欺瞞の世界で生き抜け!『アメリカン・ハッスル』が映す混沌の70年代
ムララボです。
お読みいただきありがとう存じます。
70年代、私はとても自由な時間を生きていました。子供でしたから。
映画『アメリカン・ハッスル』は、1970年代のアメリカという特異な時代背景を映し出した、極上のエンターテイメントです。タイトルにある「ハッスル(Hustle)」は、この時代における「詐欺」や「騙し」の象徴。アメリカが経済的に不安定で、政治的な腐敗が横行していた時代。多くの人々が一攫千金を狙い、手段を選ばず成功を追い求めた、その混乱期を舞台にしています。
まず目を引くのは、物語のスリリングな展開。詐欺師アーヴィンとパートナーのシドニーがFBI捜査官リッチーに捕まり、裏社会の大物や政治家を巻き込んだ壮大な詐欺計画に強制的に加担させられる。そこにさらに、アーヴィンの不安定で予測不能な妻ロザリンが絡むことで、計画はどんどん混沌としていきます。誰が本当の味方なのか、どこまでが真実なのか、観る者は最後まで気を抜けません!
この作品の魅力の一つは、1970年代のアメリカを忠実に再現した映像美です。ベトナム戦争が終結し、ウォーターゲート事件が国民に不信感をもたらした後の社会は、腐敗と野望が交差していました。映画に登場するゴージャスなファッションや豪奢なパーティーシーンは、そんな時代の「見せかけの華やかさ」を象徴しています。アーヴィンたち詐欺師は、この時代特有の混乱をうまく利用し、巧妙な手口で成り上がろうとします。この「ハッスル」精神こそ、当時のアメリカそのものかもしれません。
キャラクターたちの演技も、この時代背景を際立たせています。特にアーヴィン役のクリスチャン・ベールの変貌ぶりには驚かされます。ぽっこりとしたお腹、薄くなった頭髪、しかし目の奥には鋭い知恵と野望が光っている。彼はまさに「詐欺師そのもの」。一方で、ジェニファー・ローレンス演じるロザリンは、1970年代のアメリカを象徴するような不安定さと大胆さを持つ女性。彼女の無鉄砲な言動が、物語にさらなる緊張感と予測不可能な展開をもたらします。
音楽もこの映画の魅力をさらに引き立てています。1970年代はディスコミュージックやロックが全盛期で、この映画のサウンドトラックには当時の名曲がふんだんに使われています。ディスコでのダンスシーンや、スリリングな場面で流れる音楽が、登場人物たちの感情や時代の空気を見事に表現しています。音楽そのものが、キャラクターたちの「ハッスル」に寄り添い、彼らの騙し合いのドラマを彩っています。
この作品で最も心に残るのは、「真実とは何か?」という問いかけです。登場人物たちは皆、何かしらの嘘や仮面を被って生きている。それは詐欺という職業だけでなく、彼らの人間関係、社会の中でも同じ。1970年代のアメリカは、経済不安や政治スキャンダルが多発した時代で、人々は誰を信じ、何を信じるべきかを見失っていた。映画は、その「虚偽」と「真実」の曖昧さをリアルに映し出し、現代にも通じるテーマを投げかけています。
『アメリカン・ハッスル』は、単なる詐欺劇の枠を超え、人間の欲望や欺瞞を描き出した深い作品。まだ観ていない方は、ぜひこの70年代の詐欺師たちのハッスルに注目し、騙し合いのゲームを楽しんでください!
そう、そしてこの映画は実話だそうです。
騙されないように!
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