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こどものための本 感想

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こどものために書かれた本を読んでいきます。
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#ローズマリ・サトクリフ

ローズマリー・サトクリフ 『夜明けの風』

僕にとってのストーリー:ひたむきさ。とにかくひたむきに生きる。世の中は変わる、盛者必衰。黒が白になるような大きな変化の中、他者のためにオウェインは生きる。自己犠牲。100%、何かの集団に所属することはできない。 『ともしびをかかげて』の続編。本当に素晴らしい。児童文学と呼ばれるサトクリフの本ですが、大人が読んでこそ感動するのではないかと思います。 主人公のオウェインは、ケルトの王の若き戦士。14のとき戦場ですべてを失った。それからは、運命に翻弄されながら、常に他者のために

ローズマリ・サトクリフ 『第九軍団のワシ』

僕にとっての本作: マーカスは大怪我を負う。父の消息。消えた「ワシ」。友との冒険。 才ある軍人だったマーカスは、戦いで負傷し、名誉除隊。みながその自己犠牲的精神をたたえたが、彼には生きがいが必要だった。 軍神となる夢をたたれたのち、彼の心に沈んでいたひとつの望みが、オルタナティブなものとして浮上する。夢を絶たれたからこそ、この望みにこだわる。それは父の「ワシ」の捜索。 心優しき叔父。そして闘技場で出会った奴隷のエスカ。エスカは、マーカスの友となり、ワシをさがす仲間に。他

ローズマリー・サトクリフ 『ケルトの白馬』

僕にとってのこの本: 族長の息子。運命、自己犠牲。ルブリンが描く白馬。 サトクリフの作品が本当にすばらしいなと、いつどの作品を読んでも心に響きます。とても歴史を感じます。 何冊か読んでみるとわかることがあるのですが、彼女の作品にはいつも、「運命」、「歴史」、「使命」、「挑戦」、「生きる」、そんなテーマが根底にあるような気がしています。 ときに「共存」や「共生」のような表現もあったりしますが、この描き方が誠実でよいのですね。他者と生きる様子が、べたべたしない。昨今のSDGs

ローズマリ・サトクリフ 『ともしびをかかげて』(上下)

僕にとっての作品:運命は過酷。アクイラはローマの教養を身につけたブリテン島の若きケルト系軍団長。4世紀、衰退を迎えたローマ。サクソン人の侵入に対し、アクイラは任務であるローマの防衛よりも、本能で「故郷」を選ぶ。運命は過酷。教養と文化を離れ、本能と本能がぶつかりあう歴史の中へ。生き抜く。故郷と家族は、同義。 素晴らしい歴史小説でした。サトクリフ氏は児童文学作家として知られ、この本も中学生向けだそうです。しかし、そういったことはどうでもよいほど感動的。大人もこどもも読んで得られ