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映画感想『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

*この文章は2023年11月にAmebloで投稿したものを加筆修正しています
*ネタバレを含みます

水木しげる生誕100年記念作品。
鬼太郎は好きだ。
深大寺の鬼太郎茶屋にも大昔、行ったことがある。

映画はPG12なので一人で観ようと思ったのだが、ムスメがどうしても行くというので一緒に鑑賞。

旧家にまつわる謎と伝説

『犬神家の一族』(映画版)と『八つ墓村』、『獄門島』に、京極夏彦をちょっと足して、お馴染みの妖怪とのバトル展開、という感じ。

地方の有力者、水辺の洋館、目を隠すほどの白い眉毛の翁。

戦中戦後の黒い噂、開封される遺言書と後継者の死、美しいがクセのある娘たち、親族の奇行。

座敷牢、地下道。

ここまできたら加藤武と大滝秀治が出てこないのが寂しいくらい、金田一耕助シリーズの香りがする。

南方から復員した水木は、血液銀行に勤めている。
財界の大物の龍賀家当主が死んだと知り、後継者候補の龍賀克典のご機嫌伺いに、水木は龍賀家に駆けつける。

昭和31年の列車内のゴミや喫煙といった描写も良いが、水木が龍賀サヨと出会うシーンは、素晴らしい画だった。

道の家々に咲く花の色使いがリアルで、懐かしさに声が出そうになる。

写実的という意味ではない。

花の取り合わせ、色、ひと叢ひと叢のバランスが、子どもの頃に帰省のたび目にした光景そのままだった。
(ワタシが見ていた光景は昭和50年代だが、激しい過疎地だったので、おそらく映画の舞台設定とさして景色は変わらなかったろう)

このシーンの絵を観るためにもう一度行ってもいいかなとさえ思う。

鬼太郎シリーズらしいバトルと、切なさ

いろんな意味で「どっかで見たことある」感じが続くので全体は観やすいのだが、鬼太郎の父の声には、もう少し風情が欲しい。

水木の、野心はあるのに、肝が据わっているというよりどこか冷めた空気がとても良いし、サヨに漂う奇妙な感じも良い。
それだけに、飄々、というより浮いてるように感じる鬼太郎父の声が残念。

妖怪と幽霊族のバトルは、近年のアニメ映画の凄さを考えると新しさはないけれど、時代設定や『鬼太郎』の世界観を考えれば、ちょうど良いのだと思う。

音に敏感なムスメが、ビビらずに観ていたので、音の大きさやタイミングに頼らない作りに好感が持てる。(音楽は川井憲次)

エンドロールは「墓場鬼太郎」の世界

エンドロールに流れる墓場鬼太郎の絵で、漫画を読んだ子どもの頃の感覚を思い出す。

そう、ワタシが憶えているのはこれだよ、
水木に、カエルの目玉の料理をふるまうんだ、
と隣のムスメに言いたくなった。

この映画には、砂かけ婆も、子泣き爺も、一反もめんも出てこない。

そういう点で、テレビシリーズの鬼太郎っぽさは無いのだが、
水木しげる生誕100年記念作品として、
鬼太郎ではなく父親と水木のストーリーというのは、さすがだ。

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