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ほろ苦いお正月

お正月は親戚一同で集まりました。
ご馳走を食べながら、みんなでお酒を酌み交わしました。

親戚の中に、5人姉弟がいます。
22歳(女)、18歳(女)、16歳(男)、10歳(男)、4歳(男)。
上の女の子2人は、気が強くて声が大きくて、よく食べよく飲みよく喋る。
対して男の子3人はみんな大人しい子たちです。

祖母や叔父やその他歳上の人々はみんな口を揃えて言います。
"〇〇家は、レディースは賑やかだけどメンズは大人しい”って。
やれやれ困ったなという感じで、何度も何度も何度も何度も言います。

10歳のKくんは、大人が飲んで騒いでガハハとやっている中、ひとりでお母さんのスマホをいじったり、お菓子をつまんだり、テーブルの下にもぐったり。

大人の男たちは
「お前も義実家のほうに行ったら、コレみたいな感じなんだろう(笑)」
「たしかに(笑) そうかもしれないっす」
と、Kくんを指さして笑います。

お母さんに
「あんた恥ずかしいんでしょう笑」
なんて言われたKくん、
「別に、暇なだけだし」
なんて話している場面もありました。

義祖母は
「あんたも向こうの女の子たちに混ざって、揉まれてきな!!」
なんて言っていました。

こんなとき私はKくんに感情移入してしまいます。

小学4年生、10歳ともなると、大人が何の話をどんなテンションでしているのか、だいたいのことが分かると思う。
「コレ」なんて物みたいにダシにされて、胸がチクっとしてないかな。
酔っぱらった大人たちが、自分の知っているちゃんとした大人たちの姿ではどんどんなくなっていくの、怖くなかったかな。
そういうの、気持ちが追い付かなくて、なんとなく居心地悪くって、同じテンションでサッカーやゲームの話をできる子もいなくって。
そういう言葉にならないムズムズした違和感がよく分からなくて、テーブルの下にもぐってみたくなっちゃったのかな。
それを、大人しいKは恥ずかしがりやさんだから隠れちゃって的なニュアンスでとられて、モヤっとしなかったろうか。
くっだらねえ、なんだよ、って、思えてたらいいな。
傷ついていないといいな。

….これしきのこと、田舎の親戚あるあるなのかもしれません。
かく言う私も、似たような経験があります。

今でこそ、プライベートなことをずけずけと食い下がって聞かれたり、無茶振りをされたり、過去の恥ずかしいエピソードを暴露されたりした時の、身の振り方は分かります。
自分が火傷を負うことなく、かといって周りの空気もしらけさせない、うまい身の振り方です。
そういう、大人の対応みたいなものを、曲がりなりにも覚えてきました。
ヘラヘラと笑ってごまかして、そのたびに何かをすり減らしながら、なんとかかんとか生きてきました。

Kくんにとってこのお正月が、
「おっさんら、面倒くさかったわ~」
って、鼻で笑えるような、将来誰か本当に好きな人と飲みながら話せるような、そんな程度の思い出に、なってくれたらいいなと本気で思います。

お正月。
おせちや瓶ビールが並ぶ光景と一緒に思い出す、ほろ苦い子ども時代の思い出….それはそれで風情があるんだけれどね。

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