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オノマトペピアノ【毎週ショートショートnote】

私と恋人のサムはレストランで食事をしていた。今日は私の誕生日だ。

「サム、この料理とても美味しいわ、素敵な誕生日のお祝いありがとう。サム、愛しているわ」

「同じく」

「サム、貴方はいつも『同じく』しか言わないのね。たまには貴方から愛していると言ってよ」

1週間後


横断歩道を渡っていた老婆が居眠り運転のトラックにはねられそうになり、たまたま近くを通りがかったサムは、間一髪老婆の命を救った。それと引き換えに彼は帰らぬ人となった。


葬儀の日に、サムが助けた老婆がお参りに来た。
「本当に、私のために申し訳ございませんでした。これはオノマトペピアノと言って、鍵盤を弾くと思いを寄せた方の声で喋ってくれる不思議なピアノです。どうぞ受け取って下さい」

私が適当に鍵盤を弾くとピアノがサムの声で喋った。

「モリー愛しているよ」

サムが初めて自分から愛していると言ってくれた。

「同じく」

私が答えるとピアノがサムの声で歌い始めた

Oh, my love ♫


410文字

この作品は1990年公開「ゴースト/ニューヨークの幻」のオマージュ作品です。

たらはかにさんの企画に参加させていただきます。

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