泥の海を渡る㉚

もう何十年来の幼馴染からじっと見つめられて言われた。

「あのさ、
今まで生きてきて
いろんな事があったと思う。
学校を卒業して
1社会人になって
結婚して
母親になって。

無理に笑うな、とも言わない。
ただ
気になったことでさ、
ここ最近
好きになった事、者、事象、本、言葉、あった?」

はっとした私。

この2年間半、
ずっと泥の海を見ていた。
生きていく度に
辛くなる毎日。
どんどん冷たくなっていく海。
息が出来なくなる海。

でも
そんな中にも
気になること
良いなって思う瞬間がある。

「本当に最後にするなら、毎日、それを書きなよ」
それだけ話して彼女は帰路へ着いた。

ふと思い出した。

今朝は
寒かった。

炊飯器を開けて
昨日の炊き込みご飯を覗き込んだ。
ふわっと。
私の体が
気になった。

どこからくるんだろう。
美味しそうな匂い。
新米の薫り。
温かさ。
心地よく揺れる湯気。
きのこ、油揚げも多めに入れて。

この気持ち。
幸せだった。
おにぎりにして今日の昼食にしよう。

海を渡る前にこの
気になる気持ち。
良いなと思った気持ち。

私は
「私の共感を共感してもらいたい」とは思いません。

ただ
記憶の一コマに。
目に触れてくれた方々の
気になった、で十分です。

時折、綴らせて下さい。

美容も書いてみようかな。

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