思うが,どちらかというと論点の理解のために読むという感じの本。判例の理解も深く書かれており教科書と判例集の良いとこどりをしており非常によい本。そのため中途半端かな?とも思えるが,人によってはこれで十分に答案を作成できる量の知識とノウハウを得られると思う。

②『実務解説 行政訴訟』勁草書房 大島義則編著 ★★★

 行政事件訴訟法を改正時の立法資料から解説している一冊。取消訴訟の部分だけでも司法試験・予備試験対策として非常に有効な記載が多く,そういう仕組みでこういう判例があるのかなど理解が深まる書籍。また,近時の司法試験・予備試験は取消訴訟以外の訴訟類型とその訴訟要件や関連論点への言及を求める傾向にあり,そのような点もこの本があれば対応できると思う。択一対策として,行政事件訴訟法のコンメンタールを読む感じでややオーバースペックだし,参考書としてはやや高額だが,行政法で高得点を狙うならぜひ読んでほしい一冊。

③『新人弁護士カエデ、行政法に挑む』学陽書房 大島義則著 ★

 行政事件をベースにしたお仕事本…と思いきや事例問題の取り組み方もわかる良書。試験勉強でも使えます。

 個人的には、司法試験の受験後とか予備試験論文後とかのタイミングで読むといいと思う。実務基礎のイメージもつかめるのでよいかなと。

④『行政法入門(第7版)』有斐閣 藤田 宙靖著 ★★

 少し古い書籍ですが、入門書として最適。また、ある程度論点学習が進んだ後、論点間の体系的な位置付けを確認する、整理するために読む本としても使える。文章もわかりやすくお勧め。

※前の記事から削除した書籍

③『行政法(第2版)』有斐閣 宇賀克也著 
②『基礎演習行政法(第2版)』日本評論社 土田伸也著 
④『行政法事案解析の作法(第2版)』日本評論社 大貫・土田著 ②『ケースブック行政法(第7版)』弘文堂 稲葉他編
⑤『事例から行政法を考える』有斐閣 北村他著
⇒基本的には演習書である。演習書は人それぞれだと思う部分があるので複数掲載していたが、今回事例研究や過去問解析系を中心に推奨するようにしたため省略した。また、数が多くなってきたので自分が使用していたといよりも、最近の指導で使う方を優先した。

第4 さいごに

 以上です!行政法はもっといろいろあるので随時加筆していきます!



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