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春のような温かさがいつもある学校に… ムードメーカーの心遣い 〜心の宝物89

🌷ムードメーカーの心遣い


山に囲まれた小さな学校
 5年生の女子は活動的で外遊びが大好きでした。保育園からほぼ同じメンバーで過ごす小さな学校ですが、いや、むしろそれだけに、人間関係の調整の難しさは、彼女たちの周辺にも忍び寄ります。
 
 何となく、けん制し合うような雰囲気もお互い自覚しながら、それでもよい関係を築きたい。みんなで誘い合って外遊びをする姿には、そんな願いがこもっているようでした。

 彼女はムードメーカーでした。ちゃきちゃきして、明るくはしゃいでいましたが、実は、関係のバランスにとても敏感でした。

🌷「校長先生、いっしょにあそぼ」


 ある日の休み時間、校長室にいると、教頭先生がいらっしゃいました。
 「5年生のAさんが、校長先生にお話があると言っていますがよろしいですか」

 いつも笑顔を絶やされない教頭先生の神妙な表情に、何事かと思いながら招じ入れました。

 少し緊張気味に入室してきた彼女でしたが、次の瞬間、「校長先生、一緒にあそぼ」と言って破顔しました。
 にんまりされる教頭先生の表情に、してやられたと思いつつ、彼女と共に外へ出ました。

 ジャングルジムでは、彼女たちが大好きな「ジャングル鬼ごっこ」が始まっていました。しかし、どことなくぎこちない雰囲気でした。後で聞くと、それをしたい子と、ちがう遊びをしたい子の間で若干の悶着があったそうです。

 「校長先生連れてきたよ!」
 彼女の言葉で、雰囲気が変わりました。

 なるほど、それもあって声をかけてくれたのだ。考えたものだ。
 そう感心しながら、その日からしばらく、彼女たちと全力でジャングル鬼ごっこを楽しみました。

 誘ってくれてありがとう。おかげでみんなと仲良くなれたよ。でも、あなたに伝えたいのは実はそのことじゃない。
 
 人と人との間のつながりは、本当に温かいけれど、ときに難しいね。今日のあなたは、その難しさを何とか解決し、みんなに笑顔を取り戻そうとしたんだね。明るくのんきな笑顔の下で、周りのことをよく見つめ、考え、行動する。そんなあなたを知ることができて嬉しいよ。

 そんな思いでお伝えしました。

 1年後、彼女たちは最上級生となります。お互いの違いをわかり合い、気遣う言葉と「ありがとう」が飛び交う日常は、この頃のぎこちなさが嘘のようでした。チームワークのよい素敵な集団となって、春のような温かさがいつもある学校を実現してくれました。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

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