見出し画像

読書感想『死刑について』平野啓一郎

*タイトル画像は、亡くなった祖父の本棚。

平野啓一郎が死刑制度反対の立場を明言するまでの過程や、死刑制度を持ち続ける我が国のリスクなどを書いている。

小説についても、平野啓一郎がどのような心境でそれぞれの作品を書いたのか触れられているので、各作品を読む事前知識として良さそうだ。

とにかく文章が読みやすく、分かりやすい。

『死刑について』も、死刑制度の知識ゼロどころかマイナスというわたしにも読める。
家族や友人には話しにくく、ひとりで考えるにはとっかかりが掴みにくい問題を、落ち着いたトーンで整理して語りかける。

人が、他の誰かの死を決めることの是非。

それは、わたしがドストエフスキー『白痴』を原作とする映画『ナスターシャ』(主演:坂東玉三郎)を初めて見た、約20年前から、心に引っかかり続けていたこと。

死刑制度に、反対だなと感じる自分を、後ろめたく思わなくていい。
そう感じられて、とてもすっきりした。

死刑制度を残すことは、
理由があれば、誰かの命を奪ってもいい、という選択を持ち続けること。

その歪さに気づくことは、被害者や遺族の悲しみ怒りに寄り添うことと、反しないのだという展開は、とても希望が持てたし分かりやすかった。

死刑の話から逸れてしまうが、
平野啓一郎に興味を持ったのは、WOWOWで放送していた『三島由紀夫VS東大全共闘』を見たから。

記録映像のあいまに挟まれる、三島由紀夫の考えの解説、作品特徴の説明が本当にわかりやすかった。
それで「100分de名著」の三島由紀夫『金閣寺』解説を読んでみたらまた素晴らしく読みやすくて、他にも読んでみようと探して見つけたのが『死刑について』だった。

そんなわけで、平野啓一郎の文章、わたしはたぶん好きなのだけど、小説『日蝕』は、読み始めの数ページで躓いたまま、進んでいない…。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?