ラッシー
私が住んでいたのは、ちょっと奥に行けば、トトロが出そうな田舎町。学校の理科の授業では、裏山に行っては、柿などをもいで食べたものだった。
そんな田舎の学校に、遠い町から転校生がやってきたのは四年生の時。県庁所在地でもある町から引っ越してきた上原くんは、その存在感が周りの子たちと一味も二味も違っていた。
足も早くて運動もできる、頭も良くて明るい性格となると、周りのみんなの目を一瞬にしてさらっていった。
田舎の子猿どもとは違う。都会の子。おまけにカッコいいとなると、色めき立つ女の子もいただろう。
そんな上原くんが、最近、ある同級生に、こんな事を言ったと言うのだ。
「あの頃、さとちゃんは僕のこと好きだったと思うよ」
うん、確かに好きではあった。でもそれは色恋の好きとはちょっと違う気がするのである。思い出してみても、初恋のようなドキドキ感や恥じらいのようなものは、思い起こせない。
これをうまく表す感情はないものかと考えているけれど、なかなかピッタリ❗️というものは浮かばない。
そもそもADHDの私は注意力散漫。そんな中で恋愛のような強烈な印象だったら、絶対に残ってるはずなのだ。
当時、流行っていたTV番組に「名犬ラッシー」と言うのがあった…多分。コリー犬のラッシーが人間顔負けの賢さで難事件を解決していくという番組だったと思う。子どもながらにラッシーの飼い主になったような気分になって、ラッシーが大好きで誇らしい気持ちになっていた。
これか…
なるほど、上原くんは賢い犬っぽい顔をしている。彼がいれば、クラス対抗戦は大きな戦力を得て勝てる❗️と思うだろう。
賢い、心強い味方
これ、ラッシーに似てない?
ちょっとだけ腑に落ちた私。
でも、これは彼には伝えないでおこう。私に好かれてたって喜んでいるなら、尚更。
「名犬ラッシー」また再放送しないかなぁ