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映画感想 『燃えよ剣』2021年公開

*この文章は2023年7月にAmebloに投稿したものを加筆修正しています

原田眞人監督作品。

岡田准一の殺陣の美しさに圧倒される。斬り合いのところだけ何度も見てしまった。

キャストが興味深い

長らく、新選組を題材にしたドラマや映画でワタシのお気に入り配役はBSテレ東の『壬生義士伝』だった。
ついに、そこに並ぶ凄いキャスティングの作品があらわれた、という感じ。

主な配役。
土方歳三:岡田准一
お雪:柴咲コウ
近藤勇:鈴木亮平
沖田総司:山田涼介
芹沢鴨:伊藤英明
清河八郎:高嶋政宏
斎藤一:松下洸平
岡田以蔵:村上虹郎
山崎丞:村本大輔
松平容保:二代目 尾上右近
徳川慶喜:山田裕貴

岡田准一の相手に柴咲コウって。美貌の最高峰を2人も出してくるとは。

落ち着いた展開に、濃いキャラクタが絡み合う

特定の人々を極端にカッコよく描いたりもしないし、奇抜さを狙った風はないのだが、配役が独特なので全体に濃い。

鈴木亮平の近藤勇は、白塗りして写真を撮るくだり、笑ってしまった。
さすが、めちゃくちゃ寄せてくる。

伊藤英明の芹沢鴨、豪快でちょっと面倒な雰囲気がよく出ている。
重々しいのとは違う、生々しい重量感がある。
殺されるシーンで生き生きする、って書いたらすごく変な感じだけれども…他に表現が見つからない。

山田涼介が沖田総司。
この映画での沖田総司の描かれ方は良くも悪くも、型通り。
だから他の沖田総司と差が出しにくい難しさがあると思うけれど、この人の持つ「弟っぽさ」は武器で、他にない総司になっている。

監察方の山崎丞(村本大輔)の配役にびっくり。
凄まじい早口。動かない視線。
怖い、と面白い、どっちに比重をかけて笑ったらいいか迷う。
ほとんど笑いのないストーリー展開の中で、彼の登場シーンが少し気持ちを弛めてくれる。
山崎丞って、無口な偵察担当がイメージなのに、いつの間にか見る側が納得させられちゃう、面白い配役。

この映画の徳川慶喜(山田裕貴)が、ワタシが今まで見たことのない描かれ方をしている。
この人がやったから結果的にこうなったのか、元々そういう想定の役だったのか、とにかく危険人物。

慶喜と対照的に、超いい感じに描かれているのが松平容保。
尾上右近、品よくスケールもあり、突き抜けるような清々しさ。
突然降りかかる、お家の一大事に苦悩しつつも、状況が悪くなっていく後半こそ、堂々と輝きを増す目が美しい。

土の匂いのある土方歳三

岡田准一の土方歳三は、身体の動きが素晴らしい。
岡田准一って笑いの間合いも最高だけど(『ファブル』シリーズとか)、笑いがなくても凄くいい。

『燃えよ剣』は、笑いの要素がほとんど無い。
土方歳三は男前で、頭が良くて、野心もある。しかも強い。
そういう土方を、やっぱり全方向に嫌味なぐらい凄い岡田准一がストイックさ全開で見せてくる。

かっこいいだけじゃなく、「初夏は草むらという草むらがマムシ臭くなる」、と語りにあるとおり、多摩の土の匂いを最後まで失わない、キレイすぎない土方なのがまたいい。

劇場で見ればよかった。近所で再上映してほしい。


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