吾輩は猫である(浅野浩二の小説)
元々は野良猫だった。
しかし、ある時、人間という動物に、捕まえられてしまった。捕まえられた時は、これは困ったことになったと焦った。なんせ人間という動物は、どういう動物なのか、わからないからだ。動物界の常識として、食われてしまうのかと、冷や汗ものだった。しかし、不思議なことに、わしを捕まえた一家は、わしに食べ物を与えてくれた。これには驚いた。わしは、この意味がわからなかった。動物界は弱肉強食が常識である。それで、多分、食事の中に毒が入っているのだろうと思った。しかし、わしが毒を食ったら、わしの体にも毒が入ってしまい、それを食っては危険ではないか、という疑問が、次に起こった。それで、わしは考えた。それで、その毒は、わしを殺しはするが、わしの体の中で分解されて、無毒になるような毒なのだろうと思った。フグ毒の、テトロドトキシン、などは、そういう毒である。これでは、食うわけにはいかない。しかし、どうして、わしを殺すのに毒を食わさねばならないのか。その理由が、わからなかった。わしを無理矢理、押さえつけるなり、あるいは、わしが寝ている間に、わしの首をはねて、それでわしの肉を食えばいいではないか。そもそも、人間は、牛、や、豚、や、鶏、など、動物の肉を食うヤカラである。人間は、動物を食ったり、医学の実験に使ったりしたかと思うと、やたら、可愛がったりする、予測不能の動物である。油断は禁物である。わしは、このことが分らなくて、二日間、与えられた食事を食べなかった。人間は、
「おかしいなー。この猫、エサ食べないよー」
と首を傾げていた。かれらは一体、何を考えているのやら、全く分らない。
しかし、なにはともあれ、二日もすると、腹が減ってきた。毒が入った食事を食べなくても、わしは、どうせ殺されるのである。それならば、死ぬ前に、美味そうな食事を食ってから死のうと覚悟を決めた。それで、わしは、毒が入っているかもしれない食事を食ってみた。すると、これが美味いのである。二日間、何も食わなかっただけあって、わしは死を覚悟で、無我夢中で、ムシャムシャ食った。すると人間は、
「わー。猫がエサを食べたよー」
と喜んだ。何で、彼らが喜ぶのか、わしには、その理由がわからなかった。そこでわしは、その理由を考えてみた。それで、わしは、一つの結論にたどりついた。つまり、彼らは、わしに、飼料を食わせて太ってから、食うつもりなのだ。と。なかなか、手の込んだことをやるものである。ならば、と、わしは考えた。食っても殺されるし、食わなくても殺される。どのみち、殺されることにはかわりないのだ。ならば、腹一杯、食ってから殺された方が得ではないか。と。それで、わしは、それから、彼らが、わしに与えるエサを食うようになった。一体、いつまで、食わせてから、彼らは、わしを食う気なのか。それは、知りようもない。ともかく美味い。うんと食って、あとは、死ぬのを待つだけである。
しかし人間の、わしに対する態度が変である。やたらと、わしの頭を撫でる。尻尾の付け根を、コチョコチョ、とくすぐる。わしら、猫にとって、ここをくすぐられると、たまらなく気持ちがいいのである。いわば性感帯である。つい、わしは、
「ニャー」
と、喘ぎ声を出してしまった。すると、人間は、益々、嬉しそうな顔つきになって、わしの性感帯である、尻尾の付け根、をくすぐった。わしが、
「ニャー」
と喘ぎ声を出すと、彼らは、ニコッと笑った。
「ねえねえ。姉さん。来て。来て」
わしを拉致した健太という小僧が、姉を呼んだ。
「なになに。どうしたの」
健太の姉の京子という中学一年生の女の子が、小走りにやって来た。
「猫をくすぐったら、気持ちよさそうに、ニャーと鳴いたんだよ」
健太が姉に言った。
「どれどれ。私にも、やらせて」
姉の京子が、好奇心に満ちた目で、わしを見ながら、健太に言った。
「ここさ。ここの尻尾の付け根耳の所さ」
健太は、そう言って、わしの尻尾の付け根をくすぐった。
わしは、気持ちよさに、素直に、
「ニャー」
と喘ぎ声を出した。すると、姉の京子は嬉しそうな顔で、
「本当だ。私にも、やらせて」
と言った。そして、わしの性感帯である尻尾の付け根をくすぐった。わしは、素直に、
「ニャー」
と喘ぎ声を出した。
「本当だ。かわいい。やっと、なついたんだ」
姉の京子は嬉しそうな顔で言った。わしに飼料を食わせて、太らせてから食う気なら、わしの性感帯をくすぐって、わしを気持ちよくさせる必要はない。わしは彼らの顔をじっと見た。彼らは、わしを嬉しそうな顔で眺めている。どう見ても、彼らに殺意があるようには、感じられない。無邪気な子供達である。わしの心にあった猜疑心が、少し減った。もしかすると、彼らは、わしを殺す気はないのかもしれない。では、一体、何のために、わしにエサを与え、わしの性感帯をくすぐるのか。それが、わしの次の疑問になった。健太は、わしを、そっと、持ち上げて、胸の中に抱きかかえた。宙に浮かされたのは、初めてである。野良猫の時は、自分で、高い塀に登ることは、あったが、他人に持ち上げられたのは、初めてである。しかし、この程度の高さなら、落とされても、怖くはない。わしら、猫は平衡感覚が優れているため、どんな姿勢で落とされても、身を翻して両手、両足で地面に着地できる絶対の自信を持っている。しかし、次に、新たな疑問と恐怖が起こった。もしかすると、この子は、わしを床に叩きつけるつもりかもしれない、という恐怖である。なるほど、そういう殺し方なのかと、わしは、ぞっとした。わしは、抵抗の用意として、爪を立てる準備をした。しかし、この程度の高さからなら、床に叩きつけられても、少しは痛いだろうが、死にはしない。それに、健太は、小学五年生で、たいして力もない。わしは少し、彼らの様子を見ることにした。健太は、
「ニャーゴ。ニャーゴ」
と赤ん坊をあやすように、わしを揺らした。わしは、その揺れに身を任せた。
「私にもやらせて」
健太の姉の京子が言った。健太は、ウンと肯いて、わしを姉の京子に渡した。京子は、わしを、胸の中に抱きかかえて、健太と同じように、
「ニャーゴ。ニャーゴ」
と揺すった。わしは、その揺れに身を任せた。結構、気持ちがいいものである。姉の京子は中学一年生なので、まだ胸は膨らんでいない。しかし、人間の女の子の胸に抱かれるというは、気持ちがいいものである。与謝野晶子の「黒髪」に、「柔肌の熱き血潮に触れもみで、寂しからずや、道を説く君」という歌がある。わしは、他人に道を説くほど偉い者ではないが、我輩は女の柔肌に餓えているのである。
京子は、しばらく、わしを揺すった後、わしをそっと床に降ろした。どうやら、彼らに、わしを殺す気はないようだ。
「かわいいわね。この猫」
姉の京子が言った。
「うん。かわいい」
弟の健太が言った。どうやら、わしは、彼らに可愛がられているようだ。
『わしが可愛い?』
わしには、このことがどうしても実感できなかった。一体、わしの何が、可愛いのか。わしには、どうしても分らなかった。
「ねえ。お父さん。このネコ、飼ってもいい?」
健太が、父親に聞いた。
「まあ、いいだろう。しかし、ちゃんと、しつけて、面倒をみるんだぞ」
と、父親が言った。
「わーい。やったー」
健太、と、姉の、京子、は、小躍りして、喜んだ。
「ねえ。姉さん。このネコ、何て名前にしようか?」
健太が姉に聞いた。
「ソーニャ、にして」
姉の京子が言った。
「どうして?」
健太が聞いた。
「ドフトエフスキーの、(罪と罰)、に出てくる登場人物の名前で、私が気に入っているから」
こうしたわけで、わしに、「ソーニャ」、という名前がついて、わしは、「ソーニャ」、と、呼ばれるようになった。
・・・・・・・・・
一週間が過ぎた。
父親も母親も、わしを嫌ってはいない。
一週間もするうちに、ここの家庭がどういう家庭なのか、わかってきた。
父親と母親が、姉弟が、わしの面倒をみる、という条件で、わしを飼うことを許したのだ。
ここの家庭は、父親と母親と姉と弟の四人家族だった。
ここの父親は、ある病院に勤める医者だった。父親は、医者という仕事を嫌っていて、小説家になりたい、と愚痴をこぼしている。父親は、土日は休みなので、土日は、いつも、書斎で、パソコンに向かって小説を書いている。しかし、なかなか筆が進まない。机に向かってウンウン唸っているだけである。
トントンとドアがノックされた。ガチャリと戸が開いて、妻がお茶と和菓子を盆に載せて入ってきた。
「あなた。お茶を持ってきました」
妻は、机に茶を置いた。
「ああ。有難う」
夫は、妻に振り向きもせずに言った。
「あまり根を詰めすぎて、お疲れにならないで下さいね」
夫は淡白だった。
夫は、一休み、と言って、妻の持ってきた茶を飲み出した。
妻は、夫の手をとって、薄いブラウスのホックを外し、夫の手を入れようとした。
「あなた。せめて手で愛して」
妻は言った。だが、夫は手をひいた。
「どうして愛してくれないの?」
妻は訴えるように言った。
「机の前に立ちなさい」
そう言って、夫は茶を啜って、淡白な口調で言った。
「ま、また。あれをやらせるのね」
妻は、夫に言われて、夫の前に立った。
「さあ。服を色っぽく脱いでいきなさい」
夫が言った。
妻は、薄いブラウスを脱いだ。豊満な乳房をブラジャーが覆っている。ちょうど丸い果実の入ったビニールのようである。ついで、妻は、スカートを脱いだ。パンティーが、ムッチリした尻を覆っている。妻は、フロントホックを外してブラジャーを外した。見事な、大きくて形のいい乳房である。ついで、妻はパンティーをソロソロと降ろして抜きとった。妻は、一糸纏わぬ丸裸になった。妻は、一糸纏わぬ丸裸の胸と秘所を手で覆った。夫は、妻の裸をニヤニヤ見ていたが、だんだん、ハアハアと息を荒くしながら、自分の股間を揉み出した。
・・・・・・・・・・
実を言うと、わしが、この家に来て、一週間、ほどした、ある日の朝のこと。妻は、子供二人と、夫を、「いってらっしゃい」、と送り出して、一人きりになった時、わしを、じっと、見つめたのである。そして、ハアハア、と、喘ぎ声を、出して、胸を揉み出したのである。
「あの人は、性的不能なのか、変態なのか、結婚してから、一度も、私を抱いてくれないわ」
そう言って、妻は、ブラウスも、スカートも、ブラジャーも、パンティーも、つまり、服を全部、脱いで、全裸になって、
「ソーニャ。私の、アソコ、を、うんと見て」
と言って、大きく股を開いた。
妻は、性欲旺盛なのに、夫は、妻を抱いてやらず、妻は、欲求不満らしい。
わしは、妻を、可哀想に思って、アソコ、を、ペロペロと舐めてやった。
すると、妻は、「ああっ。いいわっ。感じちゃう」、と、叫んだ。
それを、朝、夫、や、子供を送り出して、一人になった時、妻は、毎日、するようになった。
ある日、夫が、早く帰ってきて、妻が、わし、と、戯れているのを、見てしまったのだ。
夫は、ニヤリと笑った。
「ふふふ。君に、そんな、趣味があったとはな」
と、夫は、ふてぶてしく笑った。
・・・・・・・
それ以来、夫は、妻に、裸になって、股を広げるよう命じ、妻の、アソコ、を、わしに舐めさせて、楽しむようになった。
夫は、妻の、アソコ、に、マタタビの汁をつけるようになった。
わしは、妻の、アソコの、愛液、と、マタタビの汁、の混ざった、汁を、無我夢中で、舐めた。
「ああっ。いいわっ。感じちゃう」
そう言って、妻は、喘ぎ声を出した。
それから、夫は、休みの日に、妻に、裸になって、股を広げるよう命じ、わしに、妻の、アソコ、を舐めさせて、楽しむようになった。
妻は、始めの頃は、興奮していたが、だんだん、恥ずかしくなり出して、嫌がるようになった。
「あ、あなた。もう、こんなこと、やめて」
と、妻は言い出すようになった。
・・・・・・・
今日も、その日である。
「さあ。服を色っぽく脱いでいきなさい」
夫が言った。
「ま、また、やるの?あなた」
妻は、仕方なさそうな顔で、薄いブラウスを脱いだ。豊満な乳房をブラジャーが覆っている。ちょうど丸い果実の入ったビニールのようである。ついで、妻は、スカートを脱いだ。パンティーが、ムッチリした尻を覆っている。妻は、フロントホックを外してブラジャーを外した。見事な、大きくて形のいい乳房である。ついで、妻はパンティーをソロソロと降ろして抜きとった。妻は、一糸纏わぬ丸裸になった。妻は、一糸纏わぬ丸裸の胸と秘所を手で覆った。
「さあ。座りなさい」
この夫は、性的不能なのか、変態なのか、裸になった妻に座るよう命じた。妻は、夫に言われて座った。夫は縄で、妻の手を後ろ手に縛った。そして、片足をの足首を縛って、天井に吊り上げた。片足が、天上に向かって、ピンと伸ばされて、妻のアソコ、が、丸見えになった。そして夫は、妻のアソコに、マタタビの汁を塗りつけた。
「ああっ。あなた。何をなさるの?」
妻は聞いたが夫は答えない。夫は、ふふふ、と笑って、わしを持ち上げて、妻の前に座らせた。妻のアソコが、いい匂いがする。わしは、その匂いにひかれて、そっと妻のアソコに鼻先を近づけた。マタタビの匂いがする。わしは、無我夢中でペロペロと舐めた。
「ああー。嫌―」
妻は、始めは嫌がっていたが、だんだん、「ああっ。ああっ」、と、喘ぎ声を出すようになった。
「あなた。結婚してから、一度も私を抱いてくれないで、どうして、こんなことばかりするの?」
妻が夫に聞いた。
わしは、妻を気の毒に思った。それで、ペロペロと優しく妻のアソコを舐めてやった。
・・・・・・・・・・
ある日、吾輩が寝ている時、妻が、吾輩の所にやって来た。
「ソーニャ。すまないね。お前は、この家には、置いておけないのよ」
そう言って、妻は、吾輩を車に乗せて、エンジンを掛け、高速道路を飛ばした。
どこかへ、吾輩を捨てるつもり、らしい。
一時間ほど、高速道路を走ってから、一般道に、出た。
そして、少し、走った。
そして、止まった。
母親は、わしを、車から、降ろした。
場所は、どこだか、わからない。
「ソーニャ。お前は、可愛いから、きっと、誰かが、拾ってくれるでしょう。だから、もう、戻って来ないでね」
そう言うと、母親は、車のドアを閉め、フルスピードで、走り去って行った。
人間とは、薄情なものだ。
わしは、また、一匹、無頼漢の、宿無し猫、になってしまった。
だが、まあ、いい。
ニャーニャー、猫なで声を出して、可愛いらしそうな仕草をしていれば、人間は、吾輩を、可愛い、と言って、飼ってくれる、のだから。
わしは、ある、大きな家の前に、着いた。
渋谷区富ヶ谷一丁目とある。
富ヶ谷ハイムと書いてある、豪勢な、マンションの前で、わしは、座っていた。
しばしすると、一人の中年の女が、マンションの中から、出てきた。
丸顔で、童顔である。
「まあ。可愛いわ」
そう言って、女は、吾輩を、抱きあげた。
吾輩は、この女を知っている。
安倍晋三首相夫人の安倍昭恵、という人である。
健太の家で、テレビを観ていたら、彼女が、映っていたからである。
安倍晋三首相と、彼女が、アメリカに、首脳会談で、行くので、二人が、総理専用機に乗り込むのを、テレビで、見たから、知っているのである。
彼女は、わしを、しばらく、胸の前に抱えて、赤ん坊をあやすように、揺らしていたが、吾輩を抱いたまま、富ヶ谷ハイムの中に、入った。
部屋は、豪勢だった。
昭恵夫人は、吾輩を、そっと、床に降ろした。
そして、尻尾の付け根の所を、コチョコチョと、くすぐった。
ここを、くすぐられると、たまらなく、気持ちがいいのだ。
吾輩は、ニャー、と、小声で鳴いた。
「まあ。可愛いわ」
そう言って、彼女は、ニコッと笑って、キャトフードを、吾輩の前に置いた。
わしは、腹が減っていたので、ムシャムシャ食べた。
彼女は、嬉しそうに、わしを見ている。
その時、夫の安倍晋三が、帰ってきた。
ヘトヘトに疲れた様子である。
彼は、ドッカとソファーに座った。
「昭恵。おい。ウイスキーをくれ」
安倍晋三が、そう言ったので、昭恵夫人は、キッチンに行って、ウイスキーを持って、戻ってきた。
安倍晋三は、ウイスキーを、ガブガブ飲んだ。
「あなた。どうしたの。何があったの?」
昭恵夫人が聞いた。
「いや。無いも、あるも。今日の、国会で、また、共産党の、辰巳孝太郎が、とんでもないことを、言ったもんだから、さすがに、焦ったよ。あいつは、いつも、事前通告なしで、言うもんだからな。困ったヤツだ」
そう言って、安倍晋三は、ウイスキーを、ガブガブ飲んだ。
「何と言ったの?」
昭恵夫人が聞いた。
「近畿財務局と財務省理財局との、やりとり、の、メモ、を、今日、あいつが、暴露したんだ。国交省として都合の悪い文書は公表しない、だの、文書は、最高裁まで争うまで非公表とする、だの、官邸も、法務省に何度も巻きを入れている、だの、いきなり、本当の事を言い出すもんだから、さすがに、あせったよ。どの省庁にも、厳しく、ニラミを利かして、圧力をかけているのに、官僚の中にも、まだ、子供じみた青くさい、正義感ぶったヤツが、いるらしく、森友学園関係のメモを、ファックスで、共産党に、送ったんだろう。困ったヤツもいるもんだ。もし、送ったヤツが、わかったら、左遷、いや、辞職させてやる。チクショウ」
そう言って、安倍晋三は、ウイスキーを、ガブガブ飲んだ。
「それで、あなた。森友問題は、大丈夫なの?」
昭恵夫人が聞いた。
「ああ。大丈夫だ。大阪地検特捜部には、オレと親しい、加計問題出の、鬼検事を、何人も送り込んでいるからな。拘置所では、看守に、籠池の飯には、毎食、少量の毒を入れるよう、指示しているからな。どうせ、ヤツは、いずれ、死ぬさ」
そう言って、安倍晋三は、ウイスキーを、ガブガフ飲んだ。
「私は大丈夫なの?野党の人達は、さかんに、私を証人喚問するよう、言っているけれど、私、こわいわ」
昭恵夫人が言った。
「ああ。大丈夫だ。お前が、籠池に、100万円、渡した、物的証拠は、無さそうだからな。しかし、あれは、やはり、まずかったな。お前は、頭が悪いんだから、何かする時は、これからは、必ず、オレに前もって、言ってからやれ」
と、安倍晋三は、言った。
「でも、私、こわいわ。野党の人達は、私の証人喚問を求めているでしょ。証人喚問をして、私が、(籠池さんに、100万円は、渡していない)、と、ウソを言ったら、偽証罪になるんでしょ?執行猶予は、つくの?」
昭恵夫人が言った。
「大丈夫だ。大阪地検特捜部の、検察官、や、裁判長は、全員、加計問題卒の人間で、オレに忠誠を誓っている連中ばかりだからな。どんなに、確実な、証拠が、いくら、出てきても、起訴しないよう、釘を刺してあるからな。伊藤詩織を犯した、TBSの山口敬之だって、オレが、(絶対、起訴するな)、と、圧力をかけて、脅しておいたから、起訴されていないだろ」
と、安倍晋三は、妻を安心させるように、言った。
「ありがとう。あなた。頼もしいわ。でも、財務省の、記録には、私が、(いい土地だから、早く前に進めて下さい)、と書かれてあるでしょ。あれを、野党に追求されたら、どうするの?」
昭恵夫人が、不安そうに聞いた。
「財務省に、公文書で、お前の名前が、出でいる箇所は、書き替えるよう、強く命令するさ」
安倍晋三が言った。
「でも、公文書の改ざん、なんて、したら、大変なことに、なるんじゃないの?私には、よく、わからないけれど・・・」
昭恵夫人が言った。
「それは、バレたらの話さ。バレなければ、大丈夫だ。犯罪は、バレなければ、犯罪じゃないんだ。そのくらいの事は、バカな、お前の頭でも、わかるだろ」
そう、安倍晋三は言った。
「そうね。絶対、バレないように、してね。でも、国民は、怪しい、と、思っているわ。私、こわいわ。それに、立教大学特任教授の金子勝さんは、毎日、あなたの、悪口を、ツイッターで、書いているし、日刊ゲンダイで、あなたの、悪口の記事を、毎日、書いているわ。大丈夫かしら・・・・?」
昭恵夫人は、不安そうに、考え込んだ。
「金子勝か。あいつは、目障りなヤツだな。前々から、あいつを、何とかしなきゃ、ならないと、思っていたんだ。今度、検察と警視庁に、命令して、警察官に、あいつを、尾行させて、あいつが、電車に乗ったら、植草一秀と同じように、痴漢で、逮捕させてやるさ。そうすりゃ、あいつも、一巻の終わり、さ」
と、安倍晋三は、自信満々の口調で言った。
「お願い。あなた。きっと、やってね。必ずよ。あの人の、私たち夫婦に対する、口汚い、罵り、の言葉を聞くと、私、耐えられないの・・・。ところで、植草一秀さんも、あなたが、痴漢冤罪に、デッチあげたの・・・?それは、初耳だわ」
昭恵夫人は、キョトンとした目を、夫に向けた。
「ああ。小泉純一郎さんは、僕を、内閣官房副長官に任命してくれただろう。そして、2003年には、いきなり、なんと、幹事長にまで、任命してくれた。小泉さんの、おかげで、僕は、2006年に、戦後最年少で、総理大臣に昇りつめることが出来たんだ。この恩は、絶対、返さなくちゃならないと思って、竹中平蔵に任せきりの、小泉さんの経済政策を、激しく批判していた、植草一秀を、痴漢冤罪におとしめるため、検察、警察、に、圧力をかけたんだ。それで、警察が動いてくれて、見事、植草一秀は、2004年に、痴漢の犯罪者に仕立て上げることが出来たんだ。彼は、全ての職を失ったよ。あの時の、小泉純一郎さんの、喜んでいた顔が、忘れられない。受けた恩は、ちゃんと、返すのが、政治家、としての礼儀、というものさ」
と、安倍晋三は、自信ありげに言った。
「素敵。頼もしいわ。あなたの、そういう行動力があるところが、私は好きだわ」
そう言って、昭恵夫人は、ヒシっ、と夫にしがみついた。
夫の安倍晋三も、言いたいことを言って、ほっとした様子だった。
吾輩は、二人の会話を、黙って聞いていたが、ノソノソ、歩いて、安倍晋三の前で座った。
安倍晋三の視線が、吾輩に向かった。
「あっ。何だ。この猫は?」
安倍晋三が、吾輩の存在に気づいて、妻の昭恵夫人に聞いた。
「ああ。言い忘れてたわ。今日、この猫が、家の前にいたの。人間になつくから、飼いネコで、きっと誰かが、捨てていったのだと思うわ。前、飼っていた、リリーも、死んじゃったし、この猫、飼ってもいい?」
昭恵夫人が聞いた。
「ああ。別に構わないよ」
人間も、飼いネコと同じように、飼い主、に従順になってくれると、いいのだがな、と、安倍晋三は、不満そうに言った。
吾輩は、あきれかえった。
今日、テレビの国会中継を、昭恵夫人、が、見ていたので、吾輩も、横で、見ていた。
昭恵夫人は、自民党、公明党、の質疑は、見ていたが、野党の質疑になると、
「ああ。また、ストレスがたまるわ」
と言って、自分の部屋に入ってしまったのである。
残された、わしは、国会中継の野党の質疑を見ていた。
共産党の、辰巳孝太郎議員は、入手した、メモ、の真偽を、冷静な口調で、安倍晋三に、質問していた。
安倍晋三は、「事前通告されていないので、知らない」、「あたかも真実のように、言っているが、真偽のほどは、調べてみないと、わからない」、と、堂々と、反駁していた。
しかし、実際には、安倍晋三は、何もかも、知っていたのだ。
というより、全ては、安倍晋三自身が、圧力をかけた張本人なのだ。
こいつは、とんでもない、ウソつき、だ。
こいつは、息を吐くように、ウソを、つくヤツだ、動物の風上にも、おけないヤツだ、と、吾輩は思った。
「ねえ。あなた。でも、野党は、森友問題、加計学園問題、で、あなたを、追求しているわ。本当に、大丈夫なの?私は、ファーストレディーとして、世間の注目を浴びていたいの」
昭恵夫人が聞いた。
「ああ。大丈夫だ。メディアには、圧力を、しっかりと、かけているからな」
安倍晋三は言った
「お願い。絶対、バレないように、してね」
こいつらは、とんでもない、ヤツら、だと、吾輩は思った。
吾輩は、もう少し、この家に居て、こやつらの、実態を観察することにした。
それに、ここの家の二階のベランダは、日差しが良くて、気持ちがいい。
ある日の夕方のことである。
主人が、ホクホクして、帰ってきた。
「おい。昭恵。今日、いいことがあったぞ。こっちへ来い」
安倍晋三が言った。
「どうしたの。あなた?」
昭恵は、首をかしげながら、夫と一緒に、ソファーに座った。
安倍晋三は、テレビのスイッチを入れた。
ちょうど、NHKの、ニュースウォッチ9が、始まった所だった。
いつものように、有馬郁夫と、和久田麻由子、が、写し出された。
「今日、とんでもない事が起こりました。慶応義塾大学の名誉教授で、立教大学特任教授の、エセ経済学者の、人間のクズの金子勝、が、教授室に、女子学生を呼び出して、睡眠薬を飲ませ、寝ている間に、レイプしました。被害者の、佐藤詩織さん、は、泣きながら、そのことを、警察に訴えました。東京地検特捜部は、即日起訴して、クズの金子勝を逮捕しました。クズの金子勝は、(これは、安倍政権の、企んだ、国策捜査だ。私は冤罪だ)、と、レイプしておきながら、ほざいています。クズの金子勝は、毎日、日本の政治を責任をもって行っている立派な、安倍内閣を、口汚くののしり批判する、ツイッターを、偉そうに、書き続けながら、自分は、こんな、恥知らずなことを、陰で、していたんですねー。全く、学者、教育者、の風上にも置けない、クズの卑劣官ですねー」
と、有馬郁夫が言った。
「そうですね。私も前から、金子勝さんは、経済のことは、語らずに、やたら、正しく、美しい日本を、目指して頑張っている、安倍首相を批難する、口汚い、アジテートばかり、する、嫌な人だとは、思っていました。日銀が、金利0で、お金をたくさん刷れば、物価が上がって、デフレ不況から脱却できる、という経済学の基本的なことすら、あの人は、わからないんですから。ノーベル経済学賞を受賞した、ポール・クルーグマン氏も絶賛している、素晴らしいアベノミクスによって、日本経済は、確実に、長引くデフレから、脱却しているというのに・・・。しかし、売国極左主義者は、売国極左主義者なりに、一貫した、主張を持っているのだろう、と、一応は、敬意を払っていました。しかし、偉そうなことを、言っている陰で、こんな卑劣なことをしていたんですね。もう、私は、クズの金子勝を一切、信用しません」
と、和久田麻由子が相槌を打った。
「ともかく、もう、これによって、人間のクズの金子勝の学者生命、と、社会的地位は、完全に終わったと、言えるでしょう。立教大学も、即座に、クズの金子勝の、懲戒免職処分を発表しました。東京地検特捜部では、クズの金子勝には、余罪があるものと見て、捜査を続ける方針です」
と、有馬郁夫が言った。
テレビ画面では、両脇を警察官に捕まれた、金子勝が、「これは、冤罪だー。政権批判に対する口封じだ。国家の罠だ。共謀罪だー」、と、叫びながら、パトカーに、入れられる場面が、写し出されていた。
そして、佐藤詩織、という、女子学生が、泣きながら、記者たちの、質問に答えている場面が、写し出された。
「うははははー」
と、安倍晋三は、高らかに笑った。
「あなた。これは、どういうことなの?」
安倍昭恵が聞いた。
「ふふふ。警察にも、検察にも、裁判官にも、加計学園卒業の、警察官、検察官、裁判官、を、送り込んでいる。僕が、司法に圧力をかけたんだ。そして、佐藤詩織、という、立教大学の大学院の学生に頼んで、100万円、渡して、買収して、金子勝を、罪人に仕立て上げてあげて、やったのさ。これで、もう、金子勝は、社会的に抹殺されたようなものだ」
と、安倍晋三は、自慢げに言った。
「素敵。あなた。頼もしいわ。これで、私たちは、批難されなくなったのね。今日から、安らかに、眠れるわ。ありがとう。あなた」
と、昭恵夫人は、ヒッシと、夫の安倍晋三にしがみついた。
「あなた。お風呂が、沸いているわよ」
昭恵夫人が言った。
「そうか。じゃあ、オレは風呂に入るよ」
そう言って、安倍晋三は、上着を脱ぎ、ネクタイを外して、浴室に入った。
ザブーン。
と、安倍晋三が、風呂に入った音がした。
その時である。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
「はーい」
と、昭恵夫人が、玄関に出た。
「こんばんわー」
と、佐藤詩織、が、元気よく、挨拶した。
「やあ。よく、いらっしゃいました。どうぞ。どうぞ。お上がり下さい」
と、昭恵夫人が言った。
「では、失礼しまーす」
と、佐藤詩織、は、家に入った。
「さ。どうぞ。お座り下さい」
そう言われて、佐藤詩織、は、応接間のソファーに座った。
「あ。あの。これ。少ないですけれど、主人からです。どうぞ、受け取って下さい」
そう言って、昭恵夫人は、佐藤詩織、に、封筒を渡した。
かなり厚い封筒だった。
佐藤詩織、は、そっと、封筒の中身を見た。
3cmほどの、札束が、あった。
「うわー。いいんですか。こんなに、頂いて?一体、いくら、あるんですか?」
佐藤詩織、は、驚いて言った。
「あ、あの。少ないですけれど、300万円、です。ほんのお礼です。ただし、主人には、言わないで下さいね」
と、昭恵夫人は、言った。
「どうもありがとうございます」
佐藤詩織、は、礼を言って、封筒を受け取った。
「でも、こういうのって、あまり、よくない事なんじゃないでしょうか?このお金は、国民の税金なんじゃないでしょうか?」
佐藤詩織、が聞いた。
「いえ。いいんですよ。国民の税金は、私たちの物なのですから」
昭恵夫人、は、微笑んだ。
わしは、聞いていて、驚いた。
総理、や、総理夫人、が、こんな、狂った感覚とは。
この国は、滅びてしまうぞ。
・・・・・・・・
わしは、金子勝、が、心配になって、金子勝、が、いる小菅拘置所に行ってみた。
わしら、ネコは、人間と違って、走るのが速い。
その上、スタミナ、があるので、いくら、長距離、走っても、疲れるということがない。
人間は、わしらと、違って、二足歩行で、しかも、自動車が出来てから、車に頼る生活になってしまったため、足腰が弱くなって、少し走っただけで、息切れしてしまう。
しかし、わしらは、四つ足で、走るのが、行動の基本だから、いくら、長距離、走っても、疲れるということがないのである。
獲物を捕るため、そして、犬から身を守るため、と、命がかかっているのである。
わしは、すぐに、小菅拘置所に着いた。
小菅拘置所は、監視塔、を中心として、6方向に、放射状に、12階建ての建物が伸びている、一風、変わった、建物だった。
警備が厳重なので、人間が、こういう大きな建物に入ることは、不可能だろう。
しかし、わしら、ネコにとっては、用意なことである。
わしは、職員用の出入り口の近くに身を潜めていて、職員が、入るのと、同時に、サー、と、拘置所の中に入った。
職員は、わしが、入ったことに、気づいていなかった。
わしは、拘置所の屋根裏に入って、屋根裏を歩いた。
人間で言うと、忍者、ということに、なるのだろうが、わしら、ネコにとっては、これが当たり前、日常茶飯事で行っている事なのだ。
なので、何の苦労もない。
わしは、拘置所の、屋根裏を歩き回った。
そして、金子勝、が、取り調べ、されている部屋を、見つけた。
わしは、てっきり、机をはさんで、検察官、が、金子勝、の、取り調べ、を行っているものだと思っていた。
しかし、現実は違った。
わしは、驚いた。
なぜなら、金子勝、が、大きな机の上に、手足を縛られて、拷問されていたからである。
「おい。このブタ野郎。今まで、さんざん、安倍総理にさからった事を、心を込めてわびろ」
と、検察官が、金子勝、の、顔を、靴で、グリグリ、踏みつけながら、言った。
「い、いいのか?民主警察がこんなことをして?」
金子勝、は、息も絶え絶えに言った。
「お前は、安倍総理に逆らう、という、大罪を犯したんだぞ。それが、悪いことだと、わからないのか?」
「日本では、言論の自由が認められているはずだぞ」
金子勝が言った。
「おい。金子。日本に言論の自由なんざ、ありゃしねーんだよ。日本は、行政、立法、司法、すべてにおいて、安倍総理さま、の御意向が決める独裁国家なんだよ」
検察官が言った。
「そ、そんなのは、無茶苦茶だ」
金子勝が言った。
「ともかく、お前は、立教大学大学院の、佐藤詩織、さん、を、犯したんだ。それを認めろ」
検察官が言った。
「え、冤罪だ。国家権力の、でっちあげ、の冤罪だ」
金子勝、は、叫んだ。
「ふふふ。国家に邪魔な、人間を、冤罪にデッチあげるのが、オレ達、検察の仕事なんだよ」
と、検察官は、笑いながら言った。
「こ、これは、安倍総理の指示なのか?」
金子勝、が聞いた。
「そうだ」
と、検察官は、堂々と言った。
「日本は、とんでもない国だ」
金子勝が言った。
「ともかく、痴漢した事を認めろ。そうすれば、命だけは、奪わないでやる」
検察官が言った。
「いやだ。そんなこと、絶対、嫌だ」
金子勝が言った。
「仕方のねー、ヤツだ。認めて、心から謝罪すれば、死刑は、勘弁して、無期懲役に、してやるよ」
そう言って、検察官は、ペンチで、金子勝、の、生爪を、剥がした。
「うぎゃー」
金子勝、が悲鳴をあげた。
何という事をしているんだ。
このままでは、金子勝、は、死んでしまうぞ。
わしは、あせって、小菅拘置所から出た。
そして、その足で、理化学研究所に、向かって、一目散に走った。
・・・・・・・・・・
数ヶ月に、理化学研究所では、長い期間をかけた、研究が、成功した、と、発表していた。
その研究とは。
人間、や、動物、の、頭に、装着する機器で、人間に、何か、過去の記憶を、思い出させる。
すると、その映像、と、音声、が、再生される、機器、の開発である。
やっと、長い年月の研究期間の後、理化学研究所では、その機器の開発に、成功したのである。
それは、「記憶回復再現装置」、と、名づけられた。
それは。
政治家の、「記憶にない」、答弁で、一向に、国会審議が、進まないこと。検察、や、警察、の取り調べ、で、取り調べの過程を、録画、録音、できないことによって、冤罪が、あとをたたない、ことに、対する、解決策として、開発されたのである。
わしは、それを、テレビのニュースで、知っていた。
・・・・・・・
わしは、理化学研究所に着いた。
わしは、人間と違い、小さな隙間があれば、どこへでも、サッ、と入れる。
高い木にも、登れるし、身のこなしも、素早い。
そもそも、体が小さい上、すばしっこい、ので、人間は、わしらを、捕まえることは、出来ない。
それに、人間ではなく、ノラ猫なので、どんな、施設に入っても、人間と違って、あやしまれる、ということも無い。
人間が、どこかの施設に、無断で入ることは、出来ないが、ノラ猫は、どんな施設に無断で入っても、怪しまれる、ということがない。
ノラ猫が、機密文書を、盗みだす、と人間には、思われていないし、危険な存在、とは、思われていないからだ。
まあ、せいぜい、エサ、を、盗まれて、食われる、から、迷惑だ、としか、思われていないのである。
しかし、実際は、ネコも、言語が話せない、というだけで、人間の、言葉は、わかるのである。
理化学研究所の、研究者たち、は、「やった。長年の研究に成功した」、と、喜んでいた。
彼らは、もうすでに、「記憶回復再現装置」、を、完成させていた。
もう、何人もの、人間で、「記憶回復再現装置」、を、装着して、過去の記憶を再現するテストにも、成功していた。
もう、すでに、NATURE、にも、発表して、認められていた。
次期、ノーベル生理学・医学賞、の受賞は明らかだった。
「記憶回復再現装置」、とは、人間の頭に、理化学研究所、が、開発した、ヘッドギアのような、装置を装着させる。
そして、それを、パソコンにつなげる。
そして、人間に、過去の記憶、を思い出させる。
そして、大きな、スクリーンを置き、パソコンのパワーポイントのスイッチを入れると、その、スクリーンに、過去の、記憶の映像、と、音声が、再現される、というもの、だった。
「やった。成功した。これで、世界が、変わる」
と、研究所たちは、喜んでいた。
わしは、彼らの、前に、出て、「ニャーゴ。ニャーゴ」、と、ことさら、大きな声で叫んだ。
「おっ。どうしたことだ?ノラ猫が、迷い込んだぞ」
「どこから、入り込んだんだ?」
「どうして、さかんに、ニャーゴ、ニャーゴ、と、叫んでいるんだろう?」
研究者たち、は、さかんに、言い合った。
「おい。もしかすると、このネコは、人間に、何か、訴えたいことが、あって、この研究室に、入って来たのかも、しれないぞ」
「ああ。そうかも、しれないな」
「・・・とすると、動物にも、高度な意志、というものがあるのかも、しれないな」
「もし、それが、わかったとしたら大発見だ」
「ともかく、このネコに、(記憶回復再現装置)、を、着けてみよう」
そう言って、研究者たち、は、わしの頭に、(記憶回復再現装置)、を、着けた。
そして、それを、パソコンにつなげた。
そして、大きな、スクリーンを置き、パソコンのパワーポイントのスイッチを入れた。
・・・・・・・・・
わしは、安倍総理の家での、安倍総理、と、昭恵夫人、の会話、佐藤詩織、と昭恵夫人、の会話、東京拘置所、での、金子勝の拷問、などを、思い出した。
すると、スクリーン、に、安倍晋三、安倍昭恵、佐藤詩織、が、会話ている様子が、音声と共に、まざまざと、あらわれた。
「おおっ。安倍総理の家だ」
「森友問題の問題は、すべて、安倍総理の命令だったのか」
「金子勝は、安倍晋三が、故意にでっちあげた、冤罪だったのか」
「検察が、公然と、拷問しているとは」
「こんな、とんでもない事を、安倍首相は命じていたのか」
研究者たち、は、唖然として言い合った。
「しかし、これも、デタラメだと、安倍晋三は、言ってくる可能性があるぞ」
「しかし、安倍総理の家には、このネコの毛、が、たくさん、見つかるはずだ」
「日にちつきの、置き時計が、写っているから、総理夫妻も、その時間に、他の所にいた、というアリバイを示すことは、出来ないだろう」
「ともかく、東京拘置所で、拷問を受けている、金子勝教授、を助けないと。このままでは、金子勝教授、が死んでしまうぞ」
そう言って、研究者たち、は、急いで、日本の全新聞社、全テレビ局、週刊文春、を、はじめとする、全てのメディアに、この、映像と音声を、送信した。
・・・・・・・
安倍晋三は、その頃、友人の、加計孝太郎、と、川奈ゴルフ場で、ゴルフをしていた。
一ホール、終えて、二人は、休憩室で、ワインを飲んでくつろいでいた。
「安倍君。加計学園の獣医学部は大丈夫だろうね?」
加計孝太郎が聞いた。
「大丈夫だ。検察には、私の、言いなりになる、黒川検事総長を任命したからな。野党のヤツラが、何と言おうと、君は、立件されないよ」
「頼もしい友達を持って、助かるよ。ところで、立教大学教授の、金子勝、は、ツイッター、やら、日刊ゲンダイ、やら、で、しつこく、君、や、安倍政権、を、批判しているが、アイツは、目障りだな」
「それも、大丈夫だ。検察の取り調べ、では、金子勝、を拷問するように、命じておいたからな。ヤツは、うんと、苦しめてから、殺すよ。マスコミには、金子勝、が、取り調べ中に、脳卒中を起こして死んだ、と、報道するよう、伝えておいたからな」
「ああ。そうか。それを聞いて、安心したよ。君の、行動力、と、決断力、は、凄いな」
あっははは、と、二人は、笑って、「カンパーイ」、と、言って、ワイングラスを、カチンと、触れ合わせた。
安倍晋三は、アランドロンの名作映画、「太陽がいっぱい」、の、ニーナ・ロータ作曲、の、バックミュージックを聞きながら、完全犯罪に成功して、幸福感に浸っている、アランドロンの気分になりきっていた。
その時である。
黒い背広を着た、複数の、目つきの鋭い男たちが、安倍晋三を、にらめつけながら、やって来た。
そして、安倍晋三の前に、仁王立ちした。
一人が、内ポケット、から、紙を取り出して、安倍晋三に見せつけた。
それは、逮捕令状だった。
検察官たちは、安倍晋三をにらみつけながら、言った。
「安倍晋三。お前を、殺人罪、誣告罪、税金私物化罪、犯罪捏造罪、政治資金規正法違反、容疑で逮捕する」
えっ、どういうことだ?
安倍晋三は、わけがわからず、思わず、ワイングラスを落とした。
ガッシャーン。
ワイングラスの割れる音と同時に、安倍晋三の野望も砕け散った。
令和2年9月14日(月)擱筆