土屋グランスペア

恩田さんが去り、土屋君と一緒にいる事が多くなった。正社員以上が参加する会議にも出る事になった。
その中の議題で「男性介護士は訪問介護で使えるのか否か?」という議題が出た。確かに、異性介護がタブー視されていた過去の訪問介護界では、男性介護士は煙たがられていた。特に「性の排泄介助・入浴介助などは女性でないと嫌です」という人や、調理の支援は男性が台所に立つべきでないという理由でNGだったり。

とにかく使いづらいという事だった。その話し合いに参加しているのだから、居心地が悪いったらありゃしない。

なんかアイデアは無いのか!!と社長がイライラしていて、議題だけ書かれたホワイトボードが意見もなく鎮座している。

男性ができる訪問介護の仕事…うーん。
悩んでいると、ある事を思い出した。病院時代の話になるのだが
グ「田中さん今から、ベッドから車いすに移りますよ」
田中「ありがとう。抱えてもらうのは男性のがいいね」
グ「男性のが体格いいですからね」
田中「助かるわぁ…」

そうだ、移動介助とかどうだろうか?力仕事だから女性で良いっていう訳でもない。行けるんじゃないか?だけど、笑われたらどうしよう…
社長に「何寝ぼけたこと言ってんだよ」と言われたら。なかなか声が出せない。一番末席の人間が言っても良いのか?

社長「ないのか、だれか?」
ええええい言っちまえ!!

「社長!移動介助や移乗介助の仕事ってないんでしょうか?」

言ってしまった…静寂が流れる。社長も「ん?」という顔をしている。
やっぱりダメか…そう思った時だった。ケアマネの洋子さんが「確かにねぇ。そりゃ男性じゃないとだめだわ。通院の時とか、デイサービスの送り出しとか。エレベーターのない家の方もいるし。」社長も「お前にしては良い意見じゃないか。」
褒められたぜ。やったぜ。しかも、良い事は連鎖する。
なんと、ケアマネジャー向けに事業所が特色を紹介するイベントが、近く開催されるんだそうだ。そこに移動・移乗介助をアピールしてみようという話になった。

そのプレゼンを、土屋君と私でやることになった。初めてチャンスが巡ってきた。
プレゼンまであと14日

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