死の淵で見えたもの
数メートル吹っ飛ばされ、アスファルトに叩きつけられた。全身がばらばらになったような衝撃と激しい痛み。冷たい身体から生温かいものが流れ出しているのがわかる。とても寒い。指一本動かすことが出来ない。空には星がみえたが数秒で見えなくなった。真っ暗な中、かすかに何か聞こえるような気がしたが自分の意識が遠のいていき、何もわからなくなった。
自分は灰色の空間にいた。若くて溌溂とした女の子が見えた。外国の風景が見えた。
次に見えたのは小さい子供を公園に連れて行ったり、ごはんを食べさせたり寝かしつけたりしている女性が見えた。
毎日忙しく、疲労困憊になっている姿。顔色が悪い。
離婚して、一人で子育て、家事、仕事をこなし、たくましく生きている女性の姿。日々、公私ともにトラブル続きで、睡眠不足。余裕のない毎日。
そうか、これは、かつての自分なんだとやっと気がついた。ずいぶんと頑張って生きていたんだなぁと感心した。
子供が病気になった時は心細く不安で仕方がなかった。自分は病気になれないと毎日気を張っていた。仕事が終わるとダッシュで帰宅した。
休みの日は親子二人でのんびり夕焼けを見ながら歩いたことがとても印象に残っている。他にも思い出はたくさんあるのに。キャンプ、遊園地、動物園、水族、、、。なぜだろう。
焼けるような夕焼け、ピンク色の夕焼け、柔らかい光の夕焼け。
私達は幸せだった、二人だけでも。
まぶしい夕焼けだなぁと少しずつ目を開けた。
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