見出し画像

揺らめく小瓶 作tukiyo

揺らめく小瓶

作 tukiyo

真夏の夜に
君を追いかけて
追いついたつもりで
その指先に噛み付いた

長い髪が鎖骨の真下に流れて落ちて
涙なのか水滴なのか
濡れた頬を拭ってやりたくなる、、、

真夏にあらわる
それは陽炎とかいう
ゆらりとたちのぼる
幻影のような掴めないもの、、、

君はそれなのか?
それとも、、、?
暑さに目がくらみ
見えてしまうまぼろしの中の人、、、?

これがまぼろしでも
僕は別にかまいはしない
ねぇ、、、濡れたままじゃ風邪をひくよ、、、
このまま朝まで
指を繋いだままで
君を濡らす水滴を吸いとってあげるから、、、
言いかける言葉に君が蓋をする

胸底からたちあがってこようとする熱をどうか
ここへ預けておいて、、と
君が差し出したそれは

フロストされた
ガラスの小瓶

小瓶にさされたコルク栓をねじきって
中にあるその謎めいた液体を飲み干して

薄れる意識の海にゆっくり落ちてゆく
空になった小瓶には
代わりにこのどうしようもない熱を注いでおくよ
そうしなければ
胸元から焼け落ちて
灰になりそうだ、、、

小瓶に詰められた
キミと僕
ねじきってしまったコルク栓がなんの役にもたたないから、、、

開いた口から
漏れだしてしまわないように、、、
指先で蓋をしておこうか

それとも
もう、、、こんな窮屈な小瓶は破滅させて
溶け合って混ざりあって
こんな小さな世界なんて、、、
それも一緒に飲み込んでしまおうか?

暑すぎる真夏の夜更けに
見た君のまぼろし

朝方に目を覚まし歩く砂浜で
うちあげられた
海岸の小瓶

拾い上げたら
それは まだ わずかに
熱を孕んで揺らめいていた

小瓶の先に詰められた茶色のコルク栓に僕は噛み付いて、、また、それをネジ切った、、、

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?