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パリオペラ座近くのホテルにまつわる物語 「β」

InterContinental Paris - Le Grand宿泊時の話。

当時のホテルフロント入口に
コンシェルジュデスクがあった。今もあるのだろうか。カウンターの重厚な木の感じを今でも覚えている。

ガイドブックを片手に観光客の私が質問を繰り返す。コンシェルジュにとっては何度も答えているのであろうその質問に対して、またアジア人の私に対しても非常に親切に答えて下さった記憶がある。

チェックアウトの精算時に、利用してない
バーの料金がチャージされていてひと悶着した。
旅をしてると時々発生する。謎のチャージ。

煩わしいなら秘書でも雇って、細々した事は任せてしまえば事足りる。

自分で手配してる旅行だったので、自分で解決するしかない。
日本ではほとんど発生しない、こうした細かな交渉事が続くと
普段利用してない「脳」の部分を使うからか、どっと疲れる。

そんな時、コンシェルジュが話しかけてきた。

「あの車は君のかい?」と。

外にロールスロイスのファントムが横付けされていた。その後ろにはカイエン。

「ベンツ」ですら「メルセデス」と言われるだけでそれが何かも認識できなかった当時の私。

そんな自分の所有物であるはずがない。
明らかにジョークで言ってる。

ならばと
oui.. と答えて、are you sure? みたいな応答をした記憶が。

彼はウインクをして、説明してくれた。
「今週、中東の王族がこのホテルを利用中らしくてさ、
たぶん彼の持ち物だよ」と。

100ユーロに満たない値切り交渉に躍起になっている私の数メートル先に、5000万はする車が横付けされていた。

生まれて初めてこのクラスの車を、この距離で本当に目にした事を、私は未だに憶えている。