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モノに刻まれた銀座の文化の芳醇な匂いが写真から漂ってきた〜記録と記憶と思い出の間を揺れ動く〜

資生堂ギャラリーで石内都個展「初めての東京は銀座だった」を観てきた。

古びたレコードドーナッツ盤、銀座月光荘画材店の使い込まれた絵具、資生堂の初めての本格的な香水「香水 花椿」、銀座や新橋の芸者衆の着物の生地、芸者衆から愛された新橋ブルー色のスカジャン、銀座寿司幸の蛸引き包丁、ミタケボタンのアンティークボタン、銀座天一の天ぷら、銀座もとじの草履、壹番館洋服店の鋏、銀座ボーグの帽子、資生堂パーラーのオムライスなど、銀座の技術、伝統、誇りといった文化を象徴する品々の写真が並んでいた。

資生堂ギャラリー


単なる品々の記録写真ではない。記録と記憶と思い出の間を揺れ動かされた。
それらの写真を観ていると、戦後70年余の時間の年輪や、銀座の文化の芳醇な匂いが写真から立ち上がってきた。

写真に芳醇な匂いを刻み込むって凄いことだ。そういう写真を撮りたいものだ。

石内 都
1947年群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。1979年、初期三部作のひとつ「APARTMENT」で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。同じ年生まれの女性の手と足をクローズアップした「1・9・4・7」以降、身体の傷跡を撮ったシリーズを展開。2005年、母の遺品を撮影した「Mother’s 2000-2005 未来の刻印」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレの日本代表に選出されてから世界的に注目を集めるようになりました。2007年より現在まで続く、原爆で亡くなった人々の遺品を撮影した「ひろしま」も国際的に評価され、近年は国内外の美術館やギャラリーで個展を多数開催。2014年には、写真界のノーベル賞と言われるハッセルブラッド国際写真賞を受賞。2015年、J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)の個展「Postwar Shadows」では、「ひろしま」がアメリカの美術館で初公開され、大きな反響を呼んだ。その活躍から女性アーティストを牽引する存在でもあり、自然体で揺るがないライフスタイルは、作品とともに幅広い層からの共感を得ている。

2023年9月


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