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映画感想『ゴジラ-1.0』

*この文章は2023.11.5にAmebloで投稿したものを加筆修正しています
*ネタバレがあります

チケット代以上の価値がある、と思った。
この映画、好きだなぁ。
2時間5分あると、見終わってから知って驚いた。
そんな長さを全然感じなかった。

これが本当に、神木隆之介?

冒頭の、戦闘機が島に着陸するシーンで、もう心がザワザワした。
色調、音、アングル。
不穏で、恐ろしいのに、見ずにいられない感じ。

特攻隊員の敷島(神木隆之介)の、顔に濃い翳が落ちた鬱々とした表情。
こんな、絵のような悲壮感、実写で出せるなんてと驚く。

敷島(神木)が戦闘機の整備を待って泊まった島が、夜中にゴジラに襲われる。

戦って死ねと言われたって、誰も彼もが、腹をくくれるわけじゃない。
きみみたいな人間がいたっていいんだ、そんなふうに思い遣ってくれた人が、ゴジラによって無惨に殺されていく恐怖。

時間は「戦後」でも、なお続く「戦争」

敷島(神木隆之介)が復員してからは、話は戦後に移るが、セリフや場面の端々が、観る側に、戦争がどんなものだったか考えさせる。
戦後間もないという設定ながら、ゴジラという存在を借りた戦争映画なのではないか、という気持ちにさえなる。

突然に現れる、圧倒的な存在。
目的も理由も分からない。
敵うと思えない絶望的な相手との戦いに、騙し討ちのように放り込まれる人々。

上陸したゴジラの熱線、
爆風で吹き飛んで動くものが1つも失くなる街、
ゴジラの向こうのきのこ雲。
いっそ狂えたらいいのに、そうなれない敷島の咆哮に落ちる黒い雨。

怖いゴジラ。暗に描かれる、怖い現実

ゴジラのアングルがとにかく怖い。

特に怖いのが、ゴジラを見上げる角度。

巨大怪獣ものは、上半身なさそうな脚だったり、背中だったり、撮る側の都合みたいなものを感じることがあるのだが、今回それがなかった。

こんな怖いシーンを想像して作れる人々って、
普段ちゃんと眠れるんだろうか? 悪夢ばっかり見てるのか? 周りがどんなふうに見えてるんだろう? とお節介な心配をしてしまうくらい怖い。

グロいのとは違う。
音でびっくりするのとも違う。
間合いというか距離感というか、そういうものがとにかく絶妙に怖い。

そういうゴジラに立ち向かう敷島も、終盤まで戦争の重荷に喘いで、死に場所を求める荒んだ空気を持ったままなので、全体として暗い。

その中で、山田裕貴の笑顔がもたらす癒しと希望が唯一まばゆい。

おや…?と思う箇所がないわけではない。

学者(吉岡秀隆)が、早ければ十日ほどでゴジラが再び来るのでは、と言ってる中で、敷島は戦闘機の整備士にこだわって譲らないとか。

最後の攻撃も、それで行けるんだ…、って正直思ったり。

それでも、今このタイミングで、何故このゴジラなのか、ということを考えつつ、もう一度観ようかな、と思う。

*タイトル画像は、西武園ゆうえんちで入手できる「夕日の丘新聞」です。映画の内容とは関係がありません。

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