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【一般TCG理論】テイカーは本当に許されないのか?
今回の一般TCG理論はコミュニティにおけるテイカーについてです。
チームからテイカーを排除したい、それはTCGに限らず多くのチームが考えることです。
それほどまでにテイカーが忌み嫌われるのは何故なのか?本当にテイカーは許されざる存在なのか?
いま一度考えてみましょう。
1. テイカーは本当に害があるか
テイカーとは、コミュニティに対して特に発言や情報の提供をせず、ただコミュニティ内の知見を利用するだけの存在です。
コミュニティの人たちが苦労して蓄えた知見を横から盗む行為に等しく、百害あって一利なしの存在と捉えられています。
なにも提供しないので利がないのは明らかですが、本当に害があるでしょうか?
たった一個人に知見を盗まれたとて、大会で当たる確率は非常に低いです。
もちろん他のコミュニティに拡散されてしまうと情報優位性が失われるというリスクはありますが、そもそもテイカーになるような人間が他のコミュニティで突然ギバーに回る可能性は低いですし、よっぽど有力チームの知見でなければ共有されても大きく広まる可能性は低いでしょう。
もちろん排除できるなら排除したいものですが、そこまで忌み嫌われるほどの害はないはずです。
良くも悪くもただ見ているだけの存在、それがテイカーです。
では、なぜ我々はテイカーを忌み嫌うのでしょうか?
2. 人は罰を欲して損失を嫌う
2-1. 公共財ゲーム
人間はそもそも利己的な行動を嫌う性質があります。
その例として公共財ゲームという心理実験を紹介します。
4人にそれぞれ100円が配られる。
100円の中から任意の値を公共財として差し出すかを決定する。
最終的に公共財を0.4倍した値が4人全員に分配される。
このようなゲームがあったとき、どうなるでしょうか?
個人の最大利益としては何も支払わないことです。自分は支払わず、ただ公共財をもらうほうが常に周りよりも資産が多くなっていきます。まさにテイカーのことですね。そのため、このゲームを繰り返すと殆どの場合で個人の最大利益を求め、全員の支払い額が減っていく傾向にあります。全員で支払うことを選び続ければコミュニティの保持する金額は最大になるはずが、個人の利益を追求することでコミュニティは不利益を被るのです。
ここで、さらに以下のルールを追加します。
誰かが10円の罰金請求を支払った場合、公共財を支払っていない人は30円の罰金を支払う。
罰金は公共財に追加されない。
このルールを追加するとどうなるでしょうか?
今度はなぜか多くの人が積極的に公共財と罰金請求を支払うようになります。(気になる人は公共財ゲームで検索していただくと検証論文が多く見つかると思います)
罰金請求の支払いは自身にとってはコストでしかなく、支払わないほうが自分の資産は増えます。
一つ前のルールでは自身の利益最大化のために支払わないことを選んだにも関わらず、今度は積極的に人を罰するように人間の心理が働くのです。
つまり、人は自身に損失があったとしても利己的な人間への罰を優先する方向に心理が向きやすいのです。
これはTCGコミュニティにおいても類似の事象が見られます。コミュニティに情報を開示することで、周囲からフィードバックを得られる可能性があるにもかかわらず、その中に利己的な人間(テイカー)がいると共有をやめてしまうのです。これは罰が無い場合のゲームと同じ心理です。そして、そのコミュニティ内でルールを設ける(罰を設定する)ことも珍しくはありません。
まして、調整チームなどでは実際は情報を展開した当事者が最も利益を受け取るはずであり、かつ、テイカーがいたからといって自分の取り分が減るわけではありません。
公共財を支払う側に相当有利な仕様になっているはずですが、それでも発言を控えてしまう人は少なくないのです。
2-2. プロスペクト理論
もうひとつ、テイカーがいるコミュニティに対して消極的になってしまう心理バイアスとして、プロスペクト理論が挙げられます。
プロスペクト理論の説明は以下の記事がわかりやすいので以下の記事を読んでください。
簡単に説明すると、人は利益よりも損失を過大評価してしまうということがプロスペクト理論です。
コミュニティに共有することで得られる利益と、それをテイカーが享受する不利益では基本的に利益のほうがはるかに大きいはずなのに不利益を過大評価してしまうのです。
これらの心理的なバイアスにより、我々はテイカーを忌避してしまうのです。
3. テイカーはなぜ許されないのか?
ここまで、テイカーはもたらす実害よりも過剰に忌み嫌われているという話をしてきました。
もしもコミュニティにいる人間がすべてこれらの心理バイアスを理解しており完全なメンタルコントロールができるのであれば、テイカーの存在は取るに足らない存在であり、無視すればよいだけの話です。
しかし、これらのバイアスを知らない人間もいれば、知っていてもストレスを感じてしまう人間もいます。そういった人間が存在するコミュニティにおいては目に見える以上に多くの不利益がコミュニティに発生してしまいます。
つまり、「我々が許したくないから」テイカーは許されないのです。
結果的にこのバイアスがある以上排除する方向に動くべきなのは間違いないですが、その理由が明確な害があるからではなく「みんなが嫌な気持ちになるから」というのは非常に興味深い点ですね。「ヒト」という生物の社会性を感じさせます。
もしもあなたがいるコミュニティにテイカーがいるのであれば、あなたが管理者でない限りは、可能な限り無視するというのが最も重要なことになります。
管理者であるならば何らかの手を講じる必要があります。公共財ゲームでは「罰の設定」もしくは「報酬の設定」を行うことが多いので調べてみると何か参考になるかもしれません。
4. さいごに
今回はテイカーに対する心理を紹介してみました。
読者の中には必要以上に忌み嫌っていたなあ、と思った方もいるかもしれません。もしこの記事を読んでテイカーによって不快に感じていた心が少し和らいだなら幸いです。
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