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怪説~モノノケガタリ~第8話

沙彦
「さて…
  早速仮説の検証に入ろうかな…
   にしても…
    最近…
     あの二人と過ごすのが当たり前になっていて…
      他の事を気にするのも忘れていたようだな…
       まさかとは思うが千里の奴を呼び出してみるか…」
千里
「お呼びですか…」
沙彦
「そなた…
  常世への道筋は忘れてしもうたか…」
千里
「この名を得て…
  現世と常世の有様を駆けずりまわって…
   愛しき人の在り処を探しましたが…
    どうにも現世に戻っているらしくて…」
沙彦
「未練なのか…
  輪廻転生なのか…」
千里
「どちらでもあるような…」
沙彦
「そうすると半妖か…」
千里
「かもしれませんね…」
沙彦
「あいつらは簡単に生死の境目を飛び越えるからなあ…
  ってそれを知っているのは大していないんだぞ…
   少なくとも俺の周りではな…」
千里
「全くいないという事でもありませんよ…
  死神や疫病神とかの眷属とか…」
沙彦
「でもそういう奴は基本的に短命になりがちなんだよ…
  他の奴の命を貪って己がものとして私する奴は例外だが…
   もしかして…
    心当たりとかある奴か…」
千里
「首謀者であるかどうかは別にして…
  あなたの御存知の方もきっとそうですよ…
   尤も本人には…
    その自覚は無いようですけど…」
沙彦
「嫌な予感の一つが早速当たってるじゃないか…
  その上…
   本人が無自覚無意識と言うのは…
    催眠の方か憑依の方か…」
千里
「或いはその二重掛け…」
沙彦
「憑依した上で催眠か…
  確かに…
   あの特異体質…
    あいつ以外に…
     これ以上うってつけの奴が思い浮かばない…」
千里
「という事は…
  繋がりを見つけたら…
   その縁を辿るのが容易い気もしますけどね…」
沙彦
「腐っても高野聖だな…」
千里
「今のこの身は…
  腐ると言うよりも…
   朽ちる枯れると言った方が良さそうですね…
    不思議と…
     この化生に身を写しても…
      本性は失われていない様です。」
沙彦
「そなたほどのものが…
  身を落としてまで会いたかった奴の事を知りたくなったぞ…」
千里
「いくら普段悟っているつもりでも…
  恋の淵に落ちるのを避けられなかったと言うか…
   気付いたら落ちた後だったんですよね…
    恥ずかしながら…」

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