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仕事ができるって、どういうこと?

大学院生生活が、もうすぐ終わろうとしている。

まだ、春の日本物理学会の発表が残っているけど。けど、一区切りがついた。単位が足りてなかった(何回も確認したけど)、もしくは修士論文にミスがあり、学位がもらえないという、もはや笑うしかない事態にならないことを祈るばかりだ。

あと1ヶ月と数週間たてば、社会人として働いていることになる。修士論文でバタバタしていたら、もう社会人間近になっていた。


初めてバイトで働いたのは、地元にあった工場でだ。コンビニのスイーツなどを作っていた工場で、日給が高いから、単発バイトで働いてみた。働いて感じたことは、「お金をいただくのって大変なんだな」ということと、「いろんな能力が求められるんだな」ということ。

1つ目については分かりやすいので言及しないけど、2つ目については単純作業が多そうな工場でも、周りの人とコミュケーションを取る能力や、状況を確認したりする能力などが求められて、仕事というものはいろんな能力が必要なんだと感じた。

今となって思えば、それは当たり前のことなんだけど。


勉強は基本的に一人で黙々とやっていれば成果が出せるけど、働くというのはそうではないと思った。過去問を解き、解法を身につければ点数が取れる試験とは別物だと感じた。

その時その時で状況が変わるし、周りの人とコミュニケーションを取らなければミスが増え、業務が滞ってしまう。難しい問題をガリガリと解くのは、それはそれで知的な能力を要するけど、仕事の方が変動性や不確実性が高いと感じた。周りの方とうまく協力する能力も、もちろん不可欠。



ところで仕事ができる人とは、どのような人なんだろう。仕事ができる人と、仕事ができない人とを集合で分けたときに、できれば、仕事ができる人の集合にいたい。

まだ社会人になっていないのでそれを知ることはできないが、自分に馴染みのある物理学の観点から考えてみたい。


物理学でいうところの仕事は、力×距離だ。ある物体に力を加えて、そのとき、どれだけ動いたかという量をかけたものが、物理学で定義される仕事。

しかし、加えた力の向きと動いた方向も考慮する必要があるので、仕事$${W}$$の厳密な定義はベクトルを使って

$$
W=\boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{x}
$$

と書ける。ここで$${\boldsymbol{F}}$$は力で、$${\boldsymbol{x}}$$は変位。変位は漢字から推察できるように、どの方向にどれだけ動いたかを表すもの。ベクトルは太字で書く慣習があり、$${\cdot}$$はベクトルの内積の記号。

物理の仕事のイメージは下の図。物体に力$${\boldsymbol{F}}$$を作用させて、$${\boldsymbol{x}}$$だけ動かしている状況。


この式を使って、仕事ができるとはどういうことかを、考えてみることにする。

まずわかるのが、力を大きくすれば仕事も大きくなることだ。ここでいう力は、自分が費やした労力やエネルギーのことを意味していると思う。

当たり前だけど、ただ何もせずじっとしているだけでは仕事は進まないので、自分から働きかけて業務をやり遂げないといけない。単純に考えて、熱心に頑張る人の方が加えた力も大きくなるだろうから、その分、なされる仕事も大きくなることは想像しやすい。


けれど、仕事の定義に立ち返ると、力だけではなく変位も考えないといけない。変位とは、どの方向にどれだけ動いたかを表すものだった。なので、たとえ加えた力が小さくとも、変位が大きければ、なした仕事も大きいということになる。

職場で楽しくおしゃべりしていて、全然まじめに働いてなさそうなのに、実は仕事が超できる人物が、映画やドラマなどで出てくることがあるが、あのイメージに近いのかな。

自分で加えている力は小さいけれど、うまく周りの人に仕事を振ったり、どこを重点的にやればいいか心得ているから、業務が進んでいく。つまり、熱心に仕事をやっていないように見えるけど、実際は変位が大きい。


逆に、いくら加える力を大きくしても、変位がゼロであれば、仕事もゼロということになる。これは、結果が全てみたいな厳しさを表しているような気がして、悲しくもなってくる。

企業も利益を上げられないと倒産してしまうので、それは致し方ないことなのかもしれない。これが仕事の世界の厳しさにつながっているのか。社会に出てないので、憶測でしかないけど。


ということで、働く際には、加える力だけではなく、変位のこともしっかり意識しようと思う。わからないことはちゃんと質問して、どこが大事なポイントなのかをしっかりと把握する。

会社全体が進んでいる方向と逆向きに力を加えてしまう(この場合、負の仕事をしたことになる)ことのないように、注意したい。



そういえば思い出したけど、就活をしていたときに周りの人が満場一致で「社会人向いていない」とか「仕事できなさそう」と言っていた。

どうやらこのままでは、仕事ができない人の集合に属することになりそうだ。



おまけ

物理学には、単位時間あたりの仕事量を表す「仕事率」とよばれるものもある。

これは、先ほど説明した仕事$${W}$$を、時間$${t}$$で割ったものであり、仕事率$${P}$$は

$$
P = \frac{W}{t}
$$

と定義される。


たとえば、仕事量を100としたとき、Aの人は20の時間をかけてその仕事を終わらせたけど、Bの人は10の時間で終わらせたのなら、Bの人の方が効率よく仕事をこなしていることになる。

それぞれの仕事率を計算すると、Aの人は100/20=5であり、Bの人は100/10=10だ。Bの人は、Aの人の2倍の仕事率で働いていることになる。

費やした時間も考える必要があるため、仕事ができる人は、この仕事率が高い人だと言ったほうが適切かもしれない。


ただ、効率が全てではないと思うので、そんな単純に決めつけてはいけないような気もする。

それと新人のお前は、効率がどうとか分かったように言うのではなく、まずがむしゃらに働くことを考えろ、ボケ。



結論。

一生懸命働こう。


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