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ステキブンゲイで、小説書いてます。(第十四話)

時は、大正初期ー。

時は文明開化や大正ロマンが謳われ、和風と洋風が融合したノスタルジックな街模様となり人々は西洋の文化を吸収し、時代の先へ先へと突き進んでいった。
 綺羅びやかなハイカラな袴を着飾った女学生が、教科書の入った風呂敷を携え学校へ向かっていた。
 ハンチング帽を被ったサスペンダーの若い男が、背広を担ぎ銃を携え、駅舎の側の石垣に腰掛けていた。手には金貨の入った風呂敷を携えている。そこに、ギャング団がいつものようにオープンカーに乗って排気ガスを撒き散らしながら急停止した。
「何だ?またそこでいたずらして、」
近くで掃き掃除をしている駅員は苛立っている。
「ギャハハハ…おっさん、ゴミだよ。」
リーダー格の青年は、食べかけの缶詰を床に捨てた。バーガーは、カランと音を立てと床に落ち、汁が床に流れ落ちた。
「ギャハハハ!」
他の仲間もはしゃぎ、コーヒー缶やバナナの皮を床に落とした。
駅員は軽く舌打ちすると淡々と床に散らばった缶やバナナを拾い、睨みをきかせている。
「何だ?オッサン…ハハハ…」
「やば…兄貴、時間だせ。集会に遅れちゃう。」
若者達は、リーダー格の男を乗せると、爆音出しながら急発進した。
オープンカーは、丘の上まで走らせると近くのプレハブ小屋の前に停車させた。
「来たぜ。例の金、持って来てるか?」
小屋の奥の椅子で腰掛けている強面の大男が、渋い声を出した。
「ああ。」
リーダー格の優男は、ニヤケ顔で得意げに風呂敷を拡げると一杯の金を見せた。金は、米2合分もあった。
「何だ、全然話が違うじゃないか?これでギャンブルに勝てるとでも?」
強面の男の側にいる腰巾着が、声を荒らげた。
「だから、何だってんだよ?」
優男はそう言うと、金をばら撒く。するとその金は宙に浮き、優男が指を鳴らしたタイミングで金が弾丸の様に大男とその取り巻き達の頭部や胸を貫いた。
 そして、優男は自身の身体の周りに突風を発生させ木の葉を巻き起こし、ほくそ笑んでいる。
「おい、リョウイチ!」
仲間にリョウイチと呼ばれたその男は、木の葉をつむじ風のようにぐるぐる回転した。
そして、木の葉を弾丸にように飛ばし、再び相手側の身体を次々と突き刺した。
「リョウ…どうしたんだ?この姿は…」
周囲がどよめく。
 リョウは、背中に翼の様な物が生えー、いや、樹の枝の様な物が生えていた。

すると、リョウイチは、仲間の一人の首を掴んだ。
「…わ、っ、り、リョウ、何すんだよ…離してくれよ…」
掴まれ宙づりになった仲間は、声を震わせながら足をバタバタさせている。
 すると、リョウイチは口をぱっくり開けた。口は狼の様にぱっくり裂け、口からギザギザギザギザ歯が見えている。そして、彼を食べた。
 彼は身体の内部からマグマが迸る様な感覚を覚えた。彼は、自分が1番強いのだと思っていたのだ。
 彼は不思議な力を持っていた。木の葉を弾丸に変え撃ち殺し、人の心を操作しそして身体をも意のままに操る。周りは彼を恐れ、従わざる負えなかった。
 今、この場で殺されるー。周囲は恐怖で戦慄した。荒涼とした漆黒の魔王は、翼を拡げて高らかに嘲笑うー。
その1時間後ー。プレハブ小屋には粉々になっていた人骨が、辺りに散乱していたのだった。

時は、令和ー。白田サトコはいつもどおり施設を出て、自転車を漕いだ。
 職場に着くと、サトコはいつも通り検品作業をする。
そんな、仕事終わりの着替えた時の事だった。
「白田さあ、今日終わったらいくとこある?」
突然、桜庭、木村、山田の、三人衆がサトコに話しかけてきた。最近、この三人は異様に優しくなった。仕事中も、時折、交代でサトコの様子を伺いに来てまた、飲み物やお菓子を奢る事もある。
それがサトコは不気味に感じてしまい、心に益々分厚いバリケードを貼るようになったのだった。
「いえ、今日は、ちょっと…」
サトコが遠慮気味に断るが、木村が強い口調で制してくる。
「ちょっと、付き合って欲しい所があるんだよね。」
「え、でも、今日は大事な用事が…」
「すぐ、終わるからさ…」
木村は、ノリノリだった。
「何分位かかりますか?」
サトコは、面倒臭そうに尋ねた。自分は、いつもこうだ…嫌われたり報復を恐れ、自分を偽り続けながら今まで生きてきた。でも、そうした方が自分にとって1番安全圏であり、平和な日常を遅れるものだと思っているのであった。
「30分位だけどいい?」
「…はい…」
サトコは、渋々返事をした。
 
 4人は着換え終え、正門の前まで行くとそのまま木村の運転する車で、街の郊外へと向かう事になった。
 しばらく車を走らせると、辺りは真っ暗になっており人気もなく田畑や山がゴロゴロあるだけであった。通りがかりにみるカカシが何処かしら不気味さを漂わせていた。
「ち、ちょっと…何処、行くんですか?」
サトコは、恐る恐る木村に尋ねる。
「心霊スポット!心霊スポット!」
木村は、ハイテンションだった。
「ね!ここ、出るんだってね。」
桜庭も目を輝かせていた。
「…あんまり面白半分で行かないほうが…だって、亡くなったり体調悪化させたり取り憑かれた人だって居た、みたいだから…」
サトコは、兎に角恐れていたー。この前の、廃工場で面白半分の人達が全員、命を落とした事をー。
「『触らぬ神に祟りなし』ですよ…」
「あ~、もう、いい。白田は黙ってて…」
桜庭は、面倒くさそうに手でサトコを払い除けた。
「ちょっと…何、ここ…」
山田が、指を指した。
 三人が山田の指す方を見ると、車はいつの間にか繁華街の中を走っているのだった。しかし、その街並みは異様な光景だった。建物は、あらゆる時代の建造物が混雑していた。ギラギラしたネオンのディスコに、木造の古びた校舎ー、レンタルビデオショップ等…今の時代には殆ど見る事のない建物があるのだった。
「何あれ…」
「そうね…」
「…」
街の者は皆、肌は白く精気がなかった。目が死んだ魚の様にどんよりしており、焦点が合ってなかった。仮装パーティーなのだろうか…?
しかし、着ている服装に違和感を感じた。あらゆる年代の服装を着た者達がゆらゆら歩いていたのだった。
 大正と思われる、ハイカラな格好をした女学生風の人や、防空頭巾を被った昭和風の格好をした者、高度成長期時代のディスコ風の格好の人ー、だぼだぼのルーズソックスを履いた金髪の女子高生ー。
 街の者達は、誰も互いに会話せず交わろうとはしなかった。お互いに不干渉であり、歩く者やベンチで腰掛け本を読む者、お菓子を食べて橋から川を眺めている者など、様々であるー。1つだけ言えるのは、街並みは葬式の様に静まりかえっており誰も声を発しないと言う事だ。
 そして、どの建物も知らない建造物ばかりで、サトコ達は不安が強くなり近くの人に道を聞いてみる事にした。桜庭が、恐る恐る近くの人に尋ねる事にした。
「あの…すみません。」
すると、彼はギッと4人を睨みつけると、そそくさと速歩きでその場を去ったのだった。
4人は、そこにゾクッと背筋に寒気が走った異様な不快感を感じた。
 そしてまた、違う人に尋ねる事にした。すると、再び同じ反応が帰ってきたのだ、
「何なのよ…ホントにもう…」
「何か、疲れてきた…早くここを抜け出そう。」
「そうね。」
「…」
 4人は諦め近くの大通りに車を停めて、ひたすら北へとは向かって歩いていったのだった。街の雰囲気は殆ど変わらず、色んな年代の格好をした人達が無言でのそのそ歩いているのだった。まるで、死者の国に迷いこんだかのようである。
 しばらく歩いていくと、方位磁針が目まぐるしくぐるぐる回転している事に気がついた。
「ねえ、道、合ってるんだよね…?」
木村は、不安げに桜庭に目配せした。
「うん…確かにこの筈.…えっ?」
桜庭が不安げにナビを凝視している。
「どうしたの?」
「これ、おかしいのよ。電波はある筈なのに、全然うちらがいる位置がずっと同じ場所をぐるぐる歩き回ってる事になってる…」
「どういう事なのよ?」
「だってほら。」
桜庭がスマホのナビを見せた。4人は時折、ナビを確認しながら、歩き進めた。
地図には赤い点が同じ所を周回しているらしかった。まっすぐ進んだかと思うと、再び同じ位置に戻ってしまうー。自分達4人が同じエリアをぐるぐる歩き回っているようだった。夢の様な幻のような現象が、今、現実で起きている。自分達は神隠しにでもあったのだろうかー?まるで不思議の国の迷路に迷いこんだかのようである。
「何なのよ…もう…」
 すると、突然地面の中から黒い塵がぐるぐる渦を巻きながら噴出しだした。それはブラックホールのように強く重力のあるものであった。地獄の使者が舞い降りたのだろうかー?
 4人が息を飲んでいると、渦の中からリョウが姿を現した。彼は、木の葉を纏いながら、不敵な笑みを浮かべて立っていた。
 ビシッと決まったワイシャツに、サスペンダー、頭にハンチング帽を被っている。
頭にハンチング帽を被っている。
「誰…?」  
「ああ、俺か…山吹リョウだよ。お前ら、初めて見る顔だな…。」
「山吹リョウ…?知らない名前よね?」
「…ええ。」
4人は顔をしかめながら、互いに顔を見合わせた。
 すると、突然サトコ以外の3人がバタバタと倒れていった。
「まさか…黄魔…!?」
サトコは、2、3歩後付さりし、2丁のサジタリウスの引き金を引くと、照準を合わせた。弾丸は、眩い光線を纏いながら彗星の様なスピードと威力で、リョウの額を目掛けて飛び込んでいった。
 すると、リョウは真っ直ぐパンチするような感じで、右手の拳を突き出した。そして、右手から強い空気砲の様な風の膜がでて、玉は跳ね返り、サトコははるか後方に突き飛ばされた。
「よお。アンタ、随分強いんだな…」
リョウは、得意げに手の関節を回している。
「かはっ…」
サトコの身体は建物のショーウィンドウを突き破り、店内の奥の方へと飛ばされた。
 サトコは、彼の服装からして、大正か昭和の時代だと感じた。しかも高級そうなグレーの紳士服と帽子を被っている。
「あなた、黄魔ね…。」
「黄魔…?聞いた事あるネーミングだが、まさか、俺の事を言ってんのか?」
「あなたのしている事は、理に反してるの…だから、私はあなたを撃つ。」
「ふん。お前にこの俺が撃てるとでも…?」
「…」
サトコは、大勢を立て直すと再びサジタリウスの引き金を引き全念力を込めた。
「おう、お前、中々面白い物を持ってるじゃないか?これでこの俺様を撃てるとでも…?」
リョウは得意げにサトコに近づいてくる。サトコは後付さりをしながら、再び引き金を引いた。
 すると、男は再び突風を巻き起こした弾丸を弾き返した。サトコは、再び奥へと突き飛ばされた。
「な…んで?」
まるで磁石で跳ね返されるように、不思議と身体が遠のいていくー。
「おい、お前、弱いな…」
リョウは、サトコに近づくと首を掴み自分の頭上に持ち上げた。
「どうだ…?いつ、死ぬか分からないこの恐怖はよ…スリルだよな?ハラハラするよな?」
リョウは、小馬鹿にしたような口調でサトコを見ている。彼の口は、ぱっくり裂け中からギザギザした歯がちらついていた。そして、彼は舌を出し涎を垂れ流している。 
「うぐ…」
サトコは、脚をしきりにバタバタしている。
「なあ…苦しいか?苦しいよな?お前の苦しみは」
サトコは遠のく意識の中、ズボンのポケットから通信機を取り出し、ボタンを押した。
ー黒須に電話をー!!!
しかし、通信機の電波はぐるぐる回転している。
「おう。仲間か…?弱いモンはいいよなあ…いざというとき、助けてくれる仲間が居るもんなあ。」
サトコは、キツくリョウを睨みつける事しか出来ないでいた。
「おう。ホントに良い目だなぁ~俺が今まで当たって来た奴らも、そう言えばこんな顔してたよな…」
リョウはそう言うと手を緩め、サトコは地面へストンと落ち、身体は奥の方へと飛ばされた。そして、サトコは辛うじて鉛のように重たい身体を動かすと、近くの服がかけられてあるホルダーをリョウ向けて一気にスライディングさせた。
 しかし、これも虚しく大きく見えない不思議な磁石の様な力に弾き返されるのだった。
「あなたの、目的は何なの…?」
「目的だあ?俺は、探してるんだよ。冥王石をな…」
「冥王石…?」
「そうさ…俺は苛ついてんだよ。俺から力を奪った奴をな…それで、馬鹿にされたんだよ…」

リョウの目はギラついている。まるで、ラリっているかの様に、異常なまでにハイテンションであった。
 すると、リョウはいきなり瞬間移動でサトコに近づき、首を掴み頭を壁に押し付けた。
「はは…どんな感じなんだい?弱者の惨めさはよ…」
すると、リョウはサトコの額を壁にガンガン激しく打ち付けた。
ー駄目だ…力が出ない、
サトコは、強い痛みを感じると共に、身体は重しに押し付けられているかのように重くなり、動きが徐々に弱まっていったのだった。
すると、リョウの口はぱっくり空きギザギザしたはが段々大きくなっていった。
禍々しい悪魔は、目をギラつかせながらサトコを弄ぶ。
サトコは為す術もなく、恐怖より絶望の感情が強くあった。

サトコは、そこで気絶をしてしまったのだったー。

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