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幼なじみのさくらと蓮加と後輩の菅原#3【休日】

カチャッ

扉が開いて一人の時間が終わりを告げる。


〇:おはよ、うっ;;;


土曜のタックルは少し重い。


蓮:おっはよおおぉぉー-


朝から声出てるなぁ・・・


・・・・・・

〇:蓮加また寝てないだろ

蓮:もちろんっ!!金曜の夜に寝るわけないじゃん

〇:まあ、いいけど・・・

蓮加の睡眠スケジュールはぐちゃぐちゃだ。

平日はまだ大学があるから多少ましだが、休日はオレが起きる時間まで起きてる事が大半だ。

そして大抵テンションが高い。さっきまでゲームで出ていたアドレナリンのやりどころがないんだろう。

早起き派のオレからすると考えられない事だ。


〇:なんか飲むか?

蓮:うんっ。飲む飲むっ

ぐぐいっと顔を近づけてくる。

近いなぁ///






カチャッ

扉が開いて二人の時間が終わりを告げる。

〇:おはよ、さくら

さ:んぅぅ、おは・・・
蓮:おさくー、んぅうー-

ボルテージマックスで突っ込んでさくらの身体をまさぐる。

さ:んぅぅー-

抵抗を諦めて立ち抱き枕と化すさくら。

・・・・・・

・・・・・・

蓮:ふふっ、〇〇もおはようのハグしたいでしょ

・・・・・

〇:コーヒー?紅茶?

蓮:おぉい、無視すんなし

休日の朝はだいたいこんな感じだ。





蓮:ねえねえ、パンケーキ食べ行かない?

〇:は?

蓮:さっき吉田にめっちゃ自慢されたのよ、だから行こ

さっきって・・・


〇:今日の話か?蓮加寝てないんだろ

蓮:うん、このまま寝ないで行く。開店前に並ぶみたいだから

こういう時だけめちゃくちゃフットワーク軽いんだよな・・・


蓮:ね、おさく行こ?

さ:ううん。行かない・・・・

蓮:えぇ、なんか予定あるの?

さ:うん、家から一歩も出ないっていう予定がある・・・

蓮:行こうよー-

さ:ううん。行かない・・・

こういう時のさくらはなかなか手ごわい。

もちろん蓮加もそれは分かっている。


蓮:ほんとに行かないの?

さ:うん。行かない・・・




蓮:じゃあ、〇〇と2人で行ってくるからね!

〇:いや、オレ行くって言ってないんだけど;;

蓮:いやなの?

うっ;;;

蓮:私と出かけるのいや?

〇:そーいういやじゃないけど;;

蓮:じゃあいいよね!!決まりっ!!



はぁ・・・


蓮:行こ行こ

〇:さすがにまだ早いだろ

蓮:だから並ぶんだって、行くよ!!






休日の早朝に並んで歩いて駅に向かう。

雨上がり特有の湿気が全身に纏わりつくが、それを帳消しにする早朝の静けさと、隣にいる幼なじみの高いテンション。





蓮:久しぶりだよねー、2人で出かけんの

〇:そうか?先月もあったけど

蓮:うん。だから一か月ぶりのデートじゃん


・・・・・・

・・・・・・


デートって・・・


どう反応したらいいんだよ・・・


そんな資格オレにあるわけないだろ・・・



蓮:どぉぉーん

んおぉっ;;;

突然右半身に軽くて強いタックルをくらう。

〇:なんだよ;;

蓮:なんか変な事考えてたでしょ

〇:え?べ、別になんにも;;;

蓮:ほんっと、分かりやすいね・・・◯◯は




目的地に向かう電車に乗る。

休日とはいえまだ早い時間なので乗客はまばらだ。


蓮:んぅーー

椅子に座ると急に眠気が来たのか、唸り出す。


〇:ちょっと寝たら?

蓮:んー、せっかくお出かけしてるから

・・・・・・

蓮:んんぅー

・・・・・・

〇:別にオレとなんていつでも出かけられるだろ


蓮:・・・そっか、そうだよね

ふふっと鼻を鳴らしてからゆっくりと瞼が閉じる。

蓮:じゃあちょっと寝る

〇:ああ

返事をするとポスッと肩に軽いものが乗っかる。


ふぅ・・・


安心しきって隣で眠る幼なじみのビジュアルの強さに感心する。

こんな生活サイクルでなんでこんな綺麗なのか不思議だ。

外でこんな無防備な顔すんなよ;;;

そんな事を考えつつ乗客の少なさに胸をなでおろした。





開店の1時間以上前に目的のお店に到着する。

蓮:おぉ、一番乗り

〇:そりゃそうだろ、さすがに早すぎるんじゃないか?

蓮:そんな事ないよ、けっこう前から並ぶみたいだし


蓮加の言った通り数分後には女の子数人がオレ達の後ろに列を作りだし、

開店前にはそれなりの人数が列をなしていた。

男はオレだけでけっこう気まずい、カップルでもないし・・・



蓮:早く来てよかったー、勝ち組だね

〇:勝ち負けあんのか

蓮:もちろん、開店と同時に入れるかどうかで全然違うからね

〇:まあそれはそうだな

蓮:だから勝ち組ってか優勝

〇:ゲーマー脳だなあ





蓮:ええっ・・・・か、可愛い;;

〇:食べ物に対して可愛いってどうなんだ

蓮:いいじゃん、可愛いんだから

そう言って写真を撮りまくる。

パンケーキが可愛いっていう感覚はよく分からない・・・

パンケーキにご執心の可愛いが強すぎて・・・




蓮:ありがとね、付き合ってくれて

〇:ああ、美味かったな

蓮:ふふ、そっかー蓮加とデート出来て幸せだったかー

〇:そこまで言ってないだろ

蓮:何か言った?

〇:いや、別に・・・

蓮:また誘っていいよね

〇:ああ・・・

蓮:ふふふふ・・・んうー、眠い

〇:そらそうだろ


蓮:帰ったら夜まで寝て、夜から吉田んちで合宿するから

〇:合宿って、ゲームするだけだろ

蓮:そうだけど?なにか?

〇:別に・・・

・・・・・・

・・・・・・


蓮:ねえ、〇〇

〇:ん?

蓮:明日はおさくにかまってあげてね

〇:え?

蓮:私ばっかりはずるいからさ

〇:なんだよそれ・・・









ーーーーーー

ーーーーーー


カチャッ

部屋の扉が開いてリビングで過ごす一人の時間が終わりを告げる。

顔を上げるといつものように目が合う。

〇:おはよう、さくら

さ:ん、おはよ・・・〇〇

目を細めた後にリビングを抜けて洗面所に向かう。

その細い背中を見届けてから、開いていた本をそのまま伏せてキッチンに立つ。

読んでいた本の内容を脳内で遡りながら、こぽこぽと音を立てるケトルをぼーっと見つめる。

・・・・・・

・・・・・・


少しして洗面所からちょこちょこ戻ってきたさくらが隣に立つ。

〇:なんか食べる?

さ:ううん、いい・・・

〇:そっか、じゃあオレもいいか・・・

土日の朝は食べない日も少なくない。

その辺特にこだわりがあるわけでもないので、さくらに合わせてるというか任せてるような感じだ。

休日の貴重な朝時間を無駄遣いしてやるか、コーヒー飲みながらダラダラと読書でも・・・

そんな事を考えていると袖口をクイクイっと引かれる。


さ:ねえ

〇:ん?

さ:今日なんかある?





さくらにこう聞かれた時のオレの答えは決まっている。

〇:さくらとぼーっとする以外は何もないな






ーーーーーー

さ:どうぞ

〇:うん・・・

袖を引っ張られてさくらの部屋に入る。

ああ・・・

1か月ぶりのさくら色に染まった空間に入り込む。

一緒に生活をしているがそれぞれの部屋に入る事はあまりない。

幼なじみとは言えお互いに気持ちよく過ごすためにはプライベートな空間は重要だ。

オレの部屋に2人が入る事は無いし、蓮加の部屋にも基本入る事はない。

それでも月1くらいでさくらの部屋で一緒の時間を過ごす。

さくらと一緒に過ごす時間は長くて短い。

そして短くて長い。

平日の朝でさえそう感じるのに、休日となるとより一層時間の感覚が分からなくなる。

あっという間に夕方になっている事もあれば、その逆もある。

ちなみに何か特別な事をするわけでもなければ、がっつり話をするわけでもない。

ただ時間を気にせず本を読んだり、ぼーっとしたり、眠くなったらうたた寝したり。

ただただ一緒の空間にいるだけ。

さくらはベッドの上、オレはベッドによりかかってという感じだ。

一緒にベッドに並んで座った事もあったが、オレが落ち着かないのでこういうポジションになった。

自分のベッドのなかにいる時のさくらはいつもよりちょっとだけ奔放というかなんというか・・・

突然よく分からないちょっかいを出して来たりする。

さ:えいえいえいえい;;;

急に背中をツンツンと疲れて顔を向けると、満足そうに微笑む。



〇:ん?

さ:ふふ、なんでもない・・・

〇:そっか・・・

朝リビングで過ごすのとは少し違ったさくら色の空間に、心身ともに癒される。




ぐぐぅう・・・


空腹の鐘が鳴って時計に目をやる。

ああぁ・・・もう3時か、どうりで

〇:なんか食べるか?

・・・・・

〇:さくら?

さ:私はいい・・・

〇:え?

さ:お腹すいてない

〇:いや、朝も食ってないじゃん

・・・・・・

・・・・・・

〇:別に無理にって事ないけど・・・

さ:お腹すいてないもん

・・・・・・

・・・・・・


ぐうぅ・・・

さ:あっ;;

今度はさくらの方から音が鳴って・・・

恥ずかしそうにしながら器用にオレを睨む。

さ:〇〇がごはんの話するから;;;我慢してるのに

〇:我慢?

さ:だからダイエットしてんの;;;

〇:いやいや、ガリガリじゃねぇか

さ:ちょっと太ったの・・・

〇:どこがだよ

さ:どこって・・・

シャツをたくし上げてさくらの白くて細いウエストと形の良いお臍が飛び込んでくる。

さ:ほら、この辺・・・

そう言って自分でお臍の横をむにっとつまみ上げる。

見ちゃダメだと思いながらも、ロックされた目線は言う事を聞かない。

さ:あ;;;

さ:エ;エッチ//////

〇:いやいや、今のはオレのせいじゃ//////

さ:むぅぅ//////えいえいえいえい;;;

〇:イタタ、分かった;;オレが悪かったよ;;;

しばらくの間、さくらのツンツン刑が執行された。



さ:もう///せめていい時に見てもらいたかった///

〇:ん?なんて?

さ:なんでもないもん///




ぐぐぅう・・・
ぐうぅ・・・


双方から放たれた音がハーモニーを奏でる。


〇:ふっ;;;

さ:ふふ;;;



〇:よーっし、カレーでも作るかなー

さ:え、ずるい;;;

〇:さくらも食べるか?

口を尖らせながらも、こくっと頷いた。










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夕方前にさくらと食事を済ませた後、カロリー消費してくると言って外に出ていつもの場所に到着する。

大学から少し離れたオフィスビルの屋上。

ここに来る時はいつも一人だ。

平日はビルで働く人達がそれなりにいるが、休日に至ってはほぼ貸切状態。

人のいない大学を眺めながら、一人で罪悪感と向き合うには都合がいい場所だった。


蓮加とさくらとそれぞれ2人の時間を過ごすと思い知る。

やはりオレは蓮加が好きだ。


そして、さくらが好きだ。





それでも2人のどちらも選ばない事を選択したオレがいつまでも一緒にいたらダメだ。


そんな事は分かっているのに・・・






「な;なにしてるんですか;;;」


聞き覚えのある声とともに右手の甲に手が重ねられて、


自分の左腕をきつく掴んでいる事に気づいた。



【続く】



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