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比叡山を越えたり、保津川を下ったりと【旅行記】

 何度目の京都だろうか。思い返して数える気にもならず、階段を下りて乗り換える。出町柳駅まで行き、駅周辺を一瞥して叡山電鉄に乗り込む。ケーブルカー、ロープウェイと乗り継いで山頂へ。ケーブルカーの急勾配には驚いた。今日は40度近くまで気温が上がるというが、ここまで来ると街中よりは涼しい。下車してすぐのガーデンに入園する。

京都市街を眺める
琵琶湖方面を望む

 眺めが良い。山から西を望めば京都市街が眼下に広がる。東を見れば琵琶湖そして沿岸の町が一望できる。バスに乗って、横川、西塔、東塔と奥から順番に見ていく。とにかく広い。歩くと横川から東塔まで2時間かかるという。そして開けているところでは眺めが良い。横川と西塔は静かな雰囲気、東塔は根本中堂などのある中心部のため観光客も多い。ここで名だたる名僧たちが修行した、その地にいると思うと感慨深い。じっくりと見て回り、夕刻になったところで坂本ケーブルで滋賀県側へ降りる。

比叡山横川にて

 途中駅もある長いケーブルカーである。バスに乗って比叡山坂本駅まで向かい、湖西線に乗る。京都まであっという間、遥々越えてきた県境も鉄道を使えば一瞬である。それでも一度通ってみたいルート、一日かけて見学したい比叡山であった。

 2日目は嵯峨野線で亀岡を目指す。20分ぐらいであろうか。降りると綺麗なサッカー場がある。その横を通り、保津川下りの出発地点に着く。大きな事務所でチケットと飲み物を買い、程なくして乗船場に行くよう案内される。ここから嵐山まで2時間弱の船旅である。
 

乗船地点から夏の空

夏は水量が少なく、時間がかかるという。また迫力にも欠けるところがあるとのことである。出発後、しばらくは流れの緩やかなところを進む。流れの速いところ、緩やかなところを繰り返して川を下っていく。船頭さんたちの軽妙なトークと熟練した技術で船は進んでいく。しかし、この暑さの中のこの労働はいかにも大変そうである。
 進んでいくとトロッコ列車の走る山陰本線の旧線と並走するところもある。ここは三島由紀夫の『金閣寺』で山陰線の車窓を描写した場所である。文字から水墨画のような景色がありありと浮かぶ私の好きな一節だ。その場所に季節は違えど来ていると思うと感慨深い。保津峡と呼ばれる一帯は見事に谷であり、両脇を山に阻まれて何も見通せない。深山幽谷にいるようである。
 

船内から

2時間弱の船旅も飽きることなく、終着の渡月橋前にて下船する。驚いたのは30人弱乗っている観光客のうち日本人は6人で他は海外からの人たちであった。
 渡月橋周辺、嵐山は人混みでごった返している。鴨川沿いの景色も好きだが、この桂川沿いの景色も甲乙つけがたい。
 

渡月橋にて

 適当に昼食を済ませ、大人気の竹林を抜け、常寂光寺に入る。ここまで来ると観光客もまばらで京都の郊外らしい景色が広がる。苔むした境内は美しく、夏の陽に緑が映える。登っていくと塔の近くに見通しのきく展望台のような場所があり、ここからも京都市街を望む。昨日は東から、今日は西からと京の町を眺める。ゆっくりと木陰で風を受けて物思いにでも耽りたいところだが、如何せん暑すぎる。
 

常寂光寺にて塔の後ろに京都市街を望む

 一回りしてお寺を後にするとカフェに転がり込む。スイーツを頼み、しばしの小休止。日曜の午後だが、この辺りの店は入れないということはない。ゆっくりと味わい、嵯峨嵐山駅まで歩いて、京都駅。いつものように晩御飯用の駅弁を調達して新幹線に乗る。次来るのはいつだろうか。そう遠くないであろう。京都及びその周辺は魅力的な場所が多すぎる。その思いを胸に超特急は東へ駆ける。まだ陽の高い夏は帰りの車窓も楽しめる。
 嵐山に嵯峨、かつて貴族が都を離れて休息を楽しんだ地に今では電車で20~30分もあれば行ける。そして今でもここは京都か、と思えるぐらいに静かであったり自然が豊かである。以前行った大原や岩倉、貴船・鞍馬もそうであった。これがまた他の地にはない京都の魅力なのだと私は思う。

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