サイクラーズの廃棄予定家具のリメイクブランド「enloop®」が始動
廃棄物処理・リサイクル業界で異例の「デザイナー」採用
資源循環を進めサーキュラーエコノミーを実現させることが世界的なテーマとなっている昨今、使用済みのものをそのまま捨てずにできるだけリユース、リサイクルすることは当たり前のこととなっています。
しかし、モノからモノへのマテルアルリサイクルでは、再利用する際には当初使われていた時より品質グレードが下がってしまうことが大半です。
こうした中、デザインの力などで以前と同等、またはそれ以上の価値を生み出そうとする「アップサイクル」への取り組みに力を入れているところも出て来ています。
サイクラーズの廃棄予定家具のリメイクブランド「enloop®」が始動
そんな1つ、金属スクラップやプラスチックのリサイクル、産業廃棄物処理などを手掛ける東港金属を中核事業会社とし、サーキュラーエコノミーを追求するサイクラーズ(東京都大田区)の、廃棄予定の家具をデザインの力でリメイクし、新たな価値を与え、ムダをなくす社会を作ることをコンセプトとしたリメイク家具ブランド「enloop®」(エンループ、2月2日に商標登録完了)が始動しました。
新卒社員を「デザイナー」として採用
同社の他との大きな違いは、enloop®商品製作のため新卒社員を「デザイナー」として採用している点です。廃棄物処理・リサイクル業でデザイナーを募集し、正社員として採用しているというのは、例がないのではないでしょうか。同社のこの事業への本気度が窺えます。
enloop®では、廃棄予定の家具を、デザインの力によって、モノの価値を蘇らせ、一人ひとりの暮らしに寄り添ったRe:MAKE(リメイク)家具の制作販売を行っていきます。
グループ会社のトライシクル(東京都品川区)を通じて入荷したリユースまたは廃棄予定の家具を、デザインを通して家具本来の味は活かしつつ、新たな価値を与えることにより、大量生産型の家具とはまた一味違う唯一無二のリメイク家具に生まれ変わらせます。
ブランド名に込めた思い
ブランド名には、「モノを通じて一人ひとりの人生に寄り添い、その縁をたいせつに紡いでいく」との思いが込められており、本来廃棄されるはずのものの価値を最大化することを目指していきます。
リメイク家具のブランド展開などを進めていくに当たって、サイクラーズでは経営企画部にデザイン課を設置。武蔵野美術大学大学院からの新卒でこの4月から入社3年目となる三谷薫子さん、同じく2年目となる島田ちひろさんを、「デザイナー」として採用しました。enloop®ブランドの商品は現在この2人がデザイン・制作を手掛けています。
三谷さんの想い
三谷さんはenloop®商品の制作について、「家具などの製品にはそれぞれこれまでの〝人生〟があった上で廃棄されますが、そこで廃棄を止めて私たちがリメイクを施すことによって、〝新たな人生〟を与えたいという想いで取り組んでいます。
一点一点毎回入ってくるものが違うので、どのような加工をすれば再販価値が出たり、お客様に喜んでもらえる商品が作れるかということをその都度考えながらデザインしています」と話します。
島田さんがデザイナーとして働く理由
島田さんは同社でデザイナーとして働くことを決めた理由を、「学生の頃から環境や循環に関わるようなデザインをして、そうした製品を作りたいという想いがあり就職先を探していたのですが、この会社はリサイクルや循環を前面に出していて、しかもデザイナーを求めているということで、ここで働けばリサイクルを考えながらデザインできるということがとても魅力的で就職を決めました」としています。
3月にローンチイベントを開催
立ち上げに当たり、3月22日~24日の3日間、代官山CANVAS TOKYO (東京都渋谷区)でローンチイベントを開催しました。
ブランドリリース前にも昨年9月に武蔵野美大(東京都小平市)、11月に下北沢Studio HOTDOG(東京都世田谷区)でポップアップストアを実施しており、その際にもリメイク家具に共感した多くの顧客が購入しました。今回のローンチイベントでは、「めぐる家具が、あなたの暮らしをよりよくする」をテーマに、インダストリアルとモダンポップなインテリアという2つのテーマを混在させた空間を展開。
芸術と家具が融合し、洗練された空間をデザインした。また、同イベント会場では新たにカフェスペースを設け、リメイク家具を使いながらコーヒーブレイクを楽しめる空間を提供しました。
商品に込められたストーリーと想い
一つひとつの商品にストーリーや想いが込められており、例えば今回の目玉商品の一つであるダイニングテーブルは「Ratatouille Table」(ラタトゥイユテーブル)と名付けられました。
歴史あるホテルからやってきたダイニングテーブルを、ホテルらしい重みのある塗装を剥がし、本来の木目を活かすワックスで丁寧に磨き上げました。
「今日の主役はラタトゥイユ。色とりどりの野菜がさらにおいしくなる魔法のテーブル」というコンセプトとなっています。
その他病院で使われたキャスター付きワゴン、オフィスで利用された大容量ロッカーなどを新たな家具として生まれ変わらせたものを展示・販売。廃棄されたソファの布などを活用したブランドロゴ入りバッグなども制作されました。
デザイナー2人の今後の目標と夢
今後の目標、夢についてデザイナー2人はこう語っています。
三谷さん「このブランドを大きく育て、リメイク家具だけのホテルやショールームなどを作ってみたいです」
島田さん「公共施設1棟丸ごとに提供したり、ショッピングモール等に出せるよう、加工等の技術も高めていきたいです」
同社グループはこれまで法人向けの事業が中心でしたが、個人顧客にもアピールできる事業として、今後同ブランド事業を積極展開して行きたい考えで、デザイナーの採用も増やしていく方針です。
enloop®が今後どのような縁を紡いでいくのか、注目していきたいと思います。
enloop®公式ウェブサイト
サイクラーズ株式会社
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?