ゲイの私が推すBL・・・新井煮干し子『ふしぎなともだち』

BL・・・ときどき「もしかして面白いのかしら」と思って読んでみるけど、心の底から面白かったと思える作品はなかなかない。というか、頭が真っ白になることもある。特に男性同士のセックスをやったことも見たこともない作者が描く性描写を何ページも読むのってかなり大変。

そんな中で、新井煮干し子さんの『ふしぎなともだち』は、かなり好きな作品です。

ものすごくまとめていうと、オタク大学生(由岐)と、コミュ力があり、割とバランスがとれた非オタク大学生(和、とかいてなごむと読む)の間に、アニメをきっかけに友情が芽生え、だんだん恋になっていく、というお話し。オタクすぎて大学でも浮いてる(アニメが好きだから、というより他人との距離感の取り方が変なため)由岐が勧めるアニメを和が観て感動したことから二人は親しくなるんだけど、二人の心が少しづつ近づいていくのが、本当に自然。アニメを一緒に見たり、電車で江ノ島にいったり、台風の夜を一緒に過ごしたり・・・そしてかけがいのない存在になった二人が肉体的にも結ばれるのも、この作品については納得できる。触れたいと思う人が多分お互いしかいないから。(我ながらすごいBLっぽい表現)

これはBLのある面をすごく体現している作品だと思うんだけど、思ったよりBLファンの受けが良くない気がする。それは多分、登場人物の外見のせいかも。特に由岐は、本当にオタクぽく描かれていて、ちょっと臭いときもある、という設定だし。でも、私は『ふしぎなともだち』を敬遠しているBLファンに、「その火を越えてこい」って言いたい。

BL漫画の多くに言えることだと思うんだけど、この作品でも登場人物のセクシュアリティがはっきりしない。いつもは、自分はそれが気になって、「あーこの人たちは、ゲイじゃなくて「BL人間」なんだな、って思う。(「セクシュアリティがはっきりしない、あるいはノンケ男性。なのに、恋する相手は(作者・読者の都合で)常に同性」・・・それを私は「BL人間」と名付けています。)

いつもはそれが苦手なんだけど、この作品では、気にならない。

それは、好きになる理由が、顔とか思わせぶりな表情とか、そういうのじゃなくて「自分をわかってくれる人に会えた」ってことだから。

考えてみると恋(特に初恋)って、性別やルックスよりも、「自分をわかってくれる人に会えた(と思った)」ってことがきっかけになってることが意外に多いんじゃないかな。外見はあんまり関係なかったりする。「ふしぎなともだち」は、どちらかが女性でも、話が成り立つ気がした。(そこについては、作者の新井さんに聞いてみたい気がする。)

私は、本当に「関係性」を書きたいなら、イケメンとか、いかにもBL風なルックスとか、御曹司とか、アルファとかオメガとかの属性って、かえって邪魔な気がするんだけど・・・多分、少数意見だと思う。

今度、新井さんが、別名義(野田彩子)で描いている『ダブル』(すばらしい!)について、書きたいと思います。

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