研修代をだしてもらうことは出来ますか? #111

先生、ちょっと相談いいですか?

「ベビマ(ベビーマッサージ)の研修を受けたいと思っているんですが、研修費用って出してもらったりできるんですか?」

園の研修予算は、園長采配が多いとは思うが、法人の考え方によって、おおきく異なると思う。
少額の保育用品や製作材料の購入ならば、私でもYES/NOの判断ができるが、研修費用となるとその裁量権は全く私にはない。

保育園の研修は、ざっくりとわけて、
①    毎月テーマを決めて全員が参加する園内研修
②    自治体等が開催する外部研修(費用は無料~数千円程度のものが多い)
③ 新人研修・キャリアアップ研修・管理職研修などキャリアに応じたもの
④ その他(園長が必要だと認めるもの)

働きながら継続的に学べる機会やそのためのしくみを作ることは重要だ。
もちろん、職場から与えられる研修のなかに、自分が行きたいものがあればよいのだが、そうでなければ、「業務として学ぶ」「行けと言われたから」とやらされ感が強くなる。

そして、「学びたい」という気持ちがあっても、自分が学びたい内容を、自分が学びたいと思ったタイミングで受講できるという機会はなかなかやってこない。

自己研鑽をするなかで、自分が受けたいと思う研修を知ったときに、職場の研修予算で、学ぶ意欲をしっかりとバックアップしてくれる仕組みがあれば、どれだけありがたいだろうか。

今日の論点は、そこではない。
無いものねだりをしても仕方がない。

私は、彼女に個人的に受講する研修の費用を拠出する制度は現時点ではないことを伝えた。
そんないい話あるわけないか、とちょっと残念そうな表情。あわよくば出してもらえないかなと思っていたそうだ。
この気持ちは、私も経験済みなので、とてもよくわかる。
聞いてみると、彼女が受けたい研修はベビーマッサージの認定資格がとれるもので、研修費用は10万円を超えるそうだ。

10万円超えの高額な研修。

私もいろいろな研修にかなりのお金を使ってきた。
職場の研修制度で補填出来たらどれほどいいかと思ってきた。
(私の場合は、お金を出してもらい、後からアレコレ言われるのが嫌で、会社のお金に頼ろうと画策するのはさっさと諦めた)

彼女の気持ちはよくわかる。
そういう制度があればいいなとも思う。
だが、仮に制度があり、私に裁量権があったとしたとしても、私は彼女の10万円の研修受講は認めないだろう。

彼女には、その10万円の研修の受講を希望する前にすべきことがある。

「その研修、自分のお金を出してでも、どうしても受けたいと思っている?」

「・・・いろいろ調べたんですけど、資格をとろうと思ったらどれも高くて・・・」
「資格があったら、園児募集するときの、PRにならないですか?」

彼女は数か月前にも、ベビマを勉強したいと、言っていた。

ベビーマッサージ関連の研修を調べてみたけれど、ベビーマッサージの勉強は何もしていない。
そして、研修で学べる環境に身をおける幸運が来ないかと期待している。
期待しているだけでは、前に進まないので、私に相談する、という行動にでたのだ。

「ベビーマッサージを学び、保育のアップデートをすること」ならば理解できるし、応援したいと思う。
それならば、お金をかけなくても出来る。

無料の動画だって探せばたくさん出てくるし、本だってたくさんある。

「ベビマの本を3冊ほど買って、最低3回は読み込んで、大事な部分をとにかく実践してみたらどうだろう。それなら、1万円もあればできるはず。」

「もちろん、私には裁量権はないけれど、とにかく、やってみて、それでも、まだ足りないと思うなら、その時にもう一度相談しよう。先生がその研修で学ぶことが、園にとって価値があるって思えたら、私が園長を説得するのを手伝うわ。」

彼女は、研修で学ぶという選択肢しか見えていなかった。
私は、学ぶ意欲をもっている彼女のモチベーションをさげないように、言葉を選びながら伝えた。

あなたが、園長なら、今の自分に10万円払う価値があると思えるか?
そうやって、経営者の目線で考えることも必要だ。

学び=お金をかけることではない。

高額のセミナーの内容がいいのは、当然だ。
でもお金は無限ではない。
そして、それらのセミナーの内容は、大抵本に載っている。

本を読むようになって、気がついた。
あの時、セミナーで学び始めて知って「研修を受講してよかった~~~」と思ったこと、感動したことは、そのほとんどが本に書かれている。

もちろん、実技があったり、個別のフィードバックが得られたり、ともに学ぶ仲間との出会いも貴重で価値がある。

こういうセミナーは、身銭を切って参加する人も多く、だからこそ必死で勉強する。
会社の予算で派遣される人のうち、①派遣されるべく選抜された人は、学ぶための土台ができていて、実践で活かすことを考えて、学びを無駄にしない。②たまたま選ばれた、本気で学ぶつもりがない人は、いくらよいセミナーであっても、受講するだけで実践に結びつかず、成果がでにくい。

こんなことを書いていながら、私自身は、身銭を切った割に、行動が変わらないという残念な受講も経験している。
私の場合は、「お金を払ったから絶対ものにするぞ」という損得勘定は働かず、好きか嫌いかが行動変容の基準になっているようだ。

だからこそ、高額セミナーに参加するかどうかを悩んだときは、宣伝文句や認定資格に惑わされず、自分のお金を払ってもやりたいか?本当に好きなことか?ほかに学ぶ方法はないのか?などを冷静に考える必要がある。

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