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【食】フィンランドの森の恵み1・春

森林大国フィンランドにおいて、木は人々の生活の一部です。寒い冬を乗り切るためには、木を燃やして暖を取ります。硬い堆積岩を加工することは困難なので、南ヨーロッパのように石を加工して家を建てることもできません。物を作るにも木材が必要です。平坦な地のフィンランドでは、林業が今日に至るまで盛んに行われています。

そんなフィンランドでは、春一番に木の新芽が芽吹きます。他の植物が育つまでの間に、フィンランド人が春の緑を食べないことがあるでしょうか。春一番の恵みは、食の形でも享受されているのでした。ただ、ベリーやキノコなどの林産物とは異なり、木の一部を収穫することは、自然享受権という法律の中では許されていないので(木の成長を阻害する可能性があるため)、森の所有者の許可があるときのみ採取することが可能となります。

リンゴンベリーの収穫

では、実際にフィンランドではどのようにして、木を食べるのでしょうか。
まずは、フィンランドの樹種は、日本に比べてとても少ないので、主要な3種を紹介したいと思います。

1.シラカバ Koivu
フィンランドの国樹(Silver Birch, Betula pendula)でもあるシラカバは、フィンランドを代表する樹種の一つですね。フィンランドのどこにいてもだいたいシラカバが生えています。最北で育つ樹種も、背の低いシラカバの一種です。ちなみに、私は、北海道で見たシラカバの木にひとめぼれして森林を好きになりました。実は、春の芽吹きの前から、シラカバを食する方法があります。雪が溶けてから、芽が出るまでの間にシラカバの樹液を集めます。私は飲んだことはありませんが、水の様に透明な液体で、ほのかに甘いそうです。

シラカバの木

また、柔らかな新しい葉は、サラダとして食べることができます。葉が育つにつれて、硬く、苦くなるので春先の柔らかな芽を利用します。また、木材以外にも、シラカバの枝はブラシとして使われたり、サウナで体をはたくのに使われるヴィヒタとよばれる束、樹皮は靴を作ったり、カバンや容器を作るのにも、またキシリトールの原料としても使われてきました。

シラカバの若葉とドイツトウヒの新芽入りのサラダ

2.ドイツトウヒ
日本では目にすること機会は少ないですが、英語ではスプルースと呼ばれてヨーロッパ中で広く親しまれている樹種の一つでしょう。シラカバと同様に、フィンランドを代表する樹の一つでしょう。フィンランドでは、この木を毎年切ってきて、クリスマスツリーにしています。なのでドイツトウヒは一年中葉をつけている常緑樹の一つですが、春先の新芽は、鮮やかな黄緑色をしています。その新芽(Kerukka)をバケツいっぱいに摘んできます。たっぷりの砂糖とシロップを作ったり、ジュースにしたりします。また、シラカバの新芽のようにサラダに入れることも可能です。レモンのような酸味とほのかな苦みがとてもさわやかです。

3.マツ
フィンランドでは、日本のような黒松ではなく、どちらかと言えばアカマツに近いマツが生えています。こちらも、上の二種と同様に、フィンランドを代表する樹の一つです。
硬いマツの葉を直接食べるレシピには、まだ出会ったことが無いのですが、私のWWOOF先では、マツの葉をつけた油を作っていました。マツの葉とフィンランドで育つ菜種の油をミキサーで攪拌して、漉すだけというとてもシンプルなものでした。パンやサラダにかけて食べると、驚くほどにさわやかな香りが口中に広がり、とても見事な味わいでした。フィンランドに来てから、ホストファミリーの影響えオリーブオイルの大ファンになったのですが、残念ながらフィンランドでオリーブが育つことはありません。なので、輸入品を買わざるを得なかったのですが、この油は、自分の中でオリーブオイルに匹敵するおいしさでした。地元の食材でちゃんと代用が可能であることに開眼した瞬間でした。

サラダとマツオイル

他にもたくさんの利用方法があるかとは思いますが、私が教えてもらった森の恵みの紹介をさせていただきました。

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