順番を守らないアイツ
Nは予備校で知り合った。
お互い学校が合わず、ひねくれていた。
Nは3つ年上だった。
10代の3つは、大人びて見える。
Nは難病だと知ったのは、知り合ってからしばらくしてからだ。
人生に明日が無いかもしれない恐怖と戦っている素振りは
当時は無かった。
「おい、パチンコやったことあるか?」
ふいに聞かれた。
15歳だった私には、そんな経験はなかった。
まるで保護者「兄」のように、連れていかれた。
まったく、わからない世界だが、世の中を斜に構えて
見ていた私には、大人びた世界を背伸びしてみた気がした。
予備校はその場限りの空間。
志望校に行けても、そうでなくても、
自分自身との折り合いがついたら卒業。
儀礼や儀式は無い。
Nと合わなくなって10年くらい経った。
ふいに、Nから当時もらった英単語帳が出てきた。
「あいつ元気にしているだろうか」
手紙を書くことにした。
電話では「お前誰?」と言われては、恥ずかしい。
手紙を出して2週間ほどして、電話が鳴った。
Nの母親からだった。
「Nの母です。お手紙ありがとう。
実は、息子は先月亡くなりました。
あなたには、難病だったこと、伝えてあったんですね。
予備校にはいったものの希望はかなわず、
福祉の学校に通って、世の中に役に立つようにと・・
でも、病気は進行してしまって、、、
あなたには、知らせたかったのね・・・」
私は、言葉が無く、しばらく無言だったが
「あいつ、生きたかったはずです。
おれは、あいつの分まで頑張ります。
でも、いつかあっちの世界に行ったら、
年上だからと言って、親より先に行くなよ
て言ってやります。」
Nの母は「頑張ってね」
と言い終わり、電話は切れた。
Nの分まで頑張ると俺は言った。
いま、できているだろうか?
Nが、どこかで見ている気がしてならない。
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