見出し画像

ある男の日常

たばこ屋さんの前を通ると朝の陽射しの中でねこが気持ちよさそうに寝ていた。思わずにっこりしてしまう。ねこは好きだ。飼いたいと思うが一人暮らしの自分が突然死したらかわいそうだなと思うから飼わない。            これから自分は仕事に行く。病院で清掃の仕事をしている。外の掃除、玄関、一階のロビー、病室や廊下を掃除する。大きい病院だから外の落ち葉の掃除だけでも時間がかかるし病室も多いし掃除をするところはたくさんあるので手分けして仕事をする。黙々とやる仕事は自分に合っている。きれいにするのは気持ちがいいしありがとうと言われる仕事は嬉しい。                       仕事が終わると毎日ではないが銭湯に行く。何年も通っているので、顔なじみもいて、世間話をしたりと、自分にとって仕事以外の大事なコミュニティになっている。今日は土日は大行列する新しくできたラーメン屋さんの話を聞いた。       晩ご飯は自分で作るときもあるが、お総菜を買って帰ることが多い。好きなお総菜と好きな発泡酒かビール。これだけで幸せだ。                自分にはこれといった能力も趣味もない。家族もいない。孤独で自由で気楽な毎日だ。              テレビをぼんやり見ていたら眠くなってきた。もしかしたら、この人生は、あのたばこ屋さんのねこの夢なんじゃないか、なんてばかなことを考える。        

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?