地球の歩き方 「エストニア」
「老後の過ごし方はどうしようかな?」
そんなことをたまに考えたりする。まだ50年後ぐらい先のことなので、いま考える必要はないのだろうけど、ふと老後のことが頭をよぎったりする。そもそも自分が老後まで生きれているかもわからないのだが。
仕事も引退して時間ができた時に、何か打ち込める趣味があるといいなって思う。仕事だけに全てを捧げていると、定年退職した時にぽっかり穴が開いてしまうのではないかという心配があるからだ。
そんなときに趣味のコミュニティに参加していれば、会社員という役割を失っても孤独になることはなさそうだ。別に趣味がなくても、家族がいれば、孤独感は感じないかもしれないが。
若いうちから食わず嫌いせずにいろんなことに足を突っ込みたがるのは、老後になっても打ち込める趣味を見つけておきたいからなのかもしれない。そして、何かに打ち込んでいる人はイキイキしてて心も体も若い。
なんでこんな話をしているのかというと、バルト三国のひとつであるエストニアを訪れたときに、活力に満ちたご高齢の男性の方と出会ったのだ。その男性は、なんとヨーロッパの国を自転車で旅していた。定年退職されて時間とお金があるので、自転車に荷物をくくりつけて放浪することを趣味として始められたそうだ。
エストニアの旅行記は、その方との出会いをメインで書こうと思う。
↓ユーラシア大陸横断をしたきっかけについてはこちらの記事を
ユーラシア大陸横断の旅を共にした友達は、高いカメラを持っていた。大学生になってアルバイトを頑張り、お金を貯めて購入したらしい。この高額なカメラを使ってヨーロッパの世界遺産をフィルムに収めようというわけだ。
僕はカメラについて興味が全くなかったので、値段を聞いた時にびっくりした。カメラって結構お金がかかる趣味なんですね。一生の思い出を最高の写真として残せることを考えると、高いカメラを買うのはアリだなと、今では思う。
友達にお願いされて、そのカメラで、世界遺産であるタリン歴史地区をバックにその子の写真を撮る。うまく撮るコツとか全然知らないので、とりあえずフィーリングで撮ってたら、「おい、写真が斜めってるぞ」と怒られた。宝の持ち腐れだ。三毛田さんがいれば、代わりに撮って欲しかった。
僕が写真を撮るのが下手くそなことと旅の疲れとがあいまって、2人の仲が少しずつギスギスし始めた。長旅をしていると気まずい瞬間が訪れることも予想していたが、やっぱりそれは避けられなかった。
タリン歴史地区の高台みたいなところで休憩していると、誰かに声をかけられた。声の主を見てみると、ご高齢の男性だ。年齢はたしか60代後半だったと思う。メガネをかけていて、やわらかい笑顔だった。
どんな言葉で会話が始まったのか残念ながら忘れてしまったのだが、「日本人の方ですか?」みたいなことを聞いたと思う。
シベリア鉄道でも日本人の方と出会ったが、このエストニアでもそんな機会があるとは。自然と会話が弾む。
「バックパッカーでどこの国を旅しているの?」
「ユーラシア大陸を横断しているところです」
「ええ!すごいねぇ」
「めちゃくちゃきついです笑」
「エストニアに来る前はどこにいたの?」
「ロシアからエストニアに入国しました」
「そうなんですね。私はエストニアに入国する前はフィンランドを旅していました」
「自転車でヨーロッパの街並みを旅するのが好きなんですよ」
太陽みたいな明るい笑顔で、そう語られているのが印象的だった。
「きっかけはなんだったんですか?」
「会社員として働いていたときにヨーロッパに海外出張する機会があったのですが、そのときにこの街を自転車で旅してみたいと思ったんです」
「それで仕事を引退してから、こうして自転車で旅をしているんです」
こんなイキイキして過ごせる老後を、自分も送りたいと感じた。新しいこととかに積極的にチャレンジしている人は若い人が多い印象だけど、まさにそれを代表するような方だった。
僕の祖母もそういう人で、今年で85歳なのだがまだまだ若い。長生きする秘訣は、おばあちゃんを見ているとわかる。「楽観的・新しいことにチャレンジする・自然由来の物を食べる」この3つが健康につながっているのではないかと思う。
エストニアで出会ったこの男性の方とは、旅行後もメールでやり取りをした。無事ユーラシア大陸横断の旅を終えたことも報告した。
その方と一緒に撮った写真を今見返しているのだが、すばらしい笑顔をされている。
まだまだこの目で見たい景色や、食べたい料理がたくさんある。
そのためには、長く生きなければならない。
◾️ユーラシア大陸横断記
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