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大増殖天使のキス【毎週ショートショートnote】

カランコロン
「いらっしゃいませ」
私が薄暗いバーに入ると、口髭を生やしたマスターが低い声で言った。

私はカウンターの席に腰掛けると同時に
「天使のキスを」
とオーダーした。

マスターは
「かしこまりました」
と言うと手際良くシェーカーを振り、私の目の前にベージュ色のカクテルを置いた。

今巷で大流行のこのカクテルは、失恋や仕事のストレスなどが原因で夜眠れない人向けに某飲料メーカーが開発したカクテルだ。
成分は企業秘密だが何やらツバメの巣から抽出したエキスが含まれているらしい。

継続して飲むと乳酸菌とシロタ株が腸内で大増殖して精神的ストレスを緩和し、睡眠の質を高める効果がある。

全国の飲食店はこぞってこのエキスを購入した。
天使のキスの大成功により、この飲料メーカーは業界最下位から一気にトップメーカーに大躍進した。

開発者の村上は給料が20倍になり、他の社員も全員給料が2倍になった。
村上は社員全員から感謝され、神様と呼ばれるようになった。


410文字

この作品はフィクションです。
登場する人物、団体は実在するものとは一切関係ありません。


たらはかにさんの企画に参加させていただきます。

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