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君を

 小瓶に手紙を入れて栓をして海に流す。その手紙を海の向こうの誰かが受け取って…。そんな物語を子供の頃には見聞きしたことがある。
 連絡を取れなくなったある人への手紙を海へ流そうかと、ふと思う。

 その人と出会ったのは2017年。ちょうどその頃に私は生まれて初めて趣味と呼べるものに出会った。趣味との出会いとほぼ同時期に新たな友人に出会った。それから数年間、趣味を通じた楽しいやり取りをしていた。イベントで会ったり、SNSを連絡手段にして趣味のこと、推しのことを語り合ったり。きっと私達の会話は興味のない人が聞いたら1つも面白くなかっただろうなと思うけれど、私にはとても幸せな時間だった。

 その友人との関係にいったん区切りがついてしまった。

 連絡手段にしていたSNSのアカウントは、友人のものは、もう存在しない。SNSから去る前に連絡があったから、一言だけ今までありがとうと伝えることはできた。けれど言い足りない気持ちがまだ自分の胸の内に燻っている。そこで思い出したのが小瓶に詰めた手紙の話だった。
 伝えられるかというと、伝わらない可能性の方がはるかに高いだろうということは百も承知で、インターネットの海に自分の気持ちを流そうとしている。

「趣味と推しを通じて出会えたあなたのこと、ずっと大好きです。今までもこれからも、あなたのこと友達だと思っています。再会できる日はきっと来ると自分に言い聞かせながら、今も私は趣味を続けています。また会いたい。あなたに会いたい。」

友と呼び続けることに惑いなし四十を過ぎて出逢った君を

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