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春のような温かさがいつもある学校に…「校長先生は、あおおにのような行動ができますか」 〜心の宝物95 追記

Bさんへ

 「ないたあかおに」について話したのがまだ昨日のことのようだけれど、もう3ヶ月以上経ったね。
こんなに間があいてしまいました。あなたに真を示すべき学校の、しかも校長でありながら、大人の「そのうちに…」ほど当てにならないものはないと、結果的に君に証明してしまった自分を恥ずかしく思っています。ごめんなさい。

 「校長先生なら、あおおにのようにできますか」

 実に鋭い質問で、あの場ではすぐには答えられませんでした。
 考えがまとまったのでお伝えします。

 できます。A君のためなら。

 新潟で過ごした学生時代の友人で、A君という人がいます。私と同じ58歳。教育学部とサークルの同期生です。19歳の時に出会い、気が合って、楽しかったことも、悩んだことも、学生時代の思い出の多くを共有しました。卒業と共に、彼は新潟で、私は故郷の岐阜県に帰って教職に就きました。ずいぶん離ればなれになったのですが、それ以後も2年に1度くらいは会って語り合っています。

 結婚式に招いたり、招かれたり、一緒にご飯を食べたり、遊びに行ったりするような友人はこちらにも何人かいます。回数だけならA君と会うよりももっとずっと多い人も居ます。しかし、「あかおに」にとっての「あおおに」といえるような関係性(「親友」といいましょうか)はA君だけだと思っています。
 勿論「俺たち親友だよな」等と言い交わしたわけではありませんし、彼が私をそう思っているかを確かめたこともありません(そんなことしたら気持ち悪いよね)。私がそう思い定めているだけです。

 私は7年前、母を亡くしました。大好きな母で、しかも、突然逝ってしまったので、とても悲しみました。5月の連休中だったので、葬儀等で気をつかわせては悪いと思って基本的に誰にも知らせませんでした。しかし、A君にだけは知らせました。学生時代以降、何度か家に来てくれて、母とも親しくなってくれたので、全く知らせないのは失礼だと思いました。お通夜の日のお昼に、遠くから母のために祈ってくれと頼みました。

 電話で彼は「そうか、大変だったな」と言い「お通夜は何時だ」と聞きました。彼ならそう言うだろうと予想していたので、絶対に間に合わない時間に連絡しました。

 「6時だよ。来るなんて考えてくれるな。遠くからしのんでやってくれ」と頼みました。
 「そうか、わかった。色々大変だから体、気をつけろよ」そう言って彼は電話を切りました。

 6時からのお通夜。お参りに来てくださった方々の列の中に、A君がいました。電話のあとすぐに身支度を調えて、400㎞以上の道のりを、車で6時間も高速道路を飛ばして、駆けつけてくれたのでした。

 本当に申し訳なかった。
 しかし、本当に心強かったです。
「母さん、母さんが僕を僕として育ててくれたおかげで、こんな友人を得ることができたよ。ありがとう」
 母の遺影に、こう伝えることで、どれだけ救われたかわかりません。感謝してもしきれません。

 だから私はA君のためなら、きっと何でもするでしょう。二人が崖にロープで宙づりになり、どちらか一人しか助からないのなら、私はA君に気づかれないように馬鹿話をしたまま、笑顔で自分の側を切るでしょう。彼に先を越されるかもしれませんが。

 答えになりましたか。

 1年生廊下で掃除をしている、係として前に立っている、Bさんの姿は本当に美しいです。この質問もそうですが、真実を求める純粋な心があなたの所作に表れているように見えます。
 これからも、共に学び合いましょう。お母様によろしく。

今日はお盆明け。これから帰って送り火を焚いて母を送ります。その日にこれを書いたのもご縁かなと思います。
素敵な質問をしてくれてありがとう。

令和2年7月16日

B様
〇〇 〇〇

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