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「いい写真」の話 part4

こんにちは。
これまで「いい写真」という正解のないことに、いくつか自分なりの答えを出してきたけど今日は、これが写真の本質かなって思ってること「あの時」「瞬間」そして「記憶」について、ちょっと長くなるけど一気に書きます。

掲載した白黒写真は、ずいぶん昔に自転車やオートバイで旅してた頃のもので、北海道の旅6年目のこの年、旅の相棒は借物のホンダCB750でした

実はこの年、バイクを持ってなくて、嫌がる実家の弟から半強制的に借りた50ccのHONDAモンキーに荷物を積み込んでると、もうほとんど車体が見えないくらいで、いったい何処に乗ればいいのか?と出発の朝、途方に暮れながら荷物を減らすのに四苦八苦しているところへ偶然、親戚のオッチャンがナナハンでやって来た。

汗だくで荷物を積んでるボクに

「お前、それで行くんか?」

きびしいなぁ〜とは思ったが、もう自転車には戻れないし、これでもエンジンついてるだけマシやし…😅

すると「やめとけ!危ない。コレ乗って行け!」と、まさに天の助け⁉️

こうして出発当日になってボクの相棒は50ccから一挙15倍に!もちろんボクも超ラッキー❣️だったが、いちばんホッとしたのは弟だったと思う😅


余談はこれくらいにして話を北海道に戻します。

道北のサロベツ原野からの利尻富士が見たくてしばらくキャンプした時に、近くの漁村でスナップしたもので40年も昔の話です。


繋がれて、前を通り過ぎるボクを追うその視線が寂しそうで思わずシャッターを切ったその数分後に、散歩で通りがかった犬にワンワンワン!と猛然と吠えかかった。あまりの変化に驚きつつも咄嗟にシャッターを切ったのが下の写真です。ヨロヨロと引っ張られるタスキ掛けのオバチャン。ひとしきり吠えて気が済んだ犬は元の定位置に戻り、すぐにまた平穏が戻った。

このあと浜の方から歩いてきたお婆ちゃんとの長い立話が始まる

「いやいや、いつまでも寒いじゃないかい!」

それは少し離れたボクにも会話の内容が聴こえるほどの大きな声で

そりゃー その格好じゃ寒いやろ😩と、
7月とはいえ陽射しのない道北の浜でボクは革ジャン姿で震えてた🥶

母親と犬の後ろをついて来てた少年は「あ〜ぁ、また始まったよ😩」と言わんばかりの退屈そうな顔で振り返ってこっちを見てる。

たぶんここで毎日のように繰り返されてる日常なんだろう。そしてボクにとっても数々の北海道の旅の思い出の中でも特に印象的な出来事でもなく、感動的な光景でもない。事実この40年の間、一度も思い出すことのなかったある日の些細な出来事でした。

昨年の正月にあるきっかけから当時の古い写真を探してて、たまたま見つけたこの写真。もちろん撮影した当時もプリントしたことはなく36枚のスリーブのベタ焼きの1コマです。

「いい写真やなぁ〜」と思い、データ化してプリントしてみた。

ワンワン!と吠える声や、それよりデカいオバチャンの話声も、寒さも、潮の香りも、風の音も…この2枚の前後の一連の出来事、40年ものあいだ思い出すこともなかった記憶が、まるで動画を見てるように鮮明に甦り、そこに革ジャン姿で震えてる自分がいた。

恥ずかしながら40年前に自分が撮った写真に感動して涙が溢れた
そしてそれが昨年4月に開催した写真展「My photo history」に繋がりました。


記憶のカケラ

記憶って本当に不思議で、何でもない些細な出来事がある日突然に現れることがある。忘れたようでもそれは消えたのではなく、ずっと奥の方に刺さったまま積み重なってて、それらが潜在意識となり、その重なりを感性と呼ぶのかもしれない。

もしもこの時カメラを持っていなかったら
ボクはこの日のことを覚えていただろうか…

いい写真、その答えは人それぞれですが、写真を撮る行為そのものが、ファインダーを覗いて見たもの、聴いたこと、そして考えたことすべてが記憶として刻まれる。

やっぱり写真っていい!

余談ですが、昨年の7月に北海道の深川市で写真展を終えた翌日、40年ぶりにこの場所を訪ねた。子供たちの声が賑やかだった通りはすっかり寂れて今は跡形もなかったが、海を隔てた先には、あの時はなかなかその姿を見せてくれなかった利尻富士が雄大な裾を広げてた。


その後一週間、かつての思い出の地を巡る旅の中で思ったのが、ボクの中に眠ってる記憶のカケラを呼び起こして写真と共に書き残したい。誰のためでもなくボク自身のために。それもnoteを始めた理由の一つです。

「いい写真」の話からボクの昔話になってしまったけど、お付き合いいただきありがとうございました。「いい写真」については一区切りとし、タイムリーな写真展の告知をします。

https://www.ishidamichiyuki.com/%E6%A8%AA%E5%86%85%E5%8B%9D%E5%8F%B8-1

横内勝司が何者なのかはまた詳しく書きます。

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