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春のような温かさがいつもある学校に… あなただからできた、あなたにしかできなかった 〜心の宝物120

🌷金曜の帰りの会の前はお祭り騒ぎ


コロナ機の学校
金曜の帰りの会前。4年生の教室は、はじけるようににぎやかで、わくわく感に満ちていました。
「さあ、明日は休みだ!」1週間を終えた安堵が、どの子の表情にも浮かんでいるように見えました。

安心すれば気は緩むもの。定刻が迫っていますが、子供たちは思い思いに、自分の荷物を片づけたり、それもしないでおしゃべりに興じたり。帰りの会が始まる雰囲気はありません。

「うれしくて仕方ないのだな」
それぞれが過ごした1週間を想いながら、誰かの深い悲しみを見落としていないことを、週明けの月曜日、全員がどうか元気に登校してくれることを祈りつつ、はしゃぐ子供たちを眺めていました。

そのとき、彼が何かを抱えて教室に入ってきました。

🌷あなただからできた、あなたにしかできなかった


彼の腕にあったのは、給食当番のエプロンでした。廊下のフックにかけてあった全員分を抱えてきたのでした。

きっと他の多くの学校もそうであるように、この学校では、給食当番はエプロンを着て配膳作業をすることになっていました。コロナ機にはそれが一層厳密になり、たとえ善意の手伝いであっても、エプロンを着用しない児童が配膳作業に関わることはしないよう指導していました。
1週間の給食当番を終えた後は、当番の児童が各自お家にエプロンを持ち帰り、洗濯をしたうえで月曜に持参し、次の児童に引き継ぎます。

ところが、金曜日の帰りの「お祭り騒ぎ」に紛れて、持ち帰るのを忘れてしまう子も出てきます。大抵は、担任の先生が気づいてたしなめてくれるのですが、それにも手がつかないような何かがあるなど、間の悪いことが重なることもあります。
放課後の廊下に、ぽつんとエプロンが残されており、金曜の夕刻に、忘れた児童が頭をかきかき、保護者の方と来校することも全くないことではありませんでした。

この週、彼は給食当番でした。自分のエプロンを回収する際に、まだフックにかかっていたそれらを全て取り上げて、持ち帰るべき子に手渡していました。覚えていた子、きれいさっぱり忘れていた子、受け取る表情もまちまちでしたが「ありがとう」が飛び交い、温かな空気と共に、教室の意識が、今すべきことに向き始めたのが分かりました。司会の児童が前に出て、帰りの会が始まりました。

別の金曜日、エプロンが廊下に残っていたことがありました。その日、日直で、戸締りや整理整頓で、最後まで担任と教室にいた彼がそれに気づきました。担任が手に取ろうとする前に、彼はそれをさっと自分のランドセルに入れ、
「僕が洗ってきます」
「ありがとう。でも申し訳ないよ」
「いや、いいです」
持ち帰り、月曜に持参して知らぬ顔をしていました。
担任の先生が、彼と忘れた児童、保護者同士をつないでくれたことは言うまでもありません。このときも「ありがとう」がつながりました。

明るいムードメーカーで、乗りのよさが過ぎるようなときもある彼ですが、だからこそ、こういうときの視野の広さ、他者への心遣い、気風のよさや決断力はとびきりです。どちらのエピソードにも、彼の本質が表れていると思いました。

当たり前のことのように思うかもしれないけれど、あなたがしてくれたことは、あなただからできた、あなたにしかできなかった、気づきと、選択と、決意に満ちています。
日々の中の何気ない、しかし、間違いなく偉業です。

あなたが、そんな自分を誇りに思ってくれることを心から願います。

そんな思いで、お伝えしました。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

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