鼻中隔湾曲症の手術をやってみた

先日、鼻中隔湾曲症の手術を受けたので記録として残しておこうと思う。ネット上には私と同じように鼻中隔湾曲症の手術を受けた人の記録があり、手術を受けるにあたり参考になったので同じように私の経験が参考になればうれしい。

手術の検討にあたり留意すべきこと

ネット上には色々と鼻中隔湾曲症の手術の経験談があるが、症状や病院や入院期間や手術方法など人それぞれである。そのため全く同じ経験をするとは限らない。当然のことのように思えるが、私自身が手術を受けてみてネット上の経験談とは違う部分があることに気づいたこともあるのでこの点については留意すべきだと思う。

例えばよく見られるのが「ガーゼを抜くのが痛い」という経験談だが、私の病院の場合、ガーゼを使わず代わりに滲出物を吸収して溶けていく物体を使用していたため、抜くときに痛いというようなことは起こらなかった。これも病院によっても違うだろうし、同じ病院でも症状や手術の際の出血量にもよるかもしれないので、気になることは医師に直接聞いた方がよいと思う。また、私のケースでは全身麻酔を用いたが、部分麻酔で行う病院もあるようであるし、私は全身麻酔において尿道カテーテルを用いなかったが、他の病院では用いるケースもあるかもしれない。

手術を受けた経緯

もともとアレルギー体質で鼻水には幼少の頃から悩まされてきた。鼻水が出続けるのが当たり前と思い込んでいたし、特に冬は鼻呼吸ができずに口呼吸で寝てる間に風邪を引くというのが当たり前になっていた。鼻水に関してはじんましんの治療で飲み始めた抗アレルギー剤がたまたま副作用的に鼻水に効いてくれてあまり出なくなったので、悩みは減ることとなったが、鼻詰まりについてはずっと悩み続けていた。

成人し働き始めてから徐々に自分の体の悩みをお金をかけて医学的に治療するということに意識的になり(科学の進歩は著しい!)成人してからでないとできない手術についても前向きに検討するようになった。

そんな折、副鼻腔炎をこじらせて通うようになった耳鼻科でCTを撮ったときに言われたのが「鼻中隔がそもそも曲がっているから呼吸がしにくいよね。手術するのもありだよね」ということであった。CTを見て説明してくれたが、たしかに右が曲がって狭くなっていた。この指摘はこれまで一度もされたことがなく、単純にアレルギー体質だから鼻が通りにくいと思っていたのがそもそも物理的に狭くて、またそれに対応する手術もあるというのであればこれは検討に値すると思うようになった。また、副鼻腔炎をこじらせた後に匂いを感じる力が完全に戻ったように感じないこともあり、同時に精査してもらいたいなという気持ちが高まった。そもそも鼻中隔というのは人間のだいたい9割は曲がっているとのことである。ただ、それが鼻呼吸に影響を及ぼしているのか、他者と比較してどうなのか、手術をして効果を得られるのか経験豊富な医師に聞いてみて判断したほうがよいなと思った。

病院選び

病院選びであるが、結論からいえば神尾記念病院を選んだ。御茶ノ水にある耳鼻科専門の病院である。症例数が多く、家から近いためあたりをつけていた病院で、かかりつけの先生に聞いたところ評判もよかったのでそこに決めた。先生曰く、後は東京慈恵会医科大学か鼻のクリニック東京とかが有名かな、と言っていた。後に知ったことだが、神尾記念病院の病院内に掲載されていた雑誌の切り抜きによれば、鼻中隔湾曲症の症例数でいえば1番が東京慈恵会医科大学で2番が神尾記念病院とのことである。どちらかであれば間違いはないと思う。もちろん予約は取りにくいのかもしれない。

手術にあたり、事前の検査や術後の検査など病院に通う機会は意外と多いので家から通いやすいというのは大事なポイントだと思う。早めに退院する場合には万全ではなくまだ鼻から出血した状態で退院することとなるので、それを考えても家から近い方がいいと思う。

入院期間

私の場合、前日泊含めて4泊5日の入院であったが、もう1日2日長いほうが体にとって万全だなと感じた。退院してから家に帰るまで10分ほど歩いたが、体が病み上がりのようで体力の消耗を感じたし、鼻からの出血も増えているようで心配になった。この経験からしてみると、巷で謳われている日帰り手術はなかなか過激で体にとっての負担は大きいと思う。また、日帰り手術と言いながら手術を2日に分けたり術後頻繁に病院に通うことが必要なケースもあると聞くので、日帰り手術を選択する場合、よくよく内容を注意した方がよいと思う。なお、神尾記念病院でも日帰りはやっているようであるが、通常は4泊5日、早くて3泊4日ということのようである。3泊4日であれば、木曜に前日入院、金曜手術、日曜日退院というスケジュールとなるため、木金の2日間で有休を取れば働いている人でも可能なスケジュールだと思うので検討していただきたい。もちろん手術の日に先生が空いているか、入院の病床が空いているかの日程次第であり、手術予定を取るためには事前検査が必要なので早め早めで動いた方がよいと思う。

初診、予約、入院の流れ

私の場合、9月上旬の入院であったが、6月末にはじめて神尾記念病院を訪れた。初診で予約はなしだった。病院に入る前に検温しアンケートを書くのだが、そこで「2年前から匂いが分かりにくい」という点について書いたところコロナの抗原検査を受けないと入れないという話になった。しょうがないので受けるしかないのだが、この検査で陰性が判明するまで1時間ほど待ったあとに、また1時間くらい待ってからやっと先生と話することができた。そこで鼻詰まりと鼻中隔湾曲症の話と匂いが万全ではないという話をしたところ、検査してみましょうとなり、検査の結果、あまり嬉しくないが鼻の曲がり的にも鼻の粘膜の状態としてもこれは手術でかなり改善されるケースだとお墨付きをもらった。なお、CTの結果副鼻腔炎は完治しており、匂いの検査もしたのだが(謎の紙の匂いを色々かがされて何の匂いか当てる検査)こちらも意外にもほぼ問題はなく、鼻詰まりが改善されれば更によくなるという話だった。精密検査を踏まえて手術をお勧めされ説明に納得できたので当初の考えどおり手術をすることとした。

その日の先生は手術担当の医者ではなかったため、鼻中隔湾曲症手術担当の先生を何人か教えてもらい、その先生の日にまた来てそこで手術予定を取るという流れになった。後日、再訪問し手術担当の先生にお会いし、またお話しを伺い、その日に手術予定の日程を決め、入院の説明を色々と受けた。手術の内容として鼻中隔湾曲症のほか、肥厚性鼻炎治療のための粘膜下下鼻甲介骨切除、アレルギー性鼻炎のための後鼻神経切断術をあわせて受けることとなった。これらはよくあるセットの手術のようであり「今週も2件やりましたよ」という説明だった。先生の説明は親切かつ自信に溢れており、手術のリスクを含めた質問にも分かりやすく答えていただき、これは専門家として信頼してもよいなという感触を得たので後はもう委ねることとした。

その後は手術前の1週間前に内科の検診のためもう一度訪れ、手術の前日に入院検査を行うという流れである。前日検査のときに鼻の通りの検査をしたが右は20%くらいでほぼ通っていなかったが、これは手術するとかなりいい結果になりますよという説明だった。

入院にあたって準備すべきこと

病院服やタオル、アメニティ(歯ブラシやアルコールティッシュ)はレンタルサービスがあるため、こちらを利用することとした。準備も少なくて済むし、またコロナのため病院としてもこちらを推奨しているとのことであった。シャワー室にはシャンプー、リンス、ボディーシャンプーもあった。そのため、持っていくものは病院が紙で記載している必須の書類や入院保証金や持病薬を除けばそれほどいらないと思う。下着、靴下、暇つぶしのiPadや携帯充電器、ガウンをレンタルしないなら羽織るものくらいだろうか。なお、神尾記念病院にはWIFIは共通ロビーしかないのでこちらは必要ならルーターを準備すべき。

あと、確実に高額療養費制度の対象となるので、限度額適用認定証を使うのであればこちらの申請を早めにする必要がある。手術日より数週間前に申請が必要と思われる。これを取得しておけば、病院での支払いは限度額だけで済む。もちろん、認定証を使わずに一旦クレジットで払って後々還付されるからポイントつくのでこちらの方が得という考えもあるようである。私の手術内容だと入院費含めて3割負担で35万円ほどだったが、結局負担額は8~9万円くらいで収まると思われる。なお、入院期間が月をまたぐと限度額上不利となるので、予約の状況次第であるが1月でまとめた方が有利である。また、退職などのタイミングで手術する場合で保険証が手元にないとなると一旦10割負担となり、そうなると100万円を超える負担を一時的に求められる可能性もあるのでこの点ご注意いただきたい。入院したらコロナの関係上気軽に外出はできないので(コンビニさえ行けず、お金も引き出せない!)負担額については入院前に確認したほうがよい。また、鼻中隔湾曲症手術が適応対象となる保険もあるので手術を検討している人は保険の内容を確認した方がよいと思う(なお私は高額療養費があるので保険不要派である)

入院の部屋は通常は6人部屋、1日5,000円ほどプラスで4人部屋、1日12,000円ほどプラスで個室になる。こちらは差額ベッド代なので高額療養費の対象にはならない。私は4人部屋を選択したが日によっては他に誰もいないときもあり個室状態だったときもあったのでこれは正解だったと思う。耳鼻科専門なので当然ながらみな耳、鼻、のどを手術した人ばかりで寝苦しそうな人ばかりに囲まれることになると思うと人数は少ないほうが快適であると思う。

手術後の経過

手術は全身麻酔で行われるので気づいたら終わっている(今から眠くなりますよーと言われてまぶた閉じたほうがいいのかなーとか思ったら次の瞬間には見知らぬ天井状態だった)。手術後しばらくは鼻の内部では特殊なガーゼ(滲出物とともに流れていくような物体らしい)が詰められており、また鼻には綿球を詰め込まれるので、鼻呼吸は一切できない。よって数日は口呼吸で睡眠を取ることとなる。そして鼻の綿球は出血によりすぐに取り替えが必要となるため満足な睡眠を取ることは入院期間中はないと思ってよいだろう。1~3時間ごとに起きることになると思う。出血の量は人により異なり、私はかなり少ないほうだと先生に言われたが、手術後1~2日は30分から1時間ごとに綿球を代えないと血まみれになりそうだったし、2日~3日でも2,3時間に一度は綿球を代えないといけなかった。これが5、6日後は血がほぼでなくなった。ただ乾燥を防ぐため1,2週間は綿球を鼻に詰めておく必要があるようである。なので、手術をお考えの際は少なくとも手術後1、2週間は鼻に綿をつめた間抜けな姿でいなければならないということは認識しておいた方がよい。幸いマスク社会であるためマスクで隠しておけばいいのだが血がでなくなるまでは綿球が血で滲みマスクに血が移らないか心配する数日を送ることになると思う。なお、この出血は傷から流れているわけではなく、手術時に溜まった血が流れているというだけのようである。入院中はベッドの頭の方を傾けて高くした方が喉に流れてくる血の感じが楽になった。出血している間は喉の方に血(私の場合、ガーゼのような吸収物も)が流れてくるので定期的に洗面所に唾を吐きに行く必要があった。リモートワークなら大丈夫であろうが、働きながらで手術を考えている人は手術後数日間こうした血の対処をする必要があることは念頭に置いておいた方がよいと思われる。

食事

鼻呼吸ができず、口呼吸しかできないと記載したが、まったく水が飲めないとか料理が食べれないということではなく、手術当日の夕食のお粥もなんとか食べれた。食べているときに涙が流れたが、これは食べ物をいただけるありがたさのためではなく、先生の説明によれば手術により涙が鼻に流れないため目から涙が流れやすいとのことである。多くの体験談と違い、私の場合意外と飲食が可能であったが、これは口呼吸に慣れているということかもしれないが、先生の説明では手術時の出血が相当少なかったとのことであるため、鼻腔内のガーゼ等が少なく微量の空気は鼻に通っていたためかもしれない。飲食の量を少なめにしてゆっくり飲み込むことで、入院中出された食事はすべて食べきることができた(なお、入院食はすべておいしかった。鼻が詰まって味はほとんどしない感じだったけどなぜかおいしく感じた。2日目以降の朝食にはコーヒーもついていた)。手術3日目あたりから体としても楽になり、退院しても大丈夫かなという感覚になってきた。

退院後の鼻うがい

上記のとおり、手術から5、6日くらい経って出血がほぼほぼなくなった後は綿球の交換をそんなに考えなくてよくなるので相当心理的に楽になった。それでも鼻に綿球を詰めておく必要があるし、鼻が通るまでには2週間~1ヶ月かかるのだが、血が流れなくなれば後は腫れが引くのを待つだけだ。

退院後は朝と夜に鼻うがいをすることを勧められる。入院中には鼻うがいのハナクリーンのDVDを視聴させられた。私は入院前からハナクリーンSを使用していたので購入する必要はなかったが、どうせ退院後に必要となるのであれば早めに購入しておいて使うのに慣れておくのもよいと思う。サーレという粉末をお湯に溶いて使うのだが、これにより浸透圧が体と同じになり、鼻がツーンとすることが全くない。使った後は鼻がすっきりして爽快感がある。鼻うがいは、鼻炎に効果があるとされているし、最近の研究ではコロナ予防にも効果があるとのことなので一挙両得だと思う。手術しない人でも鼻炎に悩んでる人にはお勧め。


まとめ

鼻詰まりの原因が鼻中隔湾曲症と分かってから1年ほど悩んで手術を決断したがやってみてよかったと思う。手術後1週間くらいのQOLはかなり下がると思うが、その先の数十年のQOLを上げる手術であると言える。仕事や家庭も含めてゆっくり入院できるタイミングというのはなかなかないものだから、できる環境がある人にはぜひオススメしたい。

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