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春のような温かさがいつもある学校に… いつのまにか、ここまできたんだね 〜心の宝物119

🌷顔が上がってきたね


山に囲まれた小さな学校
1年生の彼女は内気で優しい人でした。大きな声を出すのはあまり得意ではありません。朝の下足箱でも、校長の「おはよう!」の圧の強さに、目を合わせることもできず、はにかみながら通っていくのが常でした。

しかし、秋深まる頃から、彼女から伝わってくるものが変わりました。

顔を上げ、目を真っ直ぐに見て「おはようございます」と、はっきりした声で、思いの交歓ができるようになりました。
「元気をもらえたよ。ありがとう」そんな言葉に、にっこりと返してくれる笑顔も、ずいぶん頼もしくなりました。

🌷いつのまにか、ここまできたんだね


彼女の一歩を最初に感じたのが、集会のときに行われる、学校の名を冠した体操のときでした。全身をバランスよく鍛えるよう考えられた、様々なスモールアクティビティを、音楽に合わせてリズムよく演じていくものでした。

「サンドバッグ」と名付けられた種目は、腹ばいの体を弓なりにそらせ、両手で両足首をつかみ、笑顔を点に向けるという、背筋の強さと柔軟性の高さを要求されるものです。体の柔らかい小学生であっても、きちんと静止した状態をキープできる子はごく少数。それを見事にこなす子たちの中に、いつの間にか彼女もいました。

運動会当日のそれは、とりわけ見事でした。やや苦しそうながら、それでも充実感が伝わる表情を、晴れた秋空に向けていました。種目のコールで、名前を呼ばれたときの返事は、決して大声ではありませんでしたが、気迫が芯にあり、聞く人の耳にはっきり届く強さがありました。

彼女は彼女の山を登ったのだ。いつの間にかここまできたのだな。

そんな感慨と共に、彼女の活躍を眺めていました。

強い気持ちで、いろいろなことに挑戦しましたね。サンドバッグも、朝の挨拶も、気持ちのこもった返事も、少し恥ずかしがり屋さんの優しいあなたには、きっと山を登るような決心と、心と体の力が必要だったと思います。
他の人には、ひょいとひとまたぎできるような高さが、ある人には、そびえるような高さや険しさに見えることがある。
あなたが歩いてきた、あなたの道の長さと、あなたが登った、あなたの山の高さを誇りに思う。

そんな思いで、お伝えしました。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

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