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噛ませ犬ごはん【毎週ショートショートnote】


吉岡一生いっせいは、自分の親父から引き継いだこのプロレス団体の社長兼花形レスラーだ。
俺は武藤マツのリングネームで一生の敵役、引き立て役として覆面悪役レスラーをやっていた。

若い時に悪だった俺は一生の親父に拾われてこの世界に入った。
恩人の息子の噛ませ犬でご飯が食べられる…何  よりの幸せだった。

覆面を脱いだプライベートでは、俺は一生のことをぼんと呼んでいる。
きょうは俺の誕生日で、ぼんが最新のスマホをプレゼントしてくれた。
ショップで手続きが終わり立ち上がった。

「手を挙げろ」

拳銃を持った強盗だ。スマホは海外で高値で売れる。

「バカなマネはやめろ!」
「ぼん、危ない!」
俺はぼんの前に立った。

「ドキューン」

「マッ、マツ!」

「ぼ、ぼん…ぶ、無事で…」

「マツ、死ぬな、…」

「ぼん、はぁはぁ、…」 

「マツ、死ぬな、何か言いたいことはないか!」

俺は胸ポケットから銃弾がめり込んだスマホをぼんに見せた。
「せっかく買ったばかりなのに」


410文字


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