ゲイの私が推すBLその4・・・二人にとって一番大切なことは? 野田彩子『ダブル』


以前紹介した『ふしぎなともだち』の作者、新井煮干し子さんが、別名(野田彩子)で発表している作品とのことで読んでみました。

ストーリーは・・・

宝田多家良(たからだたから)は、同い年の鴨島友仁(かもしまゆうじん)の演技を見て感動、演劇は素人だが友仁の所属する劇団に入団する。友仁は、学生演劇出身者で多家良に演技や演劇論等を教えるが、多家良の才能に気づき絶望する。しかし、やがて友仁は自らも俳優をしながら、多家良のためになんでもしてやろうと決意し、多家良の雑務からセリフ読み、稽古の代役までするようになる。
やがて、30歳になった多家良は芸能事務所にスカウトされ、マネージャーもつき、テレビや映画に出演するようになり、二人の関係も変化していく。

自分なりにまとめてみました。

この漫画、ずっとBLとは思わないで読んでました。多家良は映画で共演した女性アイドルと付き合ったりしてたし。

ところが4巻で、多家良は舞台の役作り(つかこうへいの『初級革命講座 飛龍伝』の山崎!)に行き詰まり、以前出演した映画の監督、黒津(最初怖かったけど実はすごい人格者)に相談し、「秘密を持て」とアドバイスされる。多家良は「秘密ならもうあるんです。俺友仁さんが好きなんだ」と、言い出して、びっくり!!(黒津はびっくりしなかったが・・・まあ、二人を見てればわかるとも言える。)

さらに、黒津は「そういうのは思い切りが肝心」(告れってこと?)とアドバイスするが、多家良は激しく拒絶。

だめ。だめなんだ。俺は友仁さんと同じ舞台で戦えるようになりたい。友達になりたい。兄弟にも親子にも恋人にもなりたい。敵も味方もなりたい。隣に住んでるだけの人にも。全部なりたい。友仁さんと板の上で生きたい。だから離れるんだ。絶対秘密なんだ。

野田彩子『ダブル』4巻

一緒に舞台に立ち続けるためには、好きであることを秘密にしなければならない、と思うのは、わかる気がする。

しかし、黒津の言葉がきっかけになって、結局多家良は友仁に好きだといってしまう・・・(ええっ!)

大丈夫?って思ってたら、案の定、友仁は怒りだしてしまう。

お前は俺とセックスがしたくて俺と一緒にいたのか?俺に愛して欲しくて芝居を始めたのか?

野田彩子『ダブル』4巻

これは、友仁が自分自身に言っている、とも言える。

「あー、言っちゃった」って感じなんだけど、二人は、次の日の朝から、普通に生活しています。ほっとしたー。(ただし、お互いになかったことにはしてない)。

二人にとって一番大事なのは、一緒に芝居をすること(と多分ずっと一緒にいること)、そのことは揺るがないと思う。

好きという気持ちと、一緒に演劇をやっていきたいという気持ちを、どうやって両立させるのか・・・

こういう問題は男女でもありうるのでは。漫才コンビとか、仕事を一緒にやってるカップルとか。

この作品、演劇界が舞台なので、役者、マネージャー、演出家、映画監督・・・と、演劇関連の多種多様な人物が登場します。それぞれが「へのへのもへじ」じゃなくて、命が吹き込まれていて、「演劇って面白い」って思わせる。そして演劇ものの漫画に必須の(?)、悪役ライバルや嫉妬で邪魔する人が出てこない。みんな演劇に夢中になっている、ある種理想化された演劇界が描かれています。10代で読んでたら、劇団に入ってたかも。

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