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ドラマ感想『フェンス』WOWOWオリジナルドラマ

*この文章は2023年6月にAmebloで投稿したものを加筆修正しています

WOWOWドラマ『フェンス』。

例えば、日経電子版で、気になったニュースほど、Think!を誰も書いていなかったりする。
このドラマは、そういう記事をスクロールして、たぶん誰もコメントしてないよね、って思ったら1人だけガッツリ書いてる人いた!!って感じに近い。

4月の放送開始直後に見た。

WOWOWの新しいドラマは、オンデマンドだと、当月分はTV放送より早く見られる。

だからオンデマンドで配信が始まったらさっそく見られる分を全部見るわけだが、それでも次が待ち遠しい、と強烈に思ったドラマだ。

沖縄の米軍基地問題、性暴力、差別など序盤から盛りだくさん。
すべてがキレイに回収というか答えが出るわけではないが(それが可能な話でもないし)、後半まで緊迫感のある展開だった。

それだけに、犯人が他にもいる、という展開になったあと、「意外で身近な犯人」というラストは、正直に言えば残念だった。

途端に、ありがちなサスペンスドラマ展開になってしまった、という気持ち。

もっとも、それならば、どうすれば良かったのかと考えると、他に落とし所が無いようにも思える。

ラストはともかく、これをドラマにできたこと自体、すごいのではないか、と思いながら毎回見ていた。
いまこのタイミングで、このドラマが作られて放送された、ということが嬉しい。

規格外の爆発力と存在感を持つ松岡茉優の、第二話ラストでの「…女なんだよ…」のセリフは、このひとだから出る、業(ごう)や凄味。

キー(松岡茉優)の、なんとも言えない、割れた鏡の破片みたいな雰囲気と、揺れながら強くなり弱くなり静かに燃える炎のような桜(宮本エリアナ)の違いもいい。

地元警官の伊佐役は青木崇高。この配役も良かった。
殺人分析班シリーズよりも、こっちの役のほうが合っている気がした。

伊佐(青木)の、素直で人柄は悪くないのに残念な無自覚さで人を傷つけてしまう、相手を苛立たせる、そういう部分が見事にハマっていた。

キー(松岡茉優)に呆れられ、キレられて戸惑いながらも、次第に諦めをやめて伊佐は事件に向き合い、犯人逮捕に猛進する。

米軍の上官と交渉するシーンも良かった。
見る側が、これまでの伊佐にモヤモヤいらいらさせられたのは、このシーンのためだったのか!?と感じてしまうくらいだった。

ひとつの事件を解明しようとする警官としての言葉に、沖縄に住む者としての思いが滲む。
長い英語のセリフも含めて、かっこよくなりすぎないのがまたリアル。

『フェンス』というタイトルもいい。

目に見えるもの、見えないもの、さまざまな「フェンス」。

沖縄だけの話ではなく、多くの人がさまざまなフェンスにぶつかって右往左往、溜息ついて、泣いたり、苛立って、それでもどうにか生きている。
結局、そのフェンスは、自分たち人間が作っている。自分も無自覚に、誰かをフェンスで隔てて、向こうへ押しやっていないか。
見てから2ヶ月経っても、このドラマを思い出すと、考え込んでしまう。

本編と別の、スペシャルインタビューもすごく良かった。

宮本エリアナのキュートさに仰天する。海外映画のDVDを買ったとき、特典映像の俳優インタビューを見ると、本編とまるで雰囲気が違うけど超かわいいカッコいいみたいなことがある。まさにあれ。

あんまり、裏話的なのは幻想が壊れるから好きではないのだけど、『フェンス』に関しては、自分が感じたことの振り返りと、インタビューを踏まえて本編をもう一度見る、という楽しみ方ができた。


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