2024年4月12日の日記

2024年4月11日に、精神科の主治医から双極性障害(躁うつ病)との診断を受けた。正確には、「ご自身で双極性障害の気質があると認識されている時点で改めてその診断を下す必要性がないので、診断書に記載はしませんが、双極性障害の気質をお持ちです」と言われた。双極性障害の定義は以下の通り。

「躁状態(気分の高揚・活力および活動性の増加・睡眠要求の低下)とうつ状態(抑うつ気分・気分の低下・活力および活動性の減少)のエピソードが反復するもので、軽躁で数日間、躁状態で1週間以上、うつ状態は2週間以上続く。」

国立精神・神経研究センターHPより

また、一般的に双極性障害は以下の4つに分類される。

・Bipolar disorder1・・・典型的な躁うつ病。重度の躁状態とうつ状態を繰り返す。
・Bipolar disorder2・・・うつ状態は重度だが躁は比較的軽度。
・Cyclothymia・・・双極性障害ほどではないが、気分や活動の浮き沈みが激しい。
・Hyperthymia・・・うつ状態のない軽い躁が続く「活動過多」な性格。

高城未来研究所『Future Report』vol.644

あくまで主観だが、僕の場合はCyclothymia(循環気質)と思われる。具体的には、クラブのパーティーに行ったり、友達と遅くまで飲んだり喋ったりしていると、テンションが異様に高くなって寝付けなかったり、その翌日にはベットから起き上がれずに1日を過ごすなど、数日単位で気分の浮き沈みがある。昨年の11月に休職した時点では抑うつ症状との診断だったので、楽しいことやって気分転換しようと、時には朝までパーティーで踊って過ごしていたが、今後はそうもいかなくなる。友達と一緒に夜を過ごしたら、結局は酒を飲みたくなるし、そうなると早口で喋りまくって、テンションが上がって寝れなくなる。映画を観に行っても、その映画のことをしばらくは考えて頭が冴えてしまうので、19時以降に映画を観に行くのも、躁状態を避けるには好ましくない。本を読むのも同様に夜は難しい。困ったことに映画も本もパーティーも、面白いほど気分がハイになり、頭が冴えるので、その後うつ状態になる可能性が高く、慎重に避けるようにしている。こうなると自分の大好きなサブカルチャーからは距離を取ることになる。
昨日、双極性障害の診断を受ける1ヶ月ほど前、僕自身が主催した「饗宴」というパーティーの前後で躁鬱の大きな波を体験してから、何となく自分が抑うつではなく躁鬱なんではないかと予感してから、パーティーに行くのを避けて、夜は家で過ごし、昼間に出かけるよう意識していた。一般的に月曜から金曜まで働かれている皆様は体験したことがないかもしれないが、僕のように学校にも会社にも行く必要が無い成人男性が都会で昼間をやり過ごすことは難しい。僕の場合は近所の代々木公園へ、道中のカフェでの小休憩を挟みながら、1−2時間の長い散歩をすることが増えた。散歩している時には、あまり自分のこと、会社のことには意識を向けず、景色にぼんやりと目を向けるようにしている。特に最近は花見のシーズンで、皆さん桜に目を奪われがちだが、僕はしゃがんで地面を見ている。雑草の間には蟻や蜂など色々な虫が活発になってきて興味深いし、散った桜と落ち葉と若草のまだら模様が、引き目ではジャクソンポロックのアクションペインティングにも見える。このようにして、僕は都会の人や情報の刺激を避けながら、自分が躁状態にならないよう気をつけている。しかし、昼間は散歩やら読書やらでやり過ごしても、夜の過ごし方には本当に困っている。これまで大好きだったパーティーも、友人との飲みも映画も読書も、何もかも楽しいことは躁状態へのきっかけになりうる。そこで僕はこうして日記を始めることにした。基本的にはその日の出来事やそれについて考えたことを書くつもりだが、日によっては過去のことも書こうと思う。一応は広く公開されてしまうものなので、個人名は伏せて書いていくつもりだ。
今日は、薬の作用で昼の12時ごろまで寝て、それから肉が食べたくなって近所のMon Bouefというフレンチビストロでハンバーグと、サラダの乗った蕎麦粉ガレット、玄米ライスを食べた。かなりのボリュームで食べたら眠くなり14時から15時半ごろまで昼寝した。16時ごろに家を出て、リトルナップコーヒーでドリップコーヒーを飲んだ。豆が数種類から選べるので、一番苦いのはどれですかと聞いたらブラジルだったのでそれを注文した。リトルナップは音響と選曲が素晴らしいのでお気に入りのカフェだ。今日はランゲージイクスチェンジなのか、日本人の女性が外国人と思われるナイスガイと英語でおしゃべりしていた。マッチングアプリで知り合った男女のデートか、そうではなく、元々知り合い同士のデートかが僅かの会話を聞けば判断できるように、ランゲージイクスチェンジかそうでなく単なる友人同士かもすぐに分かる。コーヒーを飲んだ後は代々木公園に行く定番のコース。桜のピークは過ぎ、葉桜になっている。今日は噴水のある池のほとりで腰を下ろした。水面の揺らぎと木の葉の揺らぎを見ていた。僕も少し揺れた。風と鳥の鳴き声。僕も木の葉も水面も揺らいでいるが、木は揺らいでいるんだろうか。確かに目で見て分かる範囲では動いていないが、オッペンハイマーの原子シーンのように、科学的に観察したら、微動だにしていないとは考えにくい。ちなみに、こうして日記を書いてみようと思い立ったのは、リトルナップコーヒーにいる時だった。
家に帰り着いたのが17時半ごろ。映画『ブレードランナー』のサントラレコードを聴きながらこの日記を書き始めた。今は夕食を挟んで21時18分、映画『ベティブルー』のサントラを聴いている。近頃はサントラレコードを収集し始めていて、これが今までにない発見がたくさんあって映画好きとしては楽しい。まず、有名なミュージシャンが無名の映画(上映当時は有名だったかもしれない)に楽曲を提供していたりする。コメディ映画『ソウル・マン』のテーマ曲は、題名そのまんま「Soul Man」(ブルースブラザーズも歌ってます)で、SAM & DAVEのオリジナルではなく、サム・ムーアと、何とルー・リードの二人による、カバーヴァージョン。ルーリードファンの僕でも知らなかった。このルーリードの主題歌に惹かれてレコード買ったついでに『ソウル・マン』という映画の方も調べたら、ハーヴァード大学に合格したものの、学費がないことに頭を抱えた主人公が、肌を黒くして黒人になり済まし、黒人学生向けの奨学金をゲットしようと試みるというのが話の入り口らしい。人種差別的な表現もあり公開当時問題になったそうだが、それで思い出したのはドナルドクローヴァー(アーティスト名のチャイルディッシュガンビーノの方が有名かも)主演、制作総指揮、監督、脚本を務めるコメディードラマ『アトランタ』で、アトランタを舞台に従兄弟のラッパーのマネージャーとしてドナルドグローヴァーが働く生活を描いている。そのシーズン1第7話「人種転換」は、そのドラマ内の架空ドキュメンタリーで、自意識としては白人だと主張するナードな黒人がフィーチャーされる。その白人意識のある黒人は、最終的に整形手術で実際に肌を白くするのだが、手術後の感想で黒人への差別的な発言を連発し撮影が急遽中断される。この黒人から白人への「人種転換」というアイデアは、おそらく『ソウル・マン』の白人から黒人へという「人種転換」のパロディと思われる。こうして世間一般には駄作として歴史に埋もれてしまった映画に新たな発見があるのも、サントラレコード収集の楽しみだ。明日は朝から友人の映画撮影を見学させてもらうので、そろそろ風呂に入って寝る。ちなみに今聴いているのはデヴィッド・ボウイ主演『ジャスト・ア・ジゴロ』(1978年公開)のサントラ。おやすみなさい。

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