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S級の肩書きなのに、権限がない駐在員のブルースを語ろうか。

こんにちは、LIG13です。

 アメリカのTech企業で働き、プライベートは副業と米国株投資をしています。今日は、日本を離れてアメリカで活躍されている駐在員の方々のちょっとした暗部(ブルース)について書こうと思います。

「セレブな肩書きのオンパレード」

 Director, Vice President, Chief Tech Officer, President & CEO  まぁなんともセレブな肩書きだこと。オホホホホッ・・・ 。みんな・・これだけは言っておこう。このキラっキラな肩書きはアメリカの日系企業の駐在員にとっては、日本でいうと課長か部長くらいのものです。そこには山を一声で動かせるようなパワーはありません。

「ジャッジメーカー」だと期待して落胆するアメリカ人

よぉ、LIG13(僕の名前)、このクライアント、オレは期待しているんだよ。今日の訪問でディール取れるかな?パートナーのアメリカ人セールスはノリノリです。なぜなら訪問先は世界的に名のある企業だからだ。そこのテクノロジー担当者と対面で話せるんだから無理はない。彼の頭の中にはすでにクライアントのアメリカでの事業規模はインプットされている。

んー、、「ジャパニーズクライアントは時間がかかるよ、即決断は期待できないと思うけどねぇ」というセリフを僕はこの13年間、数え切れないアメリカ人に言い続けて来た。いっそ駐在員のセールス攻略マニュアルでも出そうかなというほど。。

しかしアメリカ人は楽天家。「だって、Cレベルでしょ?(Cがつく役職、CEO,CFO,COOなど)任せとけよ!Lets do this」という意気込みだけで、ほとんどのアメリカ人セールスは、意気揚々とミーティングのラウンドに突入してゆく。その計り知れないアメリカ人の無鉄砲さを僕は1グラムでも貰いたいと常々思っている。うらやましい。

ごめんよ、日系企業のCレベルオフィサーはキミらが思っているのと違うんだよ・・。

つねに「味方陣営を向いてる」 駐在オフィサー

 そしてアメリカ人のパートナーと顧客先に行き、プレゼンを行う。たいがいアメリカ人のプレゼンは、20-30分でチャッチャとおわる。逆に日本人ってパワポ40枚くらい使って制限ギリギリまでプレゼンしますよね。アメリカ人のセールスの特徴って、プロダクトよりもお客さんとの会話に重点を置いているから(アメリカ人のクライアントの場合は質問とかアウトプットする時間が好きだから、わかる)

 例によって、駐在員のCレベルオフィサーに20分程度の短いプレゼンが終わり、まいどの「アメリカ式のフリータイム」に移行するわけですが。。対外のケースは、以下のようなダイアログです。

(一同) 「静寂、シーン・・・」

(駐在オフィサー)「検討しますので、資料をメールしてもらえますか?」

(米人セールス)「Sure! Do you have any questions so far?」

(駐在オフィサー)「特にないです」

(一同) 「静寂、シーン・・・」

(米人セールス)  「How's our service? I want to hear your thoughts on this」

(駐在オフィサー)「資料をもとに社内で検討します。」

(米人セールス) 「All right then, I'll followup with you on next week」

 日系のクライアントを10件回れば、9件は毎回こんな紙芝居のような流れです。これがアメリカ企業のCオフィサーになると、その場で良い・ダメとその理由をハッキリ(時に露骨すぎるくらい正直に言われる)決めてくれます。なのでいつもアメリカ人のCオフィサーとのミーティングはソワソワしますが、1時間で決着するので結果はどうであれスカッとします。アメリカ人のExecutiveはそれがミーティングの趣旨であり、相手へのビジネス上のマナーだと思っているからです。何も決まらない社外関係者とのミーティングなんてイミフなわけですよ。

「2度・3度にわたるプレゼン」でアメリカ人は離脱!

 上記のようなプレゼンでは、双方でフワーッとポジティブな印象だけを残して、我々もその場を退出するんですが、ここからが忍耐が必要とされるゲームに突入します。駅伝やマラソンというプロセスに重みを置いたスポーツに興味がないアメリカ人にとっては、まさに拷問の始まりなわけです。

ああ、またか、、「最も多いリクエスト」

 上記のような駐在員オフィサーのような方から最も受ける「リクエスト」それは、すでに一度済ませたプレゼンをアメリカ国内の関係者に行い、そして次に日本の本社の関係者に行う。というもの。その頃には、すでに僕のアメリカ人のパートナー営業も、秒速で他のディールを回しているので、「ああ、そんなクライアントいたね(既にマネーにならない空気を感じて逃げ腰)」みたいなことになっています。

 平均的なアメリカ人のセールスは、相手がマネーを動かす決定権(Authority)がないとわかった瞬間に、笑顔を振りまいて距離をとります。なぜなら、彼らが毎日会話するクライアントの大半はその場で決めるから、営業としてはコスパが高いんです。一方、受注まで相当の時間がかかる日系のクライアントは、「彼らの営業コストに見合わない」からです。そういう冷血極まりないアメリカ人セールスを振り返らせる方法は1つ。「このディールの規模は大きくなるぞ!日本人はプロセスを重んじるんだぞ」と話を盛って焚きつけることです。そうすると、やっぱり俺の出番なのか!と、調子を取り戻してくれます。

「案件スタートは2年先」という、すばらしいデジタル戦略

 そうしてようやく契約に漕ぎつけるのですが、たいがいのケースはアメリカ現地法人での決済には予算取りが必要ということが多く、待ち望んだ案件のスタートはプレゼンした時点から1年後(2年越しも)ということもザラです。その頃には、同行したアメリカ人セールスは別のイケている会社に持ち株とボーナス抱えてEXITしてしまっている。ということがザラです。さすがメジャーの営業は儲かるビジネスをかぎつける能力が高いと思います。「俺の手にかかれば、20分で何でも売ってくるぞ」っていうギラギラな感じなんですよね。。そういうキレッキレの彼らがスマイルで距離を取るようなクライアントが、上記で書いたような日本式の案件なので、これからの日系企業の管理職のあるべき姿について、僕なりにちょっと思うことがあったりするわけです。

「アメリカなのに失敗しない戦略」

 仲のいいクライアントの日本人のCオフィサーと「日本の本社と板挟み」的な嘆き節を相談されることが今まで何度もありました。いや、控えめですね、ほぼ毎回です。僕はアメリカ企業の人間なので、自分のJOBパフォーマンスを最大限に活かさないと評価もさがるし、最終的にはクビになる厳しい立場なので、そりゃあ比べるとパッとその場で決めてくれるアメリカ人のCオフィサーと仕事する方が、結果を出すのが早いですし、なによりも僕の時間も拘束されません。しかし、僕も同じ日本人なのでどうしても頑張ってほしいなと思う部分があって、どうにも変わらないクライアントの風習が日本的で懐かしいのと、心配なのと両方です。アメリカで働き13年経過して一つだけ言えるのは、多くの日系企業は、まだまだ日本式のビジネス習慣をアメリカにそのまま移植している。ということです。意思決定のベースが、スピードよりも「失敗しないこと、本社に怒られないこと」にスポットが当てられているよな。と思います。すぐに彼らのような会社が潰れることはなさそうだけど、成長するかはわからないし、現地のアメリカ人で優秀な人はこういう平凡な会社には入社しないだろうな。と正直思います。

失敗なんか大したことないぞ。日本の外ではアクションが最優先だぞ!

としか言えないけど。

ではまた。

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