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『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』山口周さん


山口周さんの本は、何度読んでも、面白いし新しい気づきがあります。

豊富な知識から、必ず具体例を入れてくれること。

例を示すだけでなく、「だからこうしようよ」という行動を必ず示していること。

読んだ後に、自分の行動が変わっていく一冊。

人事に携わる人は必読の本です。

▼ドゥンカーのろうそく問題

ろうそく問題」とは、テーブルの上にろうそくが垂れないようにしつつ、ろうそくを壁に付ける方法を考えてほしいというものです。

この問題を与えられた成人の多くは、だいたい 7〜 9分程度で、次の図のアイデアに思い至ることになります。



▼アメとムチの有効性

ドゥンカーの実験から 17年を経て、ニューヨーク大学のグラックスバーグは、この「ろうそく問題」を少し違った形で用います。

彼は、この問題を被験者に与える際、「早く解けた人には報酬を与える」と約束することで、アイデアを得るまでにかかる時間が際立って「長くなる」ことを明らかにしたのです。 

1962年に行われた実験では、平均で 3〜 4分ほど長くかかったという結果が出たそうです。

つまり、報酬を与えることによって、創造的に問題を解決する能力は向上するどころか、むしろ低下してしまうということです。  

実は、教育心理学の世界では、この他数多くの実験から、報酬、特に「予告された報酬」は、人間の創造的な問題解決能力を著しく毀損することがわかっているそうです。


▼アメは逆効果という事実

報酬を約束された被験者のパフォーマンスは低下し、予想しうる精神面での損失を最小限に抑えようとしたり、あるいは出来高払いの発想で行動するようになることがわかっています。  

つまり、質の高いものを生み出すためにできるだけ努力しようということではなく、最も少ない努力で最も多くの報酬を得られるために何でもやるようになるわけです。

加えて、選択の余地が与えられれば、そのタスクを遂行することで自分のスキルや知識を高められる課題ではなく、最も報酬が多くもらえる課題を選ぶようになります。

これらの実験結果は、通常ビジネスの世界で常識として行われている報酬政策が、意味がないどころかむしろ逆効果であることを示唆しています。つまり「アメ」は組織の創造性を高めるうえでは意味がないどころか、害悪を及ぼしているということです。

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